2012-03-30 Fri 17:20
カナダ政府は、昨日(29日)、製造コストがかかり過ぎる一方、通貨としての価値が低いことを理由として、1セント硬貨の流通を今年限りで中止すると発表しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1868年にカナダ自治領として発行された最初の切手のうちの1セント切手です。 現在のカナダの原型は、1867年に制定された英領北アメリカ法により、上カナダ(現在のオンタリオ州)、下カナダ(現在のケベック州)、ノヴァスコシア、ニューブラウンズウィックといった英領植民地を統合し、カナダ自治領が発足したことに求められます。ちなみに、2010年の冬季オリンピックが行われたヴァンクーヴァーを含むブリティッシュコロンビア植民地が自治領に参加したのは、やや遅れて1871年のことでした。 今回ご紹介の切手は、1867年に自治領カナダが成立したことを受けて、1868年4月1日に発行されたものの1枚で、チャールズ・ヘンリー・ジーンズが原版を彫刻したヴィクトリア女王の肖像が取り上げられています。ちなみに、このとき発行された切手の最低額面は2分の1セントで、最高額面は15セント、郵便料金は、旧植民地間相互の基本料金(2分の1オンスまで)は、前納の場合3セント、受取人払いで5セント、英本国宛は原則前納で12.5セント(未納扱いの場合は不足料として6セント上乗せ)となっていました。 さて、カナダ政府によると、現在の1セント硬貨1枚の製造には1.6セントがかかっており、流通の中止によって年間約1100万カナダドルのコスト削減が期待できるそうです。また、1セント硬貨の購買力は最初の発行当時(ただし、報道では、具体的にどの通貨を指しているのかよくわかりませんが…)に比べて20分の1に縮小しており、政府説明によると、「一部国民の間で1セントは実用的硬貨というより、むしろ厄介者と考えられている。1セント硬貨を瓶にしまったり、噴水に投げ込んだりするが、釣り銭としては断ることも多い」、「金融機関は1セント硬貨の取り扱い、保管、移送のコスト増大に直面しており、1セント硬貨は支払い手段としての価値に比べ、経済への負担が重くなっている」とのこと。 そういうことなら、いっそ、旧カナダドル10ドルを新カナダドル1ドルとするデノミを行い、新通貨での1セント硬貨(旧10セントに相当)を発行するという手もあったんじゃないかと僕などは思ってしまいますな。ハイパー・インフレに悩む途上国ではなく、先進国のカナダで新旧通貨の切手の混貼カバーが生まれたら…と想像してみると、収集家としては、ちょっと楽しいですがねぇ。 ★★★ 内藤陽介、カルチャーセンターに登場 ★★★ 4月から、下記の通り、首都圏各地のよみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)で一般向けの教養講座を担当します。詳細につきましては、各講座名(青色)をクリックしてご覧いただけると幸いです。皆様のご参加を心よりお待ちしております。(掲載は開催日順) ・よみうりカルチャー荻窪 4月10日、5月8日、6月12日、7月10日、8月7日、9月11日 (毎月第2火曜日)13:30~15:30 切手でたどる昭和史 ・よみうりカルチャー柏 4月24日、5月22日、6月26日、7月24日、8月28日、9月25日 (毎月第4火曜日)13:30~15:30 切手でたどる昭和史 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
#2172 ふと
「一銭を笑ふ者は一銭に泣く」という戦前の標語入り消印を思い出しました。
#2176 コメントありがとうございます
・まちえ様
その1銭が切手に表示されなくなって今年でちょうど60年だったことを、コメントを拝読して思い出しました。 |
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