2009-03-29 Sun 18:18
大相撲春場所は、モンゴル出身の横綱・白鵬の全勝優勝で幕を閉じました。というわけで、今日はこんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1991年にモンゴルが発行した仏像切手の1種で、サンバラ(勝楽尊)が取り上げられています。 サンバラ(勝楽尊)は密教の典型的な仏像のひとつで、原義は“すぐれた楽しみ”。絶対者と合一する宗教的な法悦の境地を性的な合一の快楽の比喩で表現するため、この切手に取り上げられている像ではヴァジュラヴァーラーヒー妃を抱く姿となっています。 一方、密教は、仏教がインドの土着文化や宗教を自らのものとして取り込むとともに、ヒンドゥー教に対抗するための理論体系化を試みて生まれてきたことから、その仏像には、怨敵(ヒンドゥーやイスラムなど)降伏を祈願するために憤怒の表情をしているものもすくなくありません。サンバラ(勝楽尊)に関しても、シヴァやブラフマーなど、ヒンドゥーの神を打倒する姿を取り、ヒンドゥーに対する仏教の勝利を象徴しているケースがしばしば見られます。 モンゴル出身の力士に関しては、先場所優勝した朝青龍がガッツポーズをとって協会幹部から叱られたほか、白鵬に対しても、元横綱・大鵬の納谷幸喜氏が「むやみに相手を投げ捨てるな! 勝ったときに、えらそうにするな! このままでは、大横綱にはなれないぞ」と苦言を呈したことがあるそうですが、怨敵を打倒する仏を拝み続けてきた彼らの文化的背景を考えると、良くも悪くも日本的な“相撲道”を理解しろという方が無理な注文なのかもしれませんな。 さて、4月中旬に刊行予定の拙著『切手が伝える仏像:意匠と歴史』では、今回ご紹介のサンバラ(勝楽尊)をはじめ、さまざまな密教系の仏像の切手も多数カラーでご紹介しております。すでに本文の原稿は完成しており、編集作業が追い込みの段階ですが、正式な発行日などが決まりましたら、このブログでもご案内いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 誰もが知ってる“お年玉”切手の誰も知らない人間ドラマ 好評発売中! 『年賀切手』 日本郵趣出版 本体定価 2500円(税込) 年賀状の末等賞品、年賀お年玉小型シートは、誰もが一度は手に取ったことがある切手。郷土玩具でおなじみの図案を見れば、切手が発行された年の出来事が懐かしく思い出される。今年は戦後の年賀切手発行60年。還暦を迎えた国民的切手をめぐる波乱万丈のモノ語り。戦後記念切手の“読む事典”<解説・戦後記念切手>シリーズの別冊として好評発売中! 1月15日付『夕刊フジ』の「ぴいぷる」欄に『年賀切手』の著者インタビュー(右上の画像:山内和彦さん撮影)が掲載されました。記事はこちらでお読みいただけます。 |
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