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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 中国のロケット
2005-10-13 Thu 13:53
 昨日(10月12日)、中国が2度目の有人宇宙船「神舟6号」を打ち上げました。

 中国が宇宙開発に着手したのは、ソ連との関係が怪しくなってきた1950年代半ばのことで、1960年代初頭には、ゴビ砂漠の南辺、甘粛省・酒泉付近に東風ミサイル射場が開設されます。そして、1966年には東風1型(CSS-1)中距離弾道ミサイルの試射に成功。1970年4月には、東風3型(CSS-2)を改造した長征1型ロケットで東方紅1型衛星の打上げに成功し、ソ連、アメリカ、フランス、日本に次ぐ5番目の人工衛星打上げ国になりました。

 その長征1型ロケットを取り上げた切手の中から、今日は、こんなものをご紹介します。

北朝鮮ロケット

 このカバーに貼られているのは、1974年7月、北朝鮮がまとめて発行したロケットの切手(海外に輸出して外貨を稼ぐことが一義的な目的と思われる)の1枚で、天安門を背景に切手発行のおよそ4年前に打ち上げに成功した長征1型ロケットを取り上げています。

 文化大革命の時期、紅衛兵の乱暴狼藉が原因で中朝関係は途絶していましたが、1970年になると、周恩来の努力によって中朝関係は文革以前の状態に復します。

 その後、ニクソン訪中や日中国交正常化など、中国は、かつてのソ連同様、西側との共存を目指し、朝鮮半島の安定を望むようになりましたが、1960年代後半から、“自力更生”路線の失敗で経済的苦境に陥っていた北朝鮮には中国を“修正主義者(かつてフルシチョフ時代のソ連が西側との宥和を目指した際、中国がソ連を非難して用いた表現)”として批判する余裕はありませんでした。それどころか、北朝鮮は、経済的苦境から脱するためにも、中国から見捨てられないように、中国の愛顧を取り付けることに汲々とするようになっていきます。この切手も、そうした文脈にそって発行されたものと考えてよいでしょう。

 なお、この切手と同時に発行された宇宙切手のうち、ほかの単片4種と小型シート一種はソ連の宇宙開発を題材としたものです。これは、当時の北朝鮮が対立する中ソのバランスをたくみに取って、双方から最大限の援助を引き出すことを目指す“天秤外交(振り子外交)”を展開していたためで、その意味では、中国のロケットが描かれた切手が貼られたこのカバーが、モスクワ宛に差し出されていることとは、なんとも暗示的です。

 その後、長征型ロケットは打ち上げ失敗の時期が続きましたが、1996年以降は連続成功記録を伸ばして安定性も評価されており、2003年にはソ連・アメリカについで世界で3番目の有人宇宙飛行も成功させました。近年、中国製のロケットは、そのコストの安さもあって、世界の商業衛星打ち上げ市場で急速にシェアを伸ばしています。宇宙開発に関して、中国側は、宇宙空間の平和利用を主張してはいますが、中国の宇宙開発関係機関の多くは人民解放軍の機関と言われていることもあり、その言葉を額面どおりに受け取るわけにはいかないでしょう。

 今回の打ち上げは、2度目ということで、日本のニュースなどは淡々と事実を伝えるだけでしたが、共産党の一党独裁体制の下、国民に“愛国教育”を施して軍拡路線に走る中国がロケット開発で着々と実績を積み重ねていることを、もう少し真剣に受け止めるべきではないかと僕などは思ってしまいます。別に、共産中国をあからさまに敵視せよとは言いませんが、巨大な隣国である彼らを警戒することは必要なはずで、どうして、中国のミサイルの脅威がもっと新聞やテレビで話題にならないのか、不思議でなりません。
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