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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 アフマディネジャド再選
2009-06-13 Sat 15:46
 きのう(12日)投票が行われたイランの大統領選挙は、現職で対外強硬派とされるアフマディネジャド大統領が投票総数の過半数を獲得、対外穏健派のムサビ元首相ら3人の候補を破り、再選を果たしました。というわけで、今日はこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      イラン・核の平和利用

 これは、アフマディネジャド政権1期目の2007年にイランが発行した「核の平和利用」と題する切手です。

 イランは1970年に核拡散防止条約(NPT)が発足した当初から加盟していますが、1979年のイスラム革命以降、極秘裏に核開発に着手し、1990年代には少量のプルトニウムの抽出に成功したとされています。その後、2002年にイランの核開発問題が表面化し、2003年には国際原子力機関(IAEA)定例理事会にて、イランに対する非難決議案を全会一致で採択していますが、2005年に発足したアフマディネジャド政権は核開発続行の意思を表面し、国際社会の懸念が高まっていました。

 2006年4月、アフマディネジャド大統領はイランが核燃料サイクルに適合するウランの精製に成功したと発表。さらに、11月には“完全な核燃料サイクル技術を獲得した”との発表も行われています。この間、 7月31日には国連安保理がイランに核開発中止を求める決議1696を賛成14、反対1(カタール)で採択しています。

 今回ご紹介の切手も、こうした背景の下で、イランとしては(実態はともかく建前としては)あくまでも自国の核開発が平和利用のためのモノであることを強調するために発行されたものです。

 再選を果たしたアフマディネジャド大統領は、反米・反イスラエルの姿勢が極めて鮮明な人物として知られていますが、そのイスラエル筋はイランが2009年末までには核兵器を保有すると言う展望を示しています。また、アメリカのシンクタンク“ワシントン近東政策研究所”も、イランの核兵器保有阻止の為にイスラエルが向こう2年以内にイラン攻撃に踏み切る可能性があるという報告書を発表しています。

 もっとも、イランの場合は“法学者の統治”と呼ばれる特殊な統治体制になっていて、核開発や核兵器の使用などについては、最高指導者から任命された委員によって構成される最高国家安全保障会議の管轄となっており、最高指導者のアリー・ハメネイーは核兵器に反対していますので、大統領の暴走には一定の歯止めがかかることになっています。とはいえ、敵国のイスラエルが現実に核兵器を保有しているといわれている中で、イランが自国の防衛のために核兵器を保有しようとするのは、(是非善悪は別として)軍事バランスという点からすれば当然の対応なわけで、この点でイランのみを責めてみても説得力はないでしょう。まぁ、中国や北朝鮮が核武装し、ミサイルの照準を東京にあわせていても、日本だけは核武装を絶対してはならないと主張する人たちがどうおっしゃるかは知りませんがね。

 いずれにせよ、投票前は対外穏健派のムサビ優勢、あるいは、大接戦で過半数を制する候補がなく決選投票にもつれ込むのではないかとの観測が西側メディアでは盛んに流れていましたが、結果的に、予想が大きく外れ、アフマディネジャドの圧勝となったことで、今後ともイラン問題は西側諸国にとっての頭痛のタネという状況がしばらく続きそうです。


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