fc2ブログ
内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
<!-【↓2カラムテーブルここから↓】-->
 イランのデモ
2009-06-22 Mon 13:04
 12日に投票が行われたイラン大統領選の結果に対して、開票に不正があったと主張するムサビ元首相ら改革派支持グループの抗議行動が続いています。19日には最高指導者のハメネイ師が抗議活動の鎮静化を呼び掛けたものの、改革派支持者はデモを続行し、テヘラン市内では機動隊と改革派支持者らが衝突、けが人や逮捕者も出ています。また、選挙取り消しを求めるムサビ元首相は「殉教も恐れない」と語り、抗議活動の継続を訴えているそうです。というわけで、今日はこんな切手を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

      タブリーズ蜂起10周年

 これは、イラン・イスラム革命の過程で発生したタブリーズ蜂起の10周年を記念して、1988年にイランが発行した切手です。パーレビ体制に抗議するデモ隊と町中に火の手が上がっている場面が何とも生々しい1枚です。

 1979年のイスラム革命の発端は、1978年1月、イランの有力な日刊紙『エッテラート』にイスラム教シーア派指導者のルーホッラー・ムーサヴィー・ホメイニーを中傷する投稿が掲載されたことにはじまるとされています。

 王政時代のイランの国家・社会体制は、端的に言ってしまえば典型的な開発独裁体制でした。国王はアメリカの庇護と巨額の石油収入を背景に、“白色革命”と称して、農地改革や婦人参政権の付与をはじめとする近代化(西洋化)と中央集権化を推進。イラン経済に急激な成長をもたらしました。

 しかし、白色革命は、ごく一部の特権的企業に巨万の富をもたらした一方で、伝統的な社会構造は大きな変革を迫られ、地主階級を構成していた宗教界やバザール商人、小規模手工業者らは大きな打撃を被ります。さらに、インフレや貧富の差の拡大、農民の都市流入といった近代化の負の部分が顕在化すると、一般国民の間でも開発独裁への不満は高まりましたが、こうした国民各層の不満に対して、政府は秘密警察(SAVAK:国家公安局)による監視を強化し、力で押さえ込んでいました。こうした姿勢が、かえって国民の反王室感情を増幅させることになったのは言うまでもありません。

 こうした状況の下で、ホメイニーは、1963年、反王制活動のために国外追放処分を受けて、事件当時はイラクに亡命していました。当然、彼はパーレビ体制下のイラン社会を激しく批判し、体制側と対立したが、パーレビ王朝とそれを背後から支えるアメリカに対して強い不満を持っていたイラン国民にとって、彼の批判は一定以上の説得力を持って受け止められていたわけです。
 
 こうしたカリスマ的宗教指導者に対する誹謗中傷に対して、宗教都市・コムで学生を中心とした反政府デモが発生。政府はデモ隊に対して強権を持って臨み、警官隊の発砲により多数の死者が出ました。これに対して、翌2月、40日目の追悼というイスラムの慣例にしたがって、先のデモの犠牲者に対する追悼のデモがタブリーズで行われると(これが今回の切手の題材です)、またしても警官隊の実力行使により死者が発生。これを契機に、反国王デモがイラン全土に波及していきます。

 当初、アメリカは事態を楽観視していましたが、労働者のストによりイラン産原油の生産量が激減するとパーレビ王制の延命工作を断念。パーレビ王制は崩壊しました。

 さて、今回のイラン改革派の抗議行動は、すでに、テヘラン以外の地方都市にも波及しているようです。今回のデモの参加者の多くは、現職のアフマディネジャド政権に対して不満を持ってはいるものの、イスラム共和国の体制そのものを転覆しようというわけではなさそうです。ただ、機動隊の発砲などでデモ隊の中から死者が出たりすると、その追悼デモということで40日後により大きなデモが発生する可能性も高いわけで、そうなってくると、事態はいっそう混乱することが予想されます。いずれにせよ、今後しばらくはイランから目が離せない日が続きそうです。


 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★  
   
 異色の仏像ガイド決定版 
 全国書店・インターネット書店(アマゾンbk17&Yなど)・切手商・ミュージアムショップ(切手の博物館ていぱーく)などで好評発売中!

 切手が伝える仏像  『切手が伝える仏像:意匠と歴史』 彩流社(2000円+税)       

 300点以上の切手を使って仏像をオールカラー・ビジュアル解説
 仏像を観る愉しみを広げ、仏教の流れもよくわかる!
別窓 | イラン:ホメイニ時代 | コメント:0 | トラックバック:1 | top↑
<< 5万ウォン札 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  父の日>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
仏像 仏教 種類
仏像がよくわかる本商品価格:860円レビュー平均:4.83 日本仏像事典商品価格:2,625円レビュー平均:5.0 知識ゼロからのお寺と仏像入門商品価格:1,365円レビュー平均:5.0 北窓三友 : 法隆寺 2 - livedoor Blog(ブログ) したがって、その内部に安置される仏像も …
2009-06-22 Mon 22:35 仏像の世界 | ∧top | under∨
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
<!-【↑2カラムテーブルここまで↑】-->
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/