2010-03-06 Sat 21:22
春の観光シーズンを前にした啓蟄のきょう(6日)から、熊本の阿蘇市でトロッコ列車の運行が始まりました。というわけで、きょうは阿蘇ネタの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1985年5月10日に発行された“国土緑化・国際森林年”の切手で、阿蘇山の風景が描かれています。 1984年11月30日に開催された国際食糧農業機関(FAO)の理事会は、1985年を“国際森林年”とし、開発途上国における焼畑移動耕作や乱伐による熱帯雨林の急激な減少、先進国における酸性雨による森林の荒廃等、世界的な規模での森林の減少・劣化に対する人々の認識を高めるための啓発運動を展開することを決定。加盟国に対して、①森林に特別の認識を示し、国内的・世界的関心事として各国の森林資源保全について検討すること、②国民生活、環境保全、社会経済の発展のための森林の重要性について国民の認識を高めること、③植林および森林の保全に青年が参加するプログラムを実施すること、が要請されました。 これを受けて、わが国では農林水産省(以下、農水省)が中心となって国際森林年事業推進会議とその下部組織として林野庁に実行委員会を、民間側ではこれに協力するため事業推進協議会をそれぞれ設けて各種の事業が展開されました。 具体的な事業内容としては、国際的には①海外林業協力事業を拡充、②外国での記念の森の造成、国内的には①国際森林年記念シンポジウムの開催、②森林・林業展としての<フォレスポ’85>の開催、③記念論文の募集と表彰、④“国際森林年記念の森”の造成、⑤ビデオ教材および副読本『森林とみんなのくらし』の作成と全国中学校への配布、などが挙げられます。なお、これらの記念事業と並行して、従来から実施されている森林・林業関連の事業についても、1985年実施分に関しては、“国際森林年”との意味づけを付与することとされました。 こうした背景の下で、1985年5月12日、熊本県北東部の“阿蘇みんなの森”を会場として、第36回全国植樹祭が行われました。主催は国土緑化推進委員会と熊本県で、大会テーマは「ひろげよう緑の文化」です。参加者は約1万2000名で、昭和天皇のお手植えは熊本県人工造林の代表樹植である杉苗3本、お手まきは国の天然記念物に指定されている熊本城内・藤崎台の樟群から採取されたクスノキの種子でした。 さて、1985年の国土緑化運動の切手は、例年同様、全国植樹祭の開催に合わせて発行されました。ただし、植樹祭当日の5月12日は日曜日であったため、切手が発行されたのは前々日(金曜日)の10日です。 切手は、植樹祭開催県の熊本県を代表する阿蘇山の根子岳、高岳、中岳を背景に、県木クスノキと県花リンドウの花を前景に配しています。その中間には、阿蘇山八合目の草千里と放牧されている肥後の赤牛が描かれています。ちなみに、初日印の指定局は熊本県の坊中局でしたが、同局は集配特定局で手狭なため、熊本東局が初日押印の郵頼受付局となりました。 また、植樹祭当日の5月12日には、式典行事の一つとして、郵政大臣・佐藤恵 から、地元出身の国土緑化推進委員会委員長(衆議院議長)の坂田道太 および熊本県知事の細川護煕(後に首相)に対して記念切手贈呈のセレモニーも行われています。 なお、今回ご紹介の切手を含め、昭和末期の記念・特殊切手については、拙著『昭和終焉の時代』でも詳しく解説しておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 総項目数552 総ページ数2256 戦後記念切手の“読む事典”(全7巻) ついに完結! 『昭和終焉の時代』 日本郵趣出版 2700円(税込) 2001年のシリーズ第1巻『濫造濫発の時代』から9年。<解説・戦後記念切手>の最終巻となる第7巻は、1985年の「放送大学開学」から1988年の「世界人権宣言40周年年」まで、NTT発足や国鉄の分割民営化、青函トンネルならびに瀬戸大橋の開通など、昭和末期の重大な出来事にまつわる記念切手を含め、昭和最後の4年間の全記念・特殊切手を詳細に解説。さらに、巻末には、シリーズ全7巻で掲載の全記念特殊切手の発行データも採録。 全国書店・インターネット書店(amazon、bk1、JBOOK、livedoor BOOKS、7&Y、紀伊国屋書店BookWeb、ゲオEショップ、楽天ブックスなど)で好評発売中! |
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