2011-09-11 Sun 23:59
2001年のアメリカ同時多発テロ事件からちょうど10年が過ぎました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2001年の同時多発テロ事件の後、グルジアが発行した寄附金つき切手で、切手部分にはアメリカとグルジアの国旗が、小型シートの時の部分にはありし日のニューヨーク世界貿易センタービルと「我々はアメリカを信頼する」との文言が入っています。 切手を発行したグルジアは旧ソ連を構成していた共和国の一つで、黒海の東岸に位置し、ソ連末期の1991年4月に連邦からの離脱を宣言しました。 ソ連崩壊後のグルジアは、アブハジアや南オセチアの分離・独立問題などもあって、一貫してロシアとは距離を置き、欧米との関係強化に努めていました。同時多発テロ事件への報復として、アメリカは、首謀者とされるオサマ・ビン・ラディンをかくまっているとの理由でアフガニスタンのタリバン政権に対する軍事攻撃を行うとともに、旧ソ連の中央アジア諸国に米軍を駐留させました。このことは、結果的に、ロシアの勢力拡大を牽制することになりますから、ロシア離れを加速させたいグルジアにとっては歓迎すべき事態でした。今回ご紹介の切手も、そうした背景の下で、アメリカによる“テロとの戦争”への積極的な支持を表明するために発行されたものといえます。 同時多発テロ事件当時のグルジアは、元ソ連外相のエドゥアルド・シェワルナゼが大統領でしたが、シュワルナゼは2003年のいわゆるバラ革命で退陣を余儀なくされます。その後、2004年に大統領となったミヘイル・サアカシュヴィリは、ソ連崩壊翌年の1992年にウクライナのキエフ国立大学国際法学部を卒業して渡米し、コロンビア大学で法学修士号を取得した後、ニューヨークで弁護士をしていたというキャリアの持ち主。1994年の帰国後はシュワルナゼ政権与党のグルジア市民連合の国会議員となり、2000年には法務大臣にもなりましたが、後、シュワルナゼに反旗を翻して、バラ革命を経て大統領に就任したというわけです。 サアカシュヴィリ政権は、大統領個人のキャリアもあって、アメリカの後ろ盾の下、親米・反露路線をより徹底させ、いわゆるイラク戦争では米英に次ぐ規模の兵士を派遣しました。また、2008年には、北京五輪でロシア大統領のプーチンが訪中している隙を狙って南オセチアへの軍事侵攻を行ったものの(ただし、さすがにアメリカも、この軍事侵攻はアメリカも支持しませんでしたが)、ロシア軍に撃退されてしまったことは、記憶に新しいところです。さらに、その直後にはリーマン・ショックも起きて、対米依存を強めていたグルジア経済も深刻な打撃を受けています。 2009年に発足したオバマ政権は、ブッシュ前政権の外交政策を転換して、対露協調路線をとるようになっており、サアカシュヴィリ政権は完全にはしごを外された格好となり、国内の支持率も低迷を続けているようです。それでも、政権としては、「アメリカを信頼する」としか言えないところに、なんとも悲哀を感じますな。まぁ、対米従属という点では、わが国もあまり偉そうなことは言えないのですがね。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 5月29日付『讀賣新聞』に書評掲載 『週刊文春』 6月30日号「文春図書館」で 酒井順子さんにご紹介いただきました ! 切手百撰 昭和戦後 平凡社(本体2000円+税) 視て読んで楽しむ切手図鑑! “あの頃の切手少年たち”には懐かしの、 平成生まれの若者には昭和レトロがカッコいい、 そんな切手100点のモノ語りを関連写真などとともに、オールカラーでご紹介 全国書店・インターネット書店(amazon、boox store、coneco.net、JBOOK、livedoor BOOKS、Yahoo!ブックス、エキサイトブックス、丸善&ジュンク堂、楽天など)で好評発売中! |
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