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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 戦車工場の労働者
2011-11-23 Wed 22:45
 今日は勤労感謝の日です。というわけで、労働者の切手です。(画像はクリックで拡大されます)

        戦車工場

 これは1945年12月25日にソ連が発行した戦勝記念切手の1枚で、戦車工場が描かれています。読者の“桃色の衛兵”さんによると、描かれている戦車はKV-1ではないかとのことです。ご教示ありがとうございました。

 ところで、第二次大戦中のソ連の戦車といえば、僕などは、やはり、1940年初頭から量産が開始されたT-34を思い浮かべますな。

 T-34は、当時としては、火力・装甲・機動力の3要素がバランスよく高水準を満たしており、その後の世界の戦車に大きな影響を与えました。

 たとえば、幅広のキャタピラや大型転輪は戦車の機動力を格段に向上させたほか、砲塔や車体の装甲を斜めに配した傾斜装甲のシステムは、砲弾が命中しても直撃せずに滑ってしまうことから、防御性能を格段に高めることになりました。また、車高を非常に低くしたことで、敵の攻撃を受けにくくなったばかりか、シンプルな構造とも相まって、生産性も向上。さらに、世界に先駆けたディーゼルエンジンの採用によって火災発生の危険が減少したことも見逃せません。

 もちろん、長所ばかりではなく、居住性が極端に悪い、内部の機器・計器類が粗雑などの欠点もありましたが、全体としては、T-34は当時としては画期的な傑作車両だったと評価してもよいでしょう。

 T-34は、1940年中にはハリコフ機関車工場で115両が生産されただけでしたが、1941年になると、主砲を長砲身42.5口径の76mm砲に変更し、前面装甲も45ミリから60ミリに強化したモデルが、ハリコフ機関車工場だけではなく、スターリングラード・トラクター工場でも生産されるようになります。

 かくして、1941年6月、独ソ戦が勃発した時点では、ソ連は1225両のT-34を保有していましたが、独ソ戦勃発直後の1941年7月以降は戦車工場を奥地へと疎開させ、工場をフル稼働させて大量生産したT-34を対独戦の戦場へ手あたりしだいに投入していきました。

 1942年になると、T-34の設計は、1両あたりの生産時間が半減したといわれるほど簡略化が徹底され、年間1万2553両というすさまじい数の車両が生産されます。このため、ときには砲弾を搭載しないまま戦線に投入され、敵の歩兵を轢き殺し、敵の戦車に体当たりするという使われ方をしたこともあったそうですが、ともかくも、それまで無敵を誇っていたドイツの主装備だった37ミリ対戦車砲をものともしないT-34の出現が、ドイツ軍に衝撃を与えたことは間違いありません。

 もっとも、ドイツ側もただちに対策を講じ、旧式戦車の対戦車砲を改良して火力をアップさせたほか、T-34に対抗しうる新式重戦車としてV号戦車パンターやⅥ号戦車ティーガーを開発。あっという間に性能面ではソ連に追いつき、これを凌駕しています。

 これに対して、ソ連側は1943年末には主砲を85mm砲に載せ替えたT-34の改良型を導入。この改良型はT-34/85と呼び、それ以前のT-34/76と区別されます。なお、T-34には工場や製造年度によってさまざまなヴァリエーションが存在するのですが、ソ連軍の公式な分類では、T-34/85とT-34/76の2種類しかありません。

 さて、T-34/85は、1943年から1944年にかけて2万9330両が生産されました。性能面では、かならずしもドイツ軍の重戦車を凌駕していたわけではないのですが、その膨大な数量のゆえに(たとえば、1944年5月、ドイツ国防軍が東部戦線で使用していたパンターは304両でしたが、ソ連は月産1200両のペースでT-34/85を生産しています)、T-34/85の大軍団はドイツ軍を圧倒し、“大祖国戦争”の勝利に大いに貢献しました。

 ちなみに、拙著『ハバロフスク』では、ハバロフスクの赤軍博物館に展示されているT-34/85の実物の写真をご紹介しながら、T-34/85をめぐるさまざまな物語もご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。


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この記事のコメント
#2074
切手に描かれている戦車ですが、
車体の形状や転輪の配置を見ると
T-34ではなくKV-1ではないでしょうか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/KV-1

WW2期のソ連戦車のプラモデルを
いくつかストックしています。
T-34、KV-1、SU-85、IS-2など、
ドイツ軍とは一味違う武骨さが
ロシア戦車の魅力ですね。
2011-11-24 Thu 09:56 | URL | 桃姫の衛兵 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
・桃色の衛兵様

 ご教示ありがとうございました。ご指摘を受けて、文章を一部修正いたしました。

 今後とも、よろしくご指導ください。

 まずは取り急ぎお礼とご報告のみにて失礼いたします。
2011-11-24 Thu 16:30 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
#2078 管理人のみ閲覧できます
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2011-11-25 Fri 09:08 | | #[ 内容変更] | ∧top | under∨
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