2012-02-07 Tue 22:09
1992年2月7日に欧州連合条約(マーストリヒト条約)が調印されてから、きょうでちょうど20年です。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
![]() これは、1992年10月6日、オランダで発行された“ヨーロッパ単一市場”の切手です。1992年秋、EU加盟各国では同様の趣旨の切手を発行していますが、今回は、マーストリヒトのあるオランダの切手を持ってきました。 欧州連合条約は、欧州連合(EU)創設のため、1991年にオランダのマーストリヒトで開かれたEC(ヨーロッパ共同体)首脳会議で合意された条約で、1991年12月9日、EC加盟国間での協議がまとまり、1992年2月7日に調印され、各国での批准を経て、1993年11月1日にドロール委員会の下で発効しました。 その骨子は、①ECを発展的に解消し、EUを創設する、②ヨーロッパ共通通貨としてEURO(ユーロ)を導入する、③外交・安全保障政策の共通化および警察協力・難民対策などにおける各国協調を目的とした司法・内務協力を促進する、の3店となります。 このうち、1999年に導入されたユーロに関しては、自国通貨を放棄してユーロに参加するためには、ERM2(為替相場変動メカニズム)に参加していることや、財政赤字が国内総生産(GDP)の3%以内であることなどの条件があります。たとえば、慢性的な財政赤字を抱えていたギリシャが、1999年の時点でユーロに参加できなかったのは、この条件を満たしていなかったためです。 しかし、ドルに対抗しうる強大なユーロの創設を目指していた欧州理事会は、ユーロ圏を拡大させることを優先し、翌2000年6月19日、「ギリシャは高い水準で持続的な収斂性を有しており、ユーロの導入に必要な状況になった」として、2001年1月1日からのギリシャでのユーロ導入を承認。かくして、ユーロ圏に加盟したギリシャは、信用力の低い自国通貨ドラクマに代わって信用力の高いユーロ建て国債を発行し、低利で資金を融通して放漫財政を継続します。その結果が、2010年に表面化したギリシャ危機であることは、周知のとおりです。 まぁ、国家そのものを統合することなく、各国の経済力の格差をそのままにして通貨のみ共通にしてしまえば、さまざまなゆがみが出てくるのは当然、予想できたはずなのですが、やはり、アメリカの一極支配に対抗する大ヨーロッパの理想が優先されたということなんでしょう。じっさい、ギリシャ危機のほかにも、オーストリア・ハンガリー問題(ハンガリーは非ユーロ圏ですが、通貨のフォリントは実質的にユーロとペッグしています)、アイルランド問題、スペイン問題などが相次いで起こっているのをみると、これまでの無理が一挙に噴出したという印象を強くしますな。逆にいえば、よくも20年もったということでしょうか。 今後、ユーロが生き残るためには、EU域内で圧倒的な経済力を持つドイツが中心となって再建策を進めていくしかないのでしょうが、その結果として、ドイツの前にEU諸国がひれ伏すということになるのであれば、実質的に、ドイツ第4帝国が誕生するという事態になるのかもしれません。両大戦の経験から欧州諸国がドイツの強大化を阻止してしようとしてきた結果としては、なんとも皮肉な話です。 なお、EUをめぐる諸問題については、拙著『事情のある国の切手ほど面白い』でもいろいろとご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ ![]() 年賀状の戦後史 角川oneテーマ21(税込760円) 日本人は「年賀状」に何を託してきたのか? 「年賀状」から見える新しい戦後史! ★ TBSラジオ・ニュース番組森本毅郎・スタンバイ(2011年11月17日放送)、11月27日付『東京新聞』読書欄、『週刊文春』12月1日号、12月1日付『全国書店新聞』、『週刊東洋経済』12月3日号、12月6日付『愛媛新聞』地軸、同『秋田魁新報』北斗星、TBSラジオ鈴木おさむ 考えるラジオ(12月10日放送)、12月11日付『京都新聞』読書欄、同『山梨日日新聞』みるじゃん、12月14日付『日本経済新聞』夕刊読書欄、同サイゾー、12月15日付『徳島新聞』鳴潮、エフエム京都・α-Morning Kyoto(12月15日放送)、12月16日付『岐阜新聞』分水嶺、同『京都新聞』凡語、12月18日付『宮崎日日新聞』読書欄、同『信濃毎日新聞』読書欄、12月19日付『山陽新聞』滴一滴、同『日本農業新聞』あぜ道書店、[書評]のメルマガ12月20日号、『サンデー毎日』12月25日号、12月29日付エキレピ!、『郵趣』2012年1月号、『全日本郵趣』1月号、CBCラジオ「朝PON」(1月26日放送)、『スタンプマガジン』2月号、『歴史読本』2月号、『本の雑誌』2月号で紹介されました。 amazon、bk1、e-hon、HMV、livedoor BOOKS、紀伊國屋書店BookWeb、 セブンネットショッピング、楽天ブックスなどで好評発売中! |
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