2008-03-14 Fri 11:28
今日は“ホワイト・デイ”。ということで、“ホワイト”がらみのネタという意味もこめて、ご報告が遅くなりましたが、雑誌『中央公論』に連載中の「大統領になりそこなった男たち」の最近の記事で取り上げた、こんな切手を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1945年11月に発行されたアルフレッド・スミスの追悼切手です。 アルフレッド・スミス(“アル・スミス”と呼ばれることのほうが多い)は、貧しいカアイルランド系カトリック信徒の移民3世として、ニューヨークのブルックリン・ブリッジのマンハッタン側、いわゆるローワー・イースト・サイドに生まれました。 早くに父親を亡くし、フルトン魚市場で肉体労働者として働きましたが、そこでの勤勉な働き振りがアイルランド系住民の強い影響下にあった政治団体、タマニー協会の目に留まり、政治家としての道を歩むことになり、1903年、ニューヨーク州議会議員に当選。1911年に起こったグリニッジ・ビレッジのトライアングル社火災事件(避難設備が劣悪なブラウス工場の火災で、女子工員ら145名が亡くなった事件)を機に、労働環境改善法を成立させたことで名をあげました。 大きな鼻で葉巻のチェイン・スモーカー、口角泡を飛ばしてしゃべりまくる姿は、いかにもニューヨーカーの雰囲気で女性の人気も高く、1918年、ニューヨークで婦人参政権が最初に認められた州知事(任期2年)選挙では、事前の予想を覆して初当選を果たします。その後、1920年の選挙では落選するものの、合計4期、知事を務め、ニューヨークの顔として全米に知られる存在となっていきました。 スミスが民主党の大統領候補として指名を受けたのは1928年の選挙のときのことです。当時は世界恐慌の直前、未曾有の好景気が全米を覆っていたこともあり、与党・共和党の候補が圧倒的に有利と見られていました。このため、民主党候補は一種の“自殺候補”と見られていましたが、そうした事情から、アイルランド系の彼に大統領候補となるチャンスがめぐってきたものと思われます。というのも、当時のアメリカでは、ワスプ(WASP)すなわちWhite(白人) Anglo-Saxon(アングロサクソン) Puritan(ピューリタン)ないしは Protestant(プロテスタント)の男性でなければならないとの不文律があり、“勝てる選挙”であれば、スミスが大統領候補となる可能性はきわめて低かったでしょう。 アメリカの建国神話では、清教徒が信仰の自由を求めて新大陸に渡ってきたことが建国のルーツになっているということもあって、カトリックに対する差別や偏見は根強いものがありました。はたして、共和党のフーバー陣営はスミスに対して「彼が大統領に当選したら、アメリカをローマ法王に献上してしまうのではないか」といったネガティブ・キャンペーンを展開。冷静に考えれば馬鹿げた話ですが、当時の一般有権者には結構、これが効果的だったようで、スミスの政策で恩恵を受けるはずの労働者層までもが共和党支持に回り、11月の選挙では、スミスはお膝元のニューヨーク州も落とすほどの惨敗を喫してしまいます。 1929年に発足したフーバー政権は、同年10月の世界恐慌に対してまったく無力であったことから、1932年の選挙では、今度は民主党が有利と予想されていました。スミスは、大恐慌後の経済再建が最大の争点になるのであれば、“カトリック”という要素は問題になるまいと捲土重来を期していましたが、“勝てる選挙”に際して、民主党の候補になったのはワスプ出身で後輩のニューヨーク知事、フランクリン・ルーズベルトです。 その後、スミスは政界を事実上引退し、ルーズベルトがアメリカ史上唯一の4選を果たした1944年に亡くなりましたが、ルーズベルトにとって、地元の有力な“先輩”は煙たい存在だったようで、彼の追悼切手が発行されたのは、ルーズベルトが亡くなった後の1945年11月のことでした。 今回の大統領選挙の有力候補の顔ぶれを見ていると、共和党がアイルランド系のマケイン、民主党がアフリカ系(黒人)のオバマか女性のヒラリー・クリントンか、といった具合で、ワスプ男性の有力候補者は一人もいません。スミスの時代と比べると、まさに隔世の感がありますな。 *お知らせ 12日に台湾から帰国後、愛用のノート・パソコンに不具合が生じ、現在、僕が普段使っているメール・アドレス(y-naitoで始まるものです)にお送りいただいても、メールを読むことができなくなってしまいました。どうやら、HDのトラブルが原因(寿命説が最有力)のようで、データは9割がた復旧できたのですが、パソコンの機械については、とりあえず家族共用のパソコンで急場をしのいでいるものの、近々、新しい機械を買わざるを得なくなりました。 つきましては、新しいパソコンを買ってメール環境を復旧させるまでの間、皆様にはいろいろとご迷惑をおかけいたしますが、あしからずご了承ください。 なお、お急ぎの方は、このブログの最新記事のコメント欄に、“管理者にだけ表示を許可する”をチェックの上、ご用件と返信先のメールアドレスをご記入いただければ対応いたしますので、お手数ですが、よろしくお願いいたします。 |
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