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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 大工大の衛星、印で打ち上げ
2012-09-10 Mon 14:50
 インド南部アンドラプラデシュ州のサティシュダワン宇宙センターで、きのう(9日)、大阪工業大学の学生が中心となって製作した小型衛星などを載せたロケットがインド宇宙研究機構によって打ち上げられ、きょう(10日)、軌道に乗ったことが確認されました。今回の打ち上げは、インドの宇宙ミッションとしては記念の100回目だそうです。というわけで、きょうは、この切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       サラバイ

 これは、1972年にインドで発行されたヴィクラム・サラバイ没後1周年の追悼切手です。

 インドの宇宙開発は、1961年、科学技術の発展を重視していたネルー首相が、原子力省を宇宙研究開発の担当と決め、翌1962年に物理学者ヴィクラム・サラバイを長とするインド国立宇宙研究委員会 (INCOSPAR) を立ち上げたことで本格的にスタートしました。

 インドにおけるロケット開発の歴史は古く、19世紀のマイソール戦争(イギリスとインド南部の藩王国マイソールとの戦争)では、マイソール側はロケット花火を使ってイギリスを攻撃。ここからヒントを得たイギリス陸軍が、原初的な形態のロケット・ランチャー(コングリーブ・ロケット)を開発したという歴史もあります。英領インド帝国時代に、シッキム藩王国でロケット・メールが試験的に行われたのも、そうした背景があったためです。

 しかし、独立後のインドの宇宙開発は、弾道ミサイル技術を発展させて宇宙ロケットの技術を獲得するのではなく、当初から、人工衛星の打ち上げを目標としていました。その背景には、開発責任者のサラバイが、NASAの通信・放送衛星に関する研究に参加した経験から、軍用よりも民生用の衛星ロケットの開発に関心を持っていたという事情があったといわれています。

 サラバイは、研究の最初の目標として、放送衛星とその打上機(SLV)の開発を目指し、ケーララ州に設けられたトゥンバ赤道ロケット打上基地(TERLS)では、観測ロケットの打ち上げを繰り返しました。

 今回ご紹介の切手には、サラバイの肖像の背景に、密林から打ち上げられるロケットの図が描かれていますが、当時のTERLS周辺の風景はこのようなものだったのかもしれません。また、ロケットの脇にはオリーブを加えるハトの絵も描かれており、インドの宇宙開発が、あくまでも平和目的のものであることも強調されています。

 なお、インドが最初の人工衛星打上に成功するのはサラバイの死から4年後の1975年のことでした。ただし、このときの衛星アーリヤバタは、インド自前のSLVによって打ち上げられたものではなく、ソ連のロケットによるものでした。インドが自前のSLVによる衛星の打ち上げに成功したのは1980年のことで、ここにいたり、ようやくインドの宇宙開発は本格的に開幕。きのう、100回目のミッションを達成したというわけです。

 ちなみに、インドの現政権は宇宙開発に積極的で、来年には火星探査機の打ち上げも予定されているのだとか。友好国として、素直に頑張っていただきたいと思いますな。


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