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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 大統領になりそこなった男たち:ロバート・タフト
2008-04-12 Sat 12:08
 ご報告が遅くなりましたが、雑誌『中央公論』5月号が発売になりました。僕の連載「大統領になりそこなった男たち」では、今回はこの人物を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

      ロバート・タフト

 これは、1960年に発行されたロバート・タフトの切手です。

 アメリカ史上最も偉大な上院議員五人“フェイマス・ファイブ”の一人とされるロバート・タフトは、1889年、オハイオ州シンシナティで生まれました。祖父はグラント政権の陸軍長官、父親も陸軍長官を経て大統領になったという超名門の出身で、ロバートの孫も現在のオハイオ州知事を務めています。

 1938年、上院議員に当選した彼は、当時の民主党・ルーズベルト政権のニューディール政策を激しく批判して“小さな政府”を主張し、保守派の代表的な論客となりました。また、外交面では、いわゆる孤立主義の系譜に連なる不干渉・中立政策を主張し、1939年に第二次欧州大戦が勃発した後も、1941年12月の真珠湾攻撃まではアメリカの大戦への参戦に断固反対という立場をとっています。ちなみに、第二次大戦についてのタフトの評価は(アメリカ人にしては珍しく)極めて冷静で、彼はナチスの戦犯を裁くニュルンベルク法廷を“勝者による恣意的な裁き”と批判している点は注目に値します。

 なお、政治家タフトの最大の業績は、第二次大戦後、上院労働委員長として、国民生活に深刻な影響を及ぼす労働争議には大統領による指揮権発動を認めた「タフト・ハートレー法」を成立させたこととされています。
 
 さて、タフトはその華麗なる出自ゆえに“ミスター共和党(Mr. Republican)”とも称されており、1940年、1948年、そして1952年の3回、大統領選挙にチャレンジしています。このうち、“三度目の正直”をめざした一九五二年の選挙では、当初、彼は指名確実の大本命と見られていました。

 ところが、東西冷戦が本格化していく中で(当時は朝鮮戦争のさなかです)、孤立主義外交を掲げ、ソ連の軍事力よりも政府の放漫財政こそが国家にとっての深刻な危機するタフトの主張には、共和党内でも“容共的”との批判がありました。このため、タフトの主張を快く思わないグループは、第2次大戦の英雄で反共姿勢が鮮明なドワイト・アイゼンハワーを対抗馬に担ぎ出し、国民的英雄の参戦で無風と見られていた指名争いは一挙に白熱化することになりました。

 共和党の候補指名争いは史上まれにみる大接戦となり、決着は1952年6月の共和党大会に持ち越されます。党大会では、当初、タフト派が有利と見られていましたが、大会の冒頭、アイゼンハワー派がテキサス(アイゼンハワーの地元です)を含む南部諸州の代議員選出に際して、タフト派が不正を働いたとのクレームをつける騒動が起こります。実際には不正の事実はなくタフト陣営は反論したのですが、党大会本部は南部のタフト派代議員を排除することを決定。この結果、アイゼンハワーが僅差で大統領候補の指名を獲得しました。

 アイゼンハワー派に煮え湯を飲まされた形のタフトでしたが、その後は潔くアイゼンハワーの選挙戦に協力。11月の本選挙では、共和党候補=アイゼンハワーの当選に尽力しています。

 共和党は、大統領選挙と併行して行われた上院選挙も圧勝しますが、これを受けて、タフトは共和党上院の院内総務となります。しかし、それから間もなくして癌が発見され、1953年7月31日に亡くなりました。ちなみに、院内総務時代のタフトは、名門ゆえの“大統領にならなければならない”とのプレッシャーから解放され、非常に温和だったそうです。

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