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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 泰国郵便学(15)
2011-08-24 Wed 20:28
 財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第45巻第4号ができあがりました。僕の連載「泰国郵便学」では、今回は、大東亜戦争の終結についてまとめてみました。その中から、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

        トレンガヌ・戦後使用

 これは、終戦直後の1945年9月9日、“タイ領トレンガヌ”で使用された切手です。戦時中の1943年10月、日本軍占領下のマライ北部、ケダー、ケランタン、トレンガヌ、ペルリスの4州をタイに割譲し、これらの地域ではタイの切手が使われていました。戦後、これらの地域には英印軍が進駐しますが、英国側がマレー4州の郵政を接収するまでの間は、従前通り、タイ側がこの地域の郵便実務を担当しています。今回ご紹介のモノも、そうした過渡期の使用例です。

 さて、「大東亜戦争」での日本の敗戦を受けて、1945年8月16日、タイは、1941年の米英に対する宣戦布告に摂政プリーディーが署名しなかったことを根拠として、連合諸国への宣戦布告はタイの意図に反して日本に強制されたものであり、法的にも無効であると宣言しました。同時に、戦争中、日本との同盟により回復した、ケダー、ケランタン、トレンガヌ、ペルリスのマラヤ4州とモンパンとケントンのビルマ2州の“失地”を英国に返還することを明らかにします。

 これに対して、米国は、8月21日、この無効宣言をいち早く受け入れました。その背景には、英仏の国力が衰退し、東南アジアにおける戦後の国際秩序の再編成が避けられない以上、曲がりなりにも第二次大戦以前から長きにわたって独立を維持していた唯一の国であるタイを戦後の東南アジア戦略の要として取り込んでおくのが得策であり、そのためには、タイのすみやかな戦後復興を促す必要があるとの米国の情勢判断がありました。

 一方、英国は日本との同盟により、マレー4州とビルマ2州を奪い、泰緬鉄道の建設工事で多くの英豪兵士の命が失われたこともあり、タイをあくまでも敵国、すなわち敗戦国とみなして強硬な姿勢を取っていました。

 このように、タイの戦後処理をめぐって米英の思惑が食い違う中、9月2日、東京湾に停泊中の米戦艦・ミズーリ号上で降伏文書が調印されます。ついで、連合国軍最高司令官(ダグラス・マッカーサー)の名前で発せられた「一般命令第一号」では、東南アジア連合国軍最高司令官(ルイス・マウントバッテン)とオーストラリア軍総司令官(トマス・ブレイミー)が、インドのアンダマン・ニコバル諸島、ビルマ、タイ、北緯16度以南の仏印、マラヤ、ボルネオ、蘭領インドネシア、ニューギニア、ビスマルク、ソロモンの日本軍の降伏を受理することになりました。その具体的な分担は、ボルネオ、英領ニューギニア、ビスマルク諸島、ソロモン諸島がオーストラリア軍総司令官の管轄、それ以外は東南アジア連合国軍最高司令官の管轄です。

 これを受けて、2万7000人の英印軍がタイに進駐し、タイに駐留していた日本軍将兵は武装解除され、ナコーンナーヨックの収容所で引き揚げを待つことになりました。

 タイとの和平交渉において、当初、英国は、マラヤ4州とビルマ2州の英領復帰のみならず、連合国によるタイ国軍の管理、連合国資産の原状回復、コメ150万トンの供出などの21カ条をタイ側に要求していました。連合国による国連合国による国軍の管理は明らかにタイを敗戦国として扱うもので、タイの独立を危うくするものでしたし、コメの供出も、戦争で疲弊したタイ経済にとっては大きな負担でした。

 しかし、結局、タイに好意的な米国のとりなしにより、1946年1月、タイによる宣戦布告の無効確認、英国資産の原状復帰、コメ150万トンの供与などを骨子とする平和条約が調印され、タイと英国との戦争状態も終結しました。

 今回の連載記事では、このほか、終戦後の連合国の元捕虜たちの通信等もご紹介しております。機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。

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