2009-12-20 Sun 11:24
『キュリオマガジン』2010年1月号が出来上がりました。僕の連載「郵便学者の世界漫郵記」は、今回から、きょう返還10周年を迎えたマカオ篇に突入です。ちなみに、今月から、連載タイトルも“漫遊記”あらため“漫郵記”となりました。まずは、今回と次回の2回に分けて“マカオ”の地名の由来となった媽閣廟を取り上げます。その記事の中から、こんなモノをもってきてみました。(以下、画像はクリックで拡大されます)
これは、いまからちょうど10年前の1999年12月20日、中国マカオ(中華人民共和国澳門特別行政区)の成立を記念して、同日付で発足した中国澳門(マカオ)郵政が発行した切手を、同郵政が発行した絵はがきに貼り、発行日の記念印を押したものです。切手・絵葉書ともに、マカオ最古の寺院である媽閣廟前のバラ広場(媽閣廟前地)での龍燈が取り上げられています。 龍燈(龍踊とも)は、玉持ち一名、龍の担ぎ手数名、囃子方が一体となって演じる舞で、日本人にとっては“長崎くんち”での演目というのがわかりやすいかもしれません。 舞は、不老長寿の源であるとされる月を、龍が食べようとして追いかけるものの、なかなか捕らえきれない様子を表現したもので、龍が体を左右に振りながら玉を追いかける“玉追い”から龍がとぐろを巻いた自らの体の影に隠れた玉をさがす“玉さがし”(ずぐら)へ、そして再度“玉追い”へとつなげるのが基本的なスタイルとなっています。 中華世界では、春節(旧正月)をはじめ、おめでたいときに演じられる舞で、切手の主題である新生“中国マカオ”の門出を祝うにふさわしい内容です。同時に、中国の伝統文化を強調することで、いままでポルトガル領だったマカオが、中国に復帰したことを印象付ける意図も込められていたのでしょう。 一方、媽閣廟は、マカオ半島の南端にあるマカオ最古の寺院です。 現在、香港からマカオ行のフェリーが到着するフェリーターミナルは、マカオ半島の東岸、“外港”と呼ばれる地域にありますが、かつてのマカオの海の玄関は、西岸の“内港”でした。その内港の南端にポルトガル人がやってきたのは、1533年頃のことといわれていますが、すでにこのとき、海岸には1488一年に建てられたとされる媽閣廟が鎮座し、地元の中国人たちの信仰を集めていました。 媽閣廟は、中国南部や台湾などで広く信仰されている道教の海の女神・媽祖(阿媽とも)を祀ったマカオ最古の中国寺院です。この媽閣廟の前に上陸してきたポルトガル人が、地元の漁民に「ここはどこだ?」と尋ねると、漁民は目の前の寺院のことを聞かれたのだと勘違いして“マーコッ(=媽閣)”と応えたといわれています。漁民の言に関しては、“アマコッ(=阿媽閣:媽祖の別名・阿媽を祀った寺院の意)”だったとか、媽閣廟の近くの港ということで“マーコン(=媽港)”ないしは“アマーコン(=阿媽港)”だったとか、さまざまな説がありますが、いずれにしても、このときの漁民の受け答えから、ポルトガル人が周囲一帯を“マカウ”と呼ぶようになったというのが、一般にマカオという地名の由来とされています。なお、マカオという表記は、ポルトガル語の“マカウ”の英語なまりです。 現在、媽閣廟の前は砂浜ではなく“媽閣廟前地(バラ広場)”と呼ばれる石畳の広場になっていて、広場そのものも媽閣廟本体とは別に世界遺産に登録されています。ただし、モザイク風の波打ったデザインの石畳などはどう見ても最近になって整備されたものでしょうから、この広場も“世界遺産”といわれると、ちょっと違和感がありますな。もっとも、媽閣廟の前の敷地が、古くから“広場”として人々の集まる場所になっていたことは事実でしょうが…。 連載では、2010年の1年間かけて、マカオ半島の“マカオ歴史市街地区”として世界遺産に指定された史跡等を中心にご紹介していきたいと思います。機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。 ★★★ 出版記念パーティーのご案内 ★★★ 『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』の刊行を記念して、ルーマニア民主革命20周年の記念日にあたる12月22日、下記のとおり出版記念パーティーを開催いたします。当日は、僕のトークのほか、日本におけるジプシー・バイオリンの第一人者、古館由佳子さん(当日は彼女のCDも販売します)による生演奏もお楽しみいただけますので、ぜひ、遊びに来てください。 古館由佳子さん ・日時 2009年12月22日 18:30~ ・会場 レストラン・ルーマニア(本格的ルーマニア料理のレストランです。) *東京都中野区本町1-32-24(東京メトロおよび都営地下鉄中野坂上駅1分) tel: 03-5334-5341 地図などはこちらをご覧ください。 料理は下の画像のようなイメージで、ブッフェ・スタイルです。 ルーマニアのワイン(もちろん飲み放題)も出ます。 ・会費 7000円(『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』1冊つき) *当日会場にてお支払いをお願いいたします。 ・参加ご希望の方は、キュリオマガジン編集部まで、電子メール([email protected])にてお申し込みください。たくさんの方々のお越しを心よりお待ちしております。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 総項目数552 総ページ数2256 戦後記念切手の“読む事典”(全7巻) ついに完結! 『昭和終焉の時代』 日本郵趣出版 2700円(税込) 2001年のシリーズ第1巻『濫造濫発の時代』から9年。<解説・戦後記念切手>の最終巻となる第7巻は、1985年の「放送大学開学」から1988年の「世界人権宣言40周年年」まで、NTT発足や国鉄の分割民営化、青函トンネルならびに瀬戸大橋の開通など、昭和末期の重大な出来事にまつわる記念切手を含め、昭和最後の4年間の全記念・特殊切手を詳細に解説。さらに、巻末には、シリーズ全7巻で掲載の全記念特殊切手の発行データも採録。 全国書店・インターネット書店(amazon、bk1、JBOOK、livedoor BOOKS、7&Y、紀伊国屋書店BookWeb、ゲオEショップ、楽天ブックスなど)で好評発売中! |
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