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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 満洲切手とTの印
2008-03-17 Mon 23:50
 今年は曜日の関係で、例年だと3月15日締め切りの所得税の確定申告が2日後の17日締め切りで助かりました。手回し良く2月中に済ましたという方も多いのでしょうが、僕なんかは今年もまた〆切ギリギリの提出で、ようやくホッと一息ついたというところです。

 というわけで、今日は“taxe(=tax)”がらみのネタを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      満洲・不足料カバー

 これは、1933年8月、満洲国の支配下にあった延吉から北平(現・北京)宛に差し出されたカバーで30分(=3角)の切手が1枚貼られています。当時、満州国から中国本土宛の封書の基本料金は4分でしたが、延吉のYMCAの封筒を用いているところを見ると、差出人は外国人で(宣教師か?)、手元にあった切手をそのまま使ったのでしょう。30分という金額は、当時の中国人にとっては無駄にするには惜しい金額だったでしょうが、欧米人の感覚からするとたいしたことはなかったのかもしれません。

 さて、1932年3月1日に満州国は建国を宣言しますが、当初は中華郵政の時代の切手がそのまま使われており、満州国独自の切手が発行されたのは1932年7月26日のことでした。ところが、満洲国の存在じたいを認めなかった中国側は、満洲国の発行した切手についても、郵便には無効なラベルとして扱い、満洲国の切手が貼られた中国宛の郵便物については、受取人から不足料金を徴収するという対応をとっています。

 すなわち、1932年7月、東三省からの郵政撤退に際して中国側が発した声明には「(満洲国の支配下にある地域の郵便)業務停止期間中、欧米各地宛の郵便物はシベリアを経由せず、スエズ運河あるいは太平洋経由で逓送するよう改め、万国郵便連合加盟国の郵便局は中国と各国との往来郵便物に対しても、これに準じて扱ってほしい。東三省(=満洲国の支配地域)において発行される切手は、中国郵政総局の許可を得ていないもので、これは絶対に承認せず、この種の切手を貼った各種書状や小包は、すべて料金不足として処理する」との内容が記されています。

 この声明にしたがって、このカバーの場合、郵便物を受け取った中国側は、満洲切手を無効のものとして、カバーの表面に料金の未納・不足を示すTの印を押し、受取人から徴収すべき金額として10(分。ペナルティ込み)と青鉛筆で記しました。なお、Tの文字は、万国郵便連合の公用語・フランス語で郵便料金(=郵税)を意味する“taxe”の略で、郵便物の上にTの表示がある場合には、不足料を徴収すべきであることを意味しています。

 このカバーの場合は、到着地の北平で10分相当の不足料切手(未納・不足分の料金を徴収するために用いられる切手)が貼られており、その金額が受取人から徴収されていることがわかります。このように、中国側としては、満洲国の切手の有効性を否定することによって、切手を発行した満洲国の正統性も否定しようとしていたわけです。 

 なお、このあたりの事情については、拙著『満洲切手』でもいろいろとまとめてみましたので、よろしかったら、ぜひ、ご一読いただけると幸いです。
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