2011-12-24 Sat 17:07
きょうはクリスマス・イヴです。というわけで、クリスマスがらみでこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、昨年、北朝鮮で発行された2011年(彼らの暦でいう主体100年)用の年賀はがきです。葉書の下部には朝鮮語で「新年をお祝いします」との文言が印刷されていますが、クリスマス・ツリーだとか雪だるまのサンタ帽などのデザインを見ると、ほとんど、クリスマスカードといってよさそうです。 現在の北朝鮮では、建前としては信仰の自由が存在することになっていますが、実際には、金日成が唯一絶対の“神”ともいうべき地位を獲得しており、キリスト教を含む全ての宗教は、金日成や金正日の権威を侵すものとして、徹底的に弾圧されているのが実情です。 しかしながら、日本統治時代の朝鮮半島北部においてはキリスト教は一定の信者を獲得していました。実際、金日成の母親(正日の祖母で、正恩の曾祖母)の康盤石は、朝鮮平安南道大同郡でキリスト教長老会牧師の康敦の二女で、自身もクリスチャンでした。ちなみに、彼女の名前は、岩ないしは石を意味する“ペテロ”にちなんで命名されたそうです。また、金日成の回想録には、幼少時に母親に連れられてキリスト教会に通ったとの記述もあります。 ところが、後に共産主義者としてソ連・ハバロフスク近郊のヴャツコエで軍事訓練を受け、第二次大戦後、ソ連から帰国した金日成は、ソ連に忠実な共産主義者として宗教勢力を弾圧。このため、朝鮮半島北部のクリスチャンの多くが北朝鮮の体制を忌避して米軍政下の南朝鮮に逃れ、結果的に、韓国におけるクリスチャンの社会的影響力(総人口の4人に1人がクリスチャンだそうです)を高めることになりました。韓国の初期の年賀切手には、朝鮮半島の伝統文化や干支と並んでキリスト教的なデザインのモノが発行されることもありましたが、こうした韓国の宗教事情を反映したものと考えてよいでしょう。 ちなみに、12月24日というのは、クリスマス・イヴであると同時に、金正日の聖母である金貞淑の誕生日でもあるため、金正日時代には、金正日みずからが特権層を集めて大宴会を開催していたそうです。もっとも、宴会の会場にはクリスマス・ツリーなども飾られていたとの証言もあり、金貞淑誕生祭の名目でクリスマス・パーティーをやっていたということなのかもしれませんが…。 いずれにせよ、今回ご紹介の葉書は朝鮮の伝統的な民族衣装でクリスマスを楽しむ子供たちを描いていますが、北朝鮮の大多数の国民がクリスマスとは無縁の悲惨な生活を強いられていることは紛れもない事実です。いつの日か、独裁体制が打倒され、北朝鮮の人々が自由と豊かさを手にすることができるよう祈らずにはいられません。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 年賀状の戦後史 角川oneテーマ21(税込760円) 日本人は「年賀状」に何を託してきたのか? 「年賀状」から見える新しい戦後史! ★ TBSラジオ・ニュース番組森本毅郎・スタンバイ(11月17日放送)、11月27日付『東京新聞』読書欄、『週刊文春』12月1日号、12月1日付『全国書店新聞』、『週刊東洋経済』12月3日号、12月6日付『愛媛新聞』地軸、同『秋田魁新報』北斗星、TBSラジオ鈴木おさむ 考えるラジオ(12月10日放送)、12月11日付『京都新聞』読書欄、同『山梨日日新聞』みるじゃん、12月14日付『日本経済新聞』夕刊読書欄、同サイゾー、12月15日付『徳島新聞』鳴潮、エフエム京都・α-Morning Kyoto(12月15日放送)、12月16日付『岐阜新聞』分水嶺、同『京都新聞』凡語、12月18日付『宮崎日日新聞』読書欄、12月19日付『山陽新聞』滴一滴、[書評]のメルマガ12月20日号、『サンデー毎日』12月25日号で紹介されました。 amazon、bk1、e-hon、HMV、livedoor BOOKS、紀伊國屋書店BookWeb、 セブンネットショッピング、楽天ブックスなどで好評発売中! ★★★ 好評既刊より ★★★ ハバロフスク(切手紀行シリーズ?) 彩流社(本体2800円+税) 空路2時間の知られざる欧州 大河アムール、煉瓦造りの街並み、金色に輝く教会の屋根… 夏と冬で全く異なるハバロフスクの魅力を網羅した歴史紀行 シベリア鉄道小旅行体験や近郊の金正日の生地探訪も加え、充実の内容! amazon、bk1、e-hon、HMV、livedoorBOOKS、紀伊國屋書店BookWeb、セブンネットショッピング、楽天ブックスなどで好評発売中! |
#2088 唯一神
以前、中国思想研究の山下龍二氏が「共産主義はキリスト教の異端」と評していたのを思い出します。共産主義も一種の宗教なのだろうか。
#2090 コメントありがとうございます
・いわゐ將軍様
既存の神に代わって自分たちが神になろうというのが共産主義者の基本的な思考回路だと考えると、左派政権に独裁者が多い理由がうまく説明できるような気がします。 #2098 左右に限らず
思想や主義・主張などが無批判に先鋭化すれば宗教のようになってしまうのは必然なのでは?近頃巷に流行るネトウヨ・○○会・反原発・某政治家支持者など、私から見れば宗教にしか見えませんが。
>金貞淑誕生祭の名目でクリスマス・パーティーをやっていたということなのかもしれませんが…。 江戸時代、隠れキリシタンたちは観音様に似せた聖母マリア像「マリア観音像」を祀っていたそうですが、北朝鮮でも金貞淑をマリアに擬して信仰している人たちがいるのかもしれませんね。 #2099 コメントありがとうございます
・まちえ様
たしかに、宗教を、ある対象に対して絶対的に帰依する(学生時代に読まされた宗教についての英文にそんな風に書いてあった記憶があります)ことと考えれば、例として挙げられたものは似たり寄ったりでしょうな。 ただ、いわゆるネトウヨの中には、信仰というより、ルサンチマンとか社会不信・マスコミ不信が原動力となっていて、なにかに帰依しているという雰囲気ではないケースも多いのではないかと僕は見ています。反原発は、明らかに宗教でしょうけれど。 いずれにせよ、僕も“信者”の方とのお付き合いは、距離を置きたいです。 金貞淑をマリアに擬する場合、金正日がイエスで金日成は主なる神という構図になりましょうか。その場合、ヨゼフはどこへ行ったかという点を問題にすると、キャンプへご招待ということになりそうです。 #2107 実にNHK
先日のEテレ、ETV特集「日本人は何を考えてきたのか」#2。スタジオのゲストが色川大吉と樋口陽一と言う時点で番組の基調は見当がつくけれど、番組内に登場した明治時代の民権家の子孫は「反原発運動は現代の民権運動」と言っていた。連中にしてみれば明治政府も東京電力も同じらしい。
シリーズの人選も左に偏っているような気がする。 http://www.nhk.or.jp/nihonjin/schedule/index.html #2115 コメントありがとうございます
・いわゐ將軍 様
コメントありがとうございます。お返事差し上げるのが大変遅くなり、申し訳ございません。 まぁ、現在の東電に明治政府の元勲のような人たちが一人でもいたら、ここまで悲惨なことにはなってなかったような気もしますがね。 |
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