fc2ブログ
内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
<!-【↓2カラムテーブルここから↓】-->
 “ファラオの新聞”も休刊
2012-12-04 Tue 23:17
 エジプトのモルシー大統領が自身に絶対的な権限を付与する憲法宣言を発した問題で、同国の主要独立系紙11紙は、同宣言への抗議としてきょう(4日)付の新聞を発行しませんでした。というわけで、エジプトの新聞といえば、やはりこの切手でしょうか。(画像はクリックで拡大されます)

         アハラーム100年

 これは、エジプトを代表する新聞の『アル・アハラーム(アラビア語で“ピラミッド”の意。以下、アハラーム)』の創刊100年を記念して1976年にエジプトで発行された切手で、創刊時と現在の同紙の題字が対比して取り上げられています。

 『アハラーム』は1875年に民間の新聞として創刊されましたが、ナセルひきいる自由主義将校団による革命後の1960年、他の大手出版社とともに国民連合(後のアラブ社会主義者連合)に所有権を移され、事実上、国有化されました。以後、ナセル時代には政権の主張をエジプト国内のみならず広くアラブ世界に発信する媒体としての地位を確立しました。1面トップには、ほぼ毎日、エジプト大統領や政府高官、もしくはパレスチナ関連の記事が載せられるのはその名残で、典型的な“御用新聞”でした。(まぁ、そうであればこそ、記念切手の題材にもなったわけですが)

 ところが、昨年のエジプト民主化とムバーラク政権の崩壊、それに続く、イスラム原理主義組織・ムスリム同胞団出身のモルシー大統領の就任により、『アハラーム』とエジプト政府の関係も大きく変化。世俗主義の同紙も今回の抗議の休刊に参加しているようです。なお、同紙の英語版オンラインには、休刊日のきょう、以下のような文言が掲載されていました。

 Ahram Online: declaration of support for Egypt media strike in defence of freedoms
 Tuesday 4 Dec 2012

 Ahram Online declares its full support for the strike action undertaken on Tuesday by a large number of major Egyptian newspapers and TV stations in defence of freedom of the press, freedom of expression, civil liberties and the rule of law. In view of our particular status as a web-based news outlet, however, we will maintain our updates throughout this crucial day of protest, not in contravention of the strike action, but in full solidarity with it. These decisions were consensually adopted by an all-staff meeting of Ahram Online, and in consultation with members of the board of the Press Syndicate and striking news media.

 Throughout the day we will only publish stories relevant to the day of protest, including, naturally, the reactions of governmental and other political actors opposed to the protests.

 At 1:45 Ahram Online will suspend its work for some two hours, so that its newsroom staff can take part in the Press Syndicate march scheduled for 2pm. We will resume our updates at 3:45pm.

 ちなみに、エジプトでは、政権を批判する場合に、しばしば、ネガティブな意味で“ファラオ(古代エジプトの王”という表現が用いられており、たとえば、サダト大統領暗殺犯のハリド・イスランブリは「ファラオに死を!」と叫んで大統領に爆弾を投げつけています。昨年の民主化運動の際も、ムバーラク前大統領に対しては“ファラオ”という罵声が浴びせられたわけですが、サダト・ムバーラクの両政権をともに支えていた新聞が、古代エジプトのファラオの遺産ともいうべきピラミッドのアラビア語を名乗ってきたのも、偶然とはいえ面白い話です。

 もっとも、そうした“(かつての)ファラオの新聞”が、現在のモルシー政権に対しては「モルシーは新たなファラオだ」との批判しているというのも、なんとも皮肉な話ですな。いずれにせよ、新たなファラオが確定するまで、エジプトの混乱はしばらく続くということいなりそうです。
 

 ★★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★★

         『喜望峰』表紙画像
 
  『喜望峰:ケープタウンから見る南アフリカ』

  いままでなかった喜望峰とケープタウンの物語
  美しい風景とウンチク満載の歴史紀行!!     

 アマゾンセブンネット版元ドットコム楽天ブックスe-honhmvhontoJBOOKlivedoor BOOKSなどで好評発売中!
 
 なお、本書をご自身の関係するメディアで取り上げたい、または、取り上げることを検討したい、という方は、是非、ご連絡ください。資料を急送いたします。

 
 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。

別窓 | エジプト:サダト時代 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< ビアナバクト共和国のカバー | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  新世界の七不思議・自然版>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
<!-【↑2カラムテーブルここまで↑】-->
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/