2009-03-03 Tue 20:42
アフリカ西部のギニアビサウでは、今月1日に大統領と対立していた軍司令官が爆殺されたばかりですが、きのう(2日)はその報復とみられるテロが発生し、国軍兵士がヴィエイラ大統領を殺害したそうです。なんだか大変なことになっていますが、とりあえず、ギニアビサウってどんな国?ということでこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、現在のギニアビサウがポルトガル領だった1898年に発行された切手で、ポルトガル植民地共通のデザインに、発行地名の“ギニア”と額面の200を別途、刷りこんだ形式になっています。 現在のギニアビサウの一帯は、1446年 ポルトガルが領有を宣言し、1630年に総督府が設置されました。当初、この地域はカーボヴェルデ植民地の一部とされていましたが、1879年に分離さて、“ポルトガル領ギニア”となり、1881年には最初の切手も発行されました。 第二次大戦後、ポルトガルの植民地でも独立運動が盛んになりましたが、ポルトガル領ギニアとカーボヴェルデでは、1956年以降、アミルカル・カブラルが指導するクレオールのギニア・カーボベルデ独立アフリカ党(PAIGC)の活動が本格化。東西冷戦という国際状況の下で、ソ連やキューバの支援を受けたPAIGCと、アメリカの支援を受けたポルトガル軍事政権の間で植民地戦争が続きます。 1973年9月24日 領土の大部分を押さえたPAIGCは、東部の町マディナ・ド・ボエでギニアビサウ独立共和国の独立を宣言。翌1974年4月25日 ポルトガル本国の革命で左派政権が誕生すると、同年9月、ギニアビサウの正式独立が承認されました。 今回暗殺されたジョアン・ヴィエイラはPAIGCのメンバーとして独立戦争を戦ったゲリラ戦の闘士で、1980年の軍事クーデターによって実権を掌握。1990年には複数政党制民主主義への移行を表明し、1994年の建国後初の複数政党制選挙で大統領に当選しました。選挙は一応、公正なものでしたが、それだけに、反ヴィエイラ陣営の力も強く、国内の政治情勢は不安定な状況が続き、1998年にはクーデターをきっかけに内戦が勃発。翌1999年にはヴィエイラ本人もポルトガルへの亡命を余儀なくされました。 その後も政情不安が続いていましたが、2005年4月、ヴィエイラはギニアビサウに帰国し、同年の大統領選挙で返り咲き当選を果たします。しかし、2008年 11月、議会選挙で多数派与党が勝利したことに不満を持つ軍の一部が大統領官邸を襲撃。このとき、反乱軍は撃退され、大統領警護隊が組織されましたが、軍に対する大統領の影響力拡大をきらった参謀総長のバティステ・タグメ・ナワイは2009年1月に警護隊の解散を命じるなど、軍と大統領の対立が激化していました。参謀総長と大統領が相次いで暗殺されるという今回の事件は、こうした背景のもとで起こったわけです。 ギニアビサウというと、切手収集家の間では、自国では使用できるのかどうかよくわからない“いかがわしい切手”を濫発する国というイメージがあるのですが、まさか、こんな形でニュースに登場するとは思っても見ませんでした。こうなると、人情としては内戦時の国内便の実逓カバーなんかがほしくなるのですが、やっぱり、入手は難しいのでしょうねぇ。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 誰もが知ってる“お年玉”切手の誰も知らない人間ドラマ 好評発売中! 『年賀切手』 日本郵趣出版 本体定価 2500円(税込) 年賀状の末等賞品、年賀お年玉小型シートは、誰もが一度は手に取ったことがある切手。郷土玩具でおなじみの図案を見れば、切手が発行された年の出来事が懐かしく思い出される。今年は戦後の年賀切手発行60年。還暦を迎えた国民的切手をめぐる波乱万丈のモノ語り。戦後記念切手の“読む事典”<解説・戦後記念切手>シリーズの別冊として好評発売中! 1月15日付『夕刊フジ』の「ぴいぷる」欄に『年賀切手』の著者インタビュー(右上の画像:山内和彦さん撮影)が掲載されました。記事はこちらでお読みいただけます。 もう一度切手を集めてみたくなったら 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。 |
#1403 気がついたら我が国も濫発国?
かつては収集家目当ての“いかがわしい切手”を濫発する国と言えばアラブ土侯国が代表格でしたが、今でもギニアビサウのようなアフリカの小国とか旧英領の島国には切手濫発国が結構ありますね。しかし、気がついたら我が国も世界屈指の切手濫発国に成り下がってしまいました。最近度々発行されるアニメやマンガの切手を見ていると、この種の濫発国がやたらと出す安っぽいディズニーの切手を思わせて悲しくなってきます。こういう切手ばかり出していると我が国もかつての土侯国の切手のようにいつの間にか「スコット・カタログに載らない国」になってしまうかもしれません。民営化されて商売熱心なのは分かりますが、もう少し格調高い切手を節度あるペースで出して欲しいものです。
#1407 コメントありがとうございます
アルファ様
いまのやり方は、一見、商売熱心なようにも見えますが、結果的にお客の信用を損ねて、長い目で見れば損だと思うんですがねぇ。まぁ、JP自身が「郵便なんてそう長くはないさ。稼げるうちになんでも良いから売ってしまえ。後のことは知ったこっちゃない」と考えているのかもしれませんが。 |
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