2008-05-27 Tue 12:45
(財)日本郵趣協会の機関誌『郵趣』の2008年6月号ができあがりました。『郵趣』では、毎月、表紙に“名品”と評判の高い切手を取り上げていて、僕が簡単な解説文をつけていますが、今月は、こんなモノを取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)
![]() これは、1937年に発行されたアデンの1番切手で、この地域の伝統多岐なダウ船が描かれています。雑誌の表紙では同時にシリーズの12種類(色違い)をご紹介していますが、ここでは、1ルピー切手を取り上げました。 古来、イエメンと呼ばれていたアラブあ半島性南岸の地域は、近代以前は群小首長国が割拠する地域でしたが、19世紀に入ると、インド洋のシーレーン確保を目指すイギリスが首長国同士の争いに調停者として介入。重要拠点のアデン港を直轄植民地としたほか、イエメン南部の首長国を次々と保護領としていった。これに対して、イエメン北部の地域はオスマン帝国の支配下に置かれていましたが、第一次大戦で敗れたオスマン帝国が撤退すると、1918年、イエメン・ムタワッキル王国として独立しました。 一方、南イエメンの地域では、1937年4月1日、イギリスの影響下にある地域で“アデン保護領”を結成し、この地域で使うための切手12種類が発行されました。これが、今回ご紹介の切手です。 この切手は、イスラム世界の伝統的な木造帆船、ダウ船を大きく描いたもの。ダウ船は、大きな三角帆と釘を使わず紐やタールで組み立てる構造が特徴で、そのルーツは西暦の紀元前後にまでさかのぼるといわれています。かつては季節風を利用したインド洋貿易の主役として、ペルシャ湾岸のナツメヤシや魚介類、東アフリカのマングローブ木材をはじめ、奴隷や胡椒などを含むあらゆる商品がこの船で運ばれていました。 切手の左右には南アラビアで成人男子の象徴とされている短剣、ジャンビーヤも描かれています。デラルー社の美しい印刷ともあいまって、海運の要衝として繁栄してきた船乗りの都市、アデンのイメージにふさわしい1枚といってよいでしょう。 もう一度切手を集めてみたくなったら 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。 |
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