【 少年たちは花火を横から見たかった 】(岩井俊二著、角川文庫)
以下は、掲題書(「短い小説のための長いあとがき」)からの一部抜粋。
『 あれからはや24年である。
プロデューサーの川村元気氏から連絡が来て、この作品をアニメにしたいのですがと申し込まれたのが2年前。「まあ、どうぞ」という気持ちで快諾した。ファンの方々には異論もあるかも知れないが、僕の中では自分の作品を苗床に何らかの新しい作品が誕生するのは冥利である。それはこの作品が愛された証明でもあるのだろうから。
脚本は大根仁氏にお願いできないだろうかと僕の方から提案した。大根氏は『モテキ』の第二話で、『打ち上げ花火・・・・』のファンなる女性に連れられて主人公がロケ地巡りをするという話を作っていた。
アングルやカットまで精緻に再現され、凝りに凝った作りだった。作者には無断許可である。しかもオンエア直前に僕のドラマを勝手にYouTubeにアップして視聴者に予習するようにとTwitterで呼びかけていた。作者に無断でこんなことして、見つかったらおこられるなあと呟いていた。そこで僕は彼にツイートしたのである。「俺は怒らないよ」と。すると彼が驚きながら、「怒るよ!」と返した。もちろんこれは典道となずなの「俺は裏切らないよ」「裏切るよ!」を踏襲した掛け合いだったのだが、これが大根氏との出会いだった。
打ち合わせがようやく決着した頃、川村元気氏からノベライズを書いてくれないかと頼まれた。24年前に書いた作品の小説版を書く。こんな体験はかつてない。聞けば大根さんもアニメ版脚本をベースにノベライズを書くという。ある意味競作である。それも初体験だった。そして僕は何につけ初体験に目がない。是非にとお引き受けしたわけだが、これが奇しくも生れ損なった子供たちに光を当てる機会になったのである。
24年という歳月をまるで感じなかった。この物語の世界が生き生きと自分の中にあった。それは子供時代に遊んだ懐かしい川が、今も変わらず豊かに流れるさまを見るかのようであった。
物語の発想を得た大学時代の春から数えると、32年の歳月である。
多くの皆様に、感謝。
2017年4月 』
<感想>
24年前の岩井俊二監督のテレビドラマが、時を経て、ロケ地巡りをするモテキ(テレビ第2話)の大根仁監督の脚本により新たなアニメに甦ると同時に、新たにこの小説も生まれた。プロデューサーは「君の名は。」の川村元気氏。作品のみならず、その制作過程に興味惹かれる内容だった。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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