2013-01-26 Sat 17:51
社民党本部が入る東京・永田町の「社会文化会館」が老朽化と耐震性不足のために解体されることになり、きょう(26日)から党本部の引っ越し作業が始まったそうです。というわけで、社会文化会館の俗称とされた“三宅坂”にちなんで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1960年2月25日に発行された“尾崎記念館竣工”の記念切手です。 三宅坂の地名は、江戸時代、三河国田原藩・三宅家の上屋敷があったことによるもので、この坂沿いには、近江国彦根藩・井伊家上屋敷もありました。維新後、両家の屋敷は明治政府に接収され、三宅坂沿いには陸軍の諸機関が置かれました。このうち、陸軍省の本庁舎は1941年に三宅坂から市谷に移転しましたが、参謀本部の庁舎は終戦まで坂道から一段高い台地になっている井伊家の屋敷跡地に置かれていました。このため、戦前には“三宅坂”といえば、陸軍、特に参謀本部の俗称となっていました。 戦後、占領下で陸軍省が解体されると、参謀本部跡地は国会用地に転用されます。このうち、跡地の東半分は公園として国会前庭として利用されていましたが、1957年、衆議院・議院運営委員会が1954年に亡くなった尾崎行雄の業績をたたえて、参謀本部跡地の東半分の一部に尾崎記念館を建設することを決定。建設事業推進のために、財団法人・尾崎行雄記念財団(以下、尾崎財団)が設立され、国会の超党派協力事業として、国民の浄財1億6000万円が集められました。記念館は、1960年2月25日に完成した後、尾崎財団から国会に寄附され、衆議院が維持・管理を担当していましたが、その後、1972年に開館した憲政記念館に吸収され、現在にいたっています。 なお、記念館の南側には、附属建造物として、三角形(三権分立を表す)の時計塔が建てられました。時計塔の高さは“百尺竿頭一歩を進む(登りつめた百尺もある竿の上にあって、更にもう一歩進めるように、高い頂上を極めても、それに満足しないで、さらに一歩上る)”との言葉にちなみ、31メートル(102尺3寸)となっています。 一方、参謀本部跡地の西半分は国会の観光バス駐車場などになりましたが、その一角に、国有地を借りうけて建設されたのが、今回取り壊されることになった日本社会党(現・社会民主党)の本部、社会文化会館でした。 さて、尾崎記念館の完成にあわせて記念切手を発行しようという計画は、建設事業に関わっていた国会議員たちの間では早くから考えられており、1959年7月には尾崎財団から記念切手発行の要請書も提出されていました。 これに対して、切手係長の津留静雄は、郵務局長の板野学から切手発行の題材としての記念館についての調査を命じられたのが11月2日のことであったと証言しています。この間のズレには、おそらく、当初の尾崎財団からの要望書の段階では切手発行は困難という判断であったものが、その後の、国会議員等の働きかけにより、切手発行の実現へ向けて状況が変化したという事情があったのでしょう。 その後、11月18日には郵政大臣・植竹晴彦から板野に記念切手の発行を命じたことで、切手の発行が決定。21日には尾崎財団の理事長・川崎秀二(元厚相)から郵政大臣宛に記念切手発行の申請書が提出されています。 切手発行の決定を受けて、担当デザイナーの長谷部日出男が、尾崎の肖像と国会議事堂、それに時計塔をくみあわせた下図を作成。当初、尾崎の肖像は、国会内の銅像から採る予定でしたが、尾崎財団側の希望で、記念館に新たに建てられる、朝倉文夫制作の銅像から採ることになりました。 なお、現在の三宅坂界隈(旧三宅家屋敷跡)には、昭和40年代に国立劇場、最高裁判所庁舎が相次いで建設されたこともあって、関係者の間ではそれぞれの施設が“三宅坂”という俗称で呼ばれているのだとか。 一口に“三宅坂”といっても、人によってイメージする施設はいろいろなんですねぇ。僕個人としては、昭和史ネタ・戦争ネタになじんでいることもあって、“三宅坂”といえば、やはり陸軍参謀本部のイメージが強いですな。 【世界切手展BRASILIANA 2013のご案内】 僕が日本コミッショナーを仰せつかっている世界切手展 <BRASILIANA 2013> の作品募集要項が発表になりました。国内での応募受付は2月1―14日(必着)です。詳細はこちらをご覧ください。 ★★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★★ 『喜望峰:ケープタウンから見る南アフリカ』 いままでなかった喜望峰とケープタウンの物語 美しい風景とウンチク満載の歴史紀行!! アマゾン、セブンネット、版元ドットコム、楽天ブックス、e-hon、hmv、honto、JBOOK、livedoor BOOKSなどで好評発売中! なお、本書をご自身の関係するメディアで取り上げたい、または、取り上げることを検討したい、という方は、是非、ご連絡ください。資料を急送いたします。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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