2013-02-10 Sun 10:24
きょう(10日)は春節です。というわけで、巳年の正式なスタートですから、ストレートにこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2001年2月1日、前回の巳年用の年賀切手として南アフリカ(以下、南ア)が発行した小型シートで、ブームスラング(Dispholidus typus)が取り上げられています。 ブームスラングはサハラ砂漠を除くアフリカ大陸に住む全長100-180センチほどのヘビで、名前はオランダ語ないしはアフリカーンス語で“木のヘビ”という意味です。なお、切手にはアフリカーンス語を直訳した英語の“Tree Snake”と表示されていますが、一般に、英語で“Tree Snake”というと、別のヘビを指すようです。 ブームスラングは、目は非常に大型で前方にあるのが特色で、名前の通り、樹上性です。咬まれると成人男性でも命を落とすほどの猛毒を持っていますが、性質が温和なため、こちらから手を出さない限り、攻撃を仕掛けてくる可能性は低いとされています。 さて、南アでは1996年5月に北京で開催されたアジア国際切手展に合わせて、同年の干支であるネズミの小型シートを発行したのを皮切りに、毎年、その年の干支の動物を取り上げた小型シートを発行しています。ただし、初期の段階では、1996年のモノがそうであったように、必ずしも年賀切手ということではなく、アジア切手展などのイベントに合わせて干支の動物切手を発行するということもありました。今回ご紹介の2001年に関しては、2月1日から5日の日程で開催された香港でのアジア切手展に合わせて発行されたため、結果的に、年賀切手を兼ねています。 さて、南アで干支を題材とした切手が発行されているのは、現在の南ア社会において中国系が社会的に少なからぬ影響力を持っているためです。 南アにおける中国系コミュニティは、19世紀後半、ヨハネスブルグ周辺でのゴールド・ラッシュの時代に華人労働者が渡ってきたのが起源です。アパルトヘイトの時代、反共を国是としていた南ア政府は北京政府ではなく台湾と国交を維持し、台湾人は日本人とともに“名誉白人”の扱いでした。このため、南ア政府は台湾との長年の外交関係を維持したまま、北京政府との国交を樹立する“二重承認”を模索していました。 ところが、1997年の“香港返還”を前に、北京政府は、外交関係のない国には返還後の香港総領事館設置を認めないとの方針を打ち出し、南アに対して国交樹立を強く迫ります。この結果、1998年1月1日付で、南アは北京政府と国交を樹立し、台湾と断交せざるを得なくなりました。香港返還前年の1996年、北京で開催のアジア切手展というタイミングに合わせて、南アで最初の干支の切手が発行されたのも、こうした時代背景によるものと考えてよいでしょう。 一方、1980年代初頭に1万人程度だった南アの中華系コミュニティは、北京政府との国交樹立以降、福建省出身者を中心とする“新移民”が大量に流入。不法移民を含まない統計上の数字だけでも、南ア国内には約40万人の中国系が居住し、ヨハネスブルク近郊のシリルデーンには、南ア最大の華人街が作られるほどになりました。ちなみに、南アの総人口は5000万人前後で、旧宗主国の英国旅券を持つ者は25万人ほどですから、中国系はそれをはるかに圧倒しています。 なお、拙著『喜望峰』では、南アとその近現代史について切手や絵葉書などをご紹介しながらまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 【世界切手展BRASILIANA 2013・出品募集中】 今年11月、ブラジル・リオデジャネイロで世界切手展 <BRASILIANA 2013> が開催される予定です。現在(国内での受付期間は14日まで)、僕が日本コミッショナーとして、その出品作品を募集しております。詳細はこちらをご覧ください。 ★★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★★ 『喜望峰:ケープタウンから見る南アフリカ』 いままでなかった喜望峰とケープタウンの物語 美しい風景とウンチク満載の歴史紀行!! アマゾン、セブンネット、版元ドットコム、楽天ブックス、e-hon、hmv、honto、JBOOK、livedoor BOOKSなどで好評発売中! なお、本書をご自身の関係するメディアで取り上げたい、または、取り上げることを検討したい、という方は、是非、ご連絡ください。資料を急送いたします。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
内藤先生、初めまして。
僕は昔から「郵趣」とかであなたの記事を楽しく読ませています。 僕は神戸の出身ですが、休みの日はフジスタンプ(京都・大阪共々)、日本フイラテリックセンター、阿倍野の近鉄デパート、宝塚の島田コインスタンプ等の切手商へ買い物したり、去年は2回行きましたが、目白の切手の博物館や新宿切手センターへ買い物をしたりしています。 先生のウェブで紹介されている切手は歴史的な価値があると同時に小さな教科書として紹介されてとてもいい勉強をさせて頂きました。 これからもよろしくお願いします。 #2262 コメントありがとうございます
・ことゆき様
いつもご愛読いただきありがとうございます。これからもよろしくお付き合いください。 |
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