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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 シベリアの十五夜
2012-09-30 Sun 19:13
 きょうは十五夜です。残念ながら、東海から東日本にかけては、台風の影響でお月見どころではないのですが(台風の通過地域にあたる皆様は十分ご注意ください)、年に一度のことですので、こんな関連マテリアルをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      シベリア抑留・十五夜
      シベリア抑留・十五夜(裏面)

 これは、第二次大戦後、ソ連によってシベリアに連行され、強制労働に従事させられていた日本人抑留者の通信用に作られた専用の往復葉書のうち、タイプIIA1と呼ばれるものです。

 シベリア抑留日本人用の往復葉書は、大きく4つのタイプに分けられますが、このうち、往信部右下の番号が613で、赤十字・赤新月の入っていないものはタイプIIとされています。タイプIIは、字体がローマン体のAとゴシック体のBの2タイプに分けられ、さらに、表題2行目の“Й”の文字の位置により細分されます。今回ご紹介のモノは、表題2行目の“Й”が1行目の“C”の下にあるタイプIIA1と呼ばれるものです。なお、シベリア抑留の日本人用専用はがきについては、拙著『ハバロフスク』でも概要をまとめておりますので、紀伊會がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

 さて、葉書の裏面には「今夜は十五夜で十一時の“サイレン”迄眺めて母さんやお前の事等で頭が一パイです」との記述があります。ウラジオストクの中継印は不鮮明ですが、年号はどうやら1948年のようですので、そうだとすると、はがきに出てくる“今夜”は1948年9月17日ではないかと推測されます。

 阿倍仲麻呂以来、異国の地で月を見ながら祖国・日本を思い望郷の念に駆られるという例は枚挙に暇がありませんが、ソ連による理不尽な抑留の下、シベリアで十五夜の月を見ながら「お別れしてからもう八年に成りますね。どんなにか故里の方も変わっている事でせう」と書いている日本人がいたことを、僕たちは決して忘れてはなりません。


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