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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ハングル加刷の靖国27銭
2012-08-15 Wed 12:51
 きょう(15日)は言わずと知れた“終戦の日”です。というわけで、靖国神社がらみの切手の中から、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

       靖国27銭ハングル加刷

 これは、1946年2月、米軍政下の南朝鮮(大韓民国はまだ発足していません)で発行された暫定加刷切手のうち、靖国神社の27銭切手に“朝鮮郵票”を意味するハングルと30チョンの額面が加刷されています。ちなみに、30チョンというのは、当時の南朝鮮の郵便料金としては、書留料金に相当していました。

 南朝鮮では、米軍が進駐した1945年9月以降も日本時代の切手がそのまま流通しており、暫定加刷切手の発行は1946年2月1日になってからのことです。ただし、暫定切手の発行後も、暫定切手よりも日本時代の無加刷切手が貼られているケースのほうが圧倒的に多く、暫定切手が貼られた郵便物は非常に少ないのが実情です。まぁ、そもそも暫定切手の発行数は最も需要が見込まれる書状基本料金用の10銭切手でさえ68万枚しかありませんでしたから、実用性という点では、米軍政庁が暫定切手を発行する意義には疑問符がつくのですが、切手の発行を権力の象徴と捉えてみると、そのプロパガンダ的な意味は大きなものがあります。

 すなわち、新たな無加刷切手を発行する以前に、“儀式”として、菊花紋章と大日本帝国郵便の表示がある切手の上にハングルを黒々と加刷することは、同じ時期に日本国内で行われていた墨塗り教科書同様、(朝鮮における)日本支配の終焉を人々に強烈に印象づけるうえで、絶対に必要な措置でした。換言するなら、南朝鮮の新たな支配者となった米軍政庁は、こうした加刷切手を発行することによって、体制の転換を可視化しようとしたといってもよいでしょう。

 なお、1946年5月1日に解放切手が発行されたことを受け、同年6月30日限りで無加刷の日本切手とハングル加刷の暫定切手はともに使用禁止となりました。

 さて、あらためて言うまでもないことですが、靖国神社には帝国陸海軍の軍人として戦い、亡くなった朝鮮人の方々の霊も祀られており、僕たちは、そうした朝鮮出身の英霊の方々にも哀悼の意を示すため、正午に黙祷をしました。靖国“神社”だからけしからんという人もあるのかもしれませんが、どんな国家もその国家なりのやり方で、自国のために亡くなった方に対して慰霊の誠をささげる権利はあるわけで、そのやり方が気に入らないからと言ってクレームをつけるのは、いわば、他人の家の葬式なり法事なりに入り込んできて妨害するのと同じことですから、実に非礼な話と言わざるを得ません。

 こういうと、靖国神社には、いわゆるA級戦犯が合祀されており、中国・韓国が反発するから参拝はいけないという反論が必ず出てくるのですが、それなら、たとえば、韓国・ソウルの銅雀にある国立顕忠院を参拝することについて異議を唱える韓国人がいるのでしょうか。顕忠院は、独立運動家や国家功労者、朝鮮戦争、ベトナム戦争の戦死者、朴正煕元大統領など歴代大統領が祀られている施設です。現在の韓国の左派勢力の中には、日本統治時代はもとより、1987年の民主化以前は人権抑圧の暗黒時代だと主張する人もいるようですが、それなら、そうした人権抑圧の最大の象徴である朴正熙と国家の英霊を同等に扱うのはけしからんという主張が出てきてもおかしくないのですが、寡聞にして、靖国批判をする人がそういっているのは聞いたことがありませんな。

 ちなみに、われらが野田首相は、昨年(2011年)10月19日、内閣総理大臣として顕忠院に公式参拝し献花したそうですが、靖国神社に総理大臣として公式参拝したことはありません。(ひょっとして、今日これからするのかもしれませんが)そういえば、前首相の管直人も、副総理兼財務相だった2010年6月、アメリカのワシントン近郊のアーリントン国立墓地を訪れ、無名戦士の墓に献花していますが、靖国神社には参拝ませんでした

 他国の戦没者を追悼することはできても、自国の英霊は無視する総理大臣というのは、どう考えても、ゆがんでいるとしか思えません。韓国の李明博大統領が「(天皇は)韓国を訪問したがっているが、独立運動で亡くなった方々を訪ね、心から謝るなら来なさいと(日本側に)言った」と放言したことが報じられたのも、そうした日本側の問題があるからで、実に情けない話です。せめて、「日本の野田首相も顕忠院を参拝したのだから、閣下も日本領竹島を訪問されたついでに、靖国神社に参拝していただいたらよかったのに…」くらいのことは、外務省から言ってもらわないと困りますな。

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