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米国とNATOによる武装化が根本原因?


【 エマニュエル・トッド:ウクライナ戦争 】

 


 先日、エマニュエル・トッド著「第三次世界大戦はもう始まっている」(大野舞訳、文春新書)を読んだ。

 以下は一部抜粋。(その2)

 


ウクライナを「武装化」した米国とNATO

 

「ウクライナをすぐにNATOの一部にするとは誰も言っていない」というレトリックを用いながら、ウクライナを「武装化」し、”事実上”NATOに組み入れていたわけです。


「手遅れになる前にウクライナ軍を破壊する」が目的だった

 ロシアが看過できなかったのは、この「武装化」がクリミアとドンバス地方の奪還を目指すものだったからです。

 


我々はすでに第三次世界大戦に突入した

 

 アメリカの地政学的思考を代表するポーランド出身のズビグネフ・ブレジンスキーは、「ウクライナなしではロシアは帝国にはなれない」と述べています。アメリカに対抗しうる帝国となるのを防ぐには、ウクライナをロシアから引き離せばよい、と。
 そして実際、アメリカは、こうした戦略に基づいて、ウクライナを「武装化」して「NATOの”事実上”の加盟国」としたわけです。つまり、こうしたアメリカの政策こそが、本来、「ローカルな問題」に留まるはずだったウクライナ問題を「グローバル化=世界戦争化」してしまったのです。

 ウクライナ軍は、アメリカとイギリスの指導によって再組織化され、歩兵に加えて、対戦車砲や対空砲も備えています。とくにアメリカの軍事衛星による支援が、ウクライナ軍の抵抗に決定的に寄与しています。
 その意味で、ロシアとアメリカの間の軍事的衝突は、すでに始まっているのです。ただ、アメリカは、自国民の死者を出したくないだけです。

 


<感想>
 ウクライナ戦争は、ウクライナを「武装化」した米国とNATO vs プーチン・ロシアの構図(代理戦争)に見える。
 一番不幸なのは、犠牲になっているウクライナ国民自身であろう。

 

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戦争の責任はNATOにあり?


【 エマニュエル・トッド:ウクライナ戦争 】

 


 先日、エマニュエル・トッド著「第三次世界大戦はもう始まっている」(大野舞訳、文春新書)を読んだ。

 以下は一部抜粋。(その1)

 


2022年3月23日収録
初出『文藝春秋』2022年5月号に「日本核武装のすすめ」として一部掲載

 


「戦争の責任はNATOにある」

 

 アメリカでは議論が起きています。この戦争が、地政学的・戦略的視点からも論じられているのです。
 その代表格が、元ベア空軍軍人で、現在、シカゴ大学教授の国際政治学者ジョン・ミアシャイマーです。

 ミアシャイマーが出した最初の結論は、「いま起きている戦争の責任は、プーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにある」ということです。
「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確に警告を発してきたにもかかわらず、アメリカとNATOがこれを無視したことが、今回の戦争の原因だとしているのです。

 


「NATOは東方には拡大しない」という約束

 

 冷戦後、NATOは東方に拡大しましたが、これには、二つの画期がありました。ポーランド、ハンガリー、チェコが加盟した1999年と、ルーマニア、ブルガリア、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニアが加盟した2004年です。
 ドイツ統一が決まった1990年の時点で、「NATOは東方には拡大しない」といった”約束”がソ連に対してなされていましたが(当時のソ連書記長ゴルバチョフに対し、1990年2月9日、アメリカのベーカー国務長官が「NATOを東方へは1インチたりとも拡大しないと保証する」と伝え、翌日にはコール西独首相が「NATOはその活動範囲を広げるべきでないと考える」と伝えている--編集部注)、にもかかわらず、ロシアは、不快感を示しながら二度にわたるNATOの東方拡大を受け入れたのです。
 その上で、2008年4月のブカレストでのNATO首脳会議で、「ジョージアとウクライナを将来的にNATOに組み込む」ことが宣言されました。
 その直後、プーチンは、緊急記者会見を開き、「強力な国際機構が国境を接するということはわが国の安全保障への直接的な脅威とみなされる」と主張しました。つまり、この時点でロシアは、「ジョージアとウクライナのNATO入りは絶対に許さない」という警告を発し、「ロシアにとって越えてはならないレッドライン」を明確に示していたわけです。
 そして2014年2月22日、ウクライナで、「ユーロマイダン革命」と呼ばれる「クーデター」--民主主義手続きによらずに親EU派によってヤヌコビッチ政権が倒される--が発生しました。
 これを受けて、ロシアはクリミアを編入し、親露派がドンバス地方を実効支配しましたが、それは住民の大部分が、この「クーデタ」を認めなかったからです。

 


<感想>
 アメリカとNATO側の視点ではなく、プーチンとロシア側の視点からみれば、ウクライナ戦争は全く違った構図となる。

 

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新たな合理的な保護主義の時代の始まり



新たな保護主義の時代に
仏歴史人口学者 エマニュエル・トッド氏
(出所:2017/1/12日本経済新聞朝刊)


『 ドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利に驚きはない。2000年以降、自由貿易によって雇用が奪われ、白人有権者の心に耐えがたい痛みが生まれたからだ。トランプ氏の勝利は、労働者階級だけでなく、中間層の怒りでもあったのだ。


 今始まろうとしているのは一つの時代だ。グローバル化、つまり新自由主義1980年ごろに始まった。そこから35年後、我々はまた35年の周期の初期段階にいる。人口学者として私はこれから終わりを見るのではないと断言できる。

 自由貿易は絶対的な自由貿易しかない。しかし保護主義にはいくつもの種類がある。ばからしいものも節度あるものもあるのだ。先進世界では保護主義と開国、つまり自由貿易が代わる代わるやってきた。


 グローバル化は特に英米で途方もない格差を生み、日仏独にもある。この格差は資本の移動の自由と、低賃金の労働力を使うことで生まれた。

 重要なのは格差が生まれる仕組みではなく、先進国が格差を受け入れた点だ。どうして先進国は自由貿易に扉を開いたのか。私は経営者などのビジネス人ではなく、教育階層に問題があると思う。大学と結びついた理論家が格差拡大につながる議論を主導した。


 自由貿易は忘れねばならない。我々の前にあるのは良い保護主義と悪い保護主義の議論だ。給与水準を守ったり、内需を刺激したりする合理的な保護主義は貿易を活発にする。保護主義が国家間紛争になるというのは嘘だ。保護主義協力的で敵対を意味しない。  』(太字は筆者)


 1980年頃に始まったグローバル化(新自由貿易主義)の終わりと新たな35年周期の保護主義の始まり。

 中国を主とする貿易不均衡の解消等を目指すトランプ氏の主張は、トッド氏の言う合理的な保護主義に合致しているように思われる。


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テーマ : 感想
ジャンル : 本・雑誌

「問題は英国ではない、EUなのだ」



問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論
(エマニュエル・トッド著、文藝春秋、2016年9月20日 第1刷発行)


 掲題書で、今、世界で起こっている現象を、エマニュエル・トッドが、明快に解説している。


第2次大戦後の3つの局面


第1局面 1950年から1980年までの経済成長期
 ヨーロッパと日本がアメリカに追いついた、消費社会が到来した時代

第2局面 1950年から2010年
 経済的グローバリゼーションを経験した時期
 アングロ・アメリカン、英米によって推進。ソ連や中国の共産主義は抵抗し得ず

第3局面 2010年~
 グローバリゼーションのダイナミズムが底をつき、その兆候が米英の2国で現れてきている。グローバリゼーション・ファティーグ(疲労)に苦しんでいる


米国でトランプが勝利した背景
 不平等の拡大、支配的な白人グループにおける死亡率の上昇、社会不安の一般化
 ⇒ナショナルな方向への揺り戻しの象徴


英国がEU離脱(Brexit)した背景
 イギリス議会の主権回復。「ドイツに支配されている欧州」からの独立。「サッチャリズム」と呼ばれる市場原理主義的な経済政策(「ゆりかごから墓場まで」に象徴される手厚い福祉に守られてきた国民に対して、「個人の力」の重要性を強調して「社会だとというものは存在しない[There is no such thing as socoiety.]という言葉に代表される)から、イギリス国民の「いや、社会は存在している。我々は我々として存在しているんだ」というイギリス国民の叫びだった


ドイツがEUで1人勝ちする背景
 熱烈な重商主義と過剰な貿易黒字が示す、グローバリゼーションの理想に忠実であり続いている唯一の先進国。東ヨーローッパの労働力と西ヨーロッパの消費者を組み合わせている。ナチス・ドイツと熾烈に戦った連合国側兵士の90%がロシア人だったことをドイツ人は知っている。ソ連ブロック瓦解後にアメリカの反ロシア政策によりドイツは自国の過去から解放された結果、米国はドイツに対するコントロール力を失った


フランスが迷走する背景
 ドイツとの良きバランスの回復の鍵となるのが、フランスにとって破壊的に働くユーロではなく、パリ-ロンドン軸だということを理解せず、そのことを予測する能力を持ち合わせなかった。ドイツに対する自主的隷属は、ドイツのネイションとしての再形成に貢献した(だけ)


アメリカ帝国の弱体化
 「アメリカ帝国」とはいわば、各地域の同盟国との関係によって維持されるフランチャイズ・システムだった。どころが、ドイツはアメリカの意見に耳を貸さず、欧州全体を引き連れて不況に突入するような経済政策を続けている。かつての同盟国、サウジアラビアやトルコなども言うことを聞かず

 イラクのクルド人組織を創設することで、ようやく解決に向かっていた「クルド人問題」を再燃させて、トルコのクルド人問題も深刻化し、トルコは内戦のような状態に

 アメリカが西洋世界にとって、中東における重要拠点であるサウジアラビアと特別な関係を築いて、中東の原油をコントロールしてきたのは、欧州と日本をコントロールするため(アメリカは中東の石油に依存している訳ではない)。

 サウジアラビアは昔から部族社会、出生率の急減など深層では大きな地殻変動が起きて、社会全体が不安定化しつつある。現在、イエメンなどの周辺情勢に積極的に介入しているのも自国問題からの逃避にしか見えない
 

家族システムから見たスンニ派とシーア派
 シーア派では、後継者として息子がいなければ、娘が相続することがあるが、スンニ派では、父系の親戚筋が相続人となり、女子が相続することはない。同じイスラム圏でも、シーア派のイランは、父権性がより弱く、女性の地位がより高く、より核家族的で、より個人主義的


ロシアの復活、しかし脅威論は幻想にすぎない
 先進国の中で出生率を1.8にまで劇的に回復した唯一の国がロシア。伝統的な家族構造は、父権的な共同家族で、中国やアラブ圏に似ているが、女性の高等教育進学率や地位が高いことにロシア復活の秘密あり

 ウクライナ危機もロシア語を話せる教育水準の高い移民の増加は人口問題があるロシアの利益に

 共産主義が崩壊した後も、共同体家族に由来する集団的行動の文化を維持しており、自分たちのネイションを信頼している

 とはいえ、人口が1億4千万人で日本と同規模である以上、大帝国かなど不可能。中級のパワー、安定的で保守的なパワーとして再擡頭しているのであって、西側諸国のロシア脅威論は幻想


中国超大国論は神話にすぎない
 高等教育の進学率が5%未満、出生率の急減、GDPに占める「総固定資本形成(インフラ整備などの公的および民間の設備投資)」が40~50%と過剰でバブル崩壊の可能性もあり、不安定な極


米露こそ日本のパートナー
 中国の存在を考えれば、ロシアとの関係構築は地政学的に理に適っている。アメリカの尊厳を傷つけない仕方で進める必要がある。アメリカには、もはや「世界の警察官」を独力で担えるだけの力はない(「アジア重視」なのに空母配備は一隻のみ)ため、日本は自主的な防衛力を整えつつ、アメリカを助けるために、軍事的、技術的に貢献すべき



 12月の安倍首相のプーチンやオバマとの会談、トッド氏の主張にも合致していることが理解できる


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テーマ : 国際問題
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「グローバリズムが世界を滅ぼす」⑦



「グローバリズムが世界を滅ぼす」(エマニュエル・トッド、ハジュン・チャン、柴山佳太、中野剛志、藤井聡、堀茂樹、文藝春秋)より


  日本の真の問題は出生率低下


トッド 日本経済は、日本国内で議論されているよりも、外から見れば、かなり健全ではないでしょうか。私はアベノミクスには肯定的で、日本の為になると思います。実は海外でも、中道左派の考え方の人は、これを肯定すると思います。国際的にみれば、円安政策は階層を問わず所得が落ちて、それを連帯して支えるという政策ですから、左派的な政策といえるからです。一方、ドイツは緊縮財政を取っていますが、これは国家の介入を控える右派的政策です。皮肉なのは、今、ドイツの与党の一員は、社会主義労働者党を前身とする社会民主党であり、日本のリベラルな経済政策は、保守政党である自民党によって行われていることです。

 また、今の日本は単なる富裕国ではなく、科学技術などで世界をリードする先進国の一つです。たとえば、日本の特許は世界の2~3割を占めています。

現在の中国のようにキャッチアップする国は、当然高い成長率になります。一方で、世界の最前線に位置する国は必然的に成長率は下がります。というのも、未知の技術を開発し、世界にこれまで存在しなかった何かをもたらす国は、それだけ失敗のリスクもあり、全く無駄なものを開発することもあるからです。そうなると、どうしても、1.5%から2.5%程度の成長率になるのです。日本がこのレベルの成長率に落ちた時期こそ、まさに日本が世界の最先端に立った時期と重なるはずです。


 低い出生率は日本の抱える問題だと思います。しかし、その原因は家族制度の崩壊ではなく、むしろ「家族」をあまりに重々しく考えているからではないでしょうか。

 家族類型の分析でみると、日本は、韓国、それにドイツと同じ「直系家族」と呼ばれるタイプに属しています。親が子供に対して権威的で親子の同居率が高く、資産の世代間継承を重視し、子供の教育に対して熱心であることなどが特徴です。

 この家族観が出生率低下の原因の一つになっています。逆説的なことですが、家族の重視が家族を破壊している。つまり、家族を重視し、その形や在り方にこだわるあまり、家族の形成を難しくしているのです。出生率の低い韓国やドイツも同様です。

 一方、フランスで出生率が高いのは、家族をもっと気楽にとらえているからでしょう。離婚、片親による子育て、婚外子も特別なことではなく、フランスの出生数のうち婚外子は55%を占めます。また、子供は2歳から公立の無料の保育学校に活かせることができ、仕事と子育ての両立が容易です。つまり幼児教育への国家の介入が、高い出生率をもたらしている。経済の見通しが暗いにもかかわらず。それと裏腹に、社会は驚くほど生き生きとしています。


藤井 日本はまだ、TPPも妥結していませんし、アメリカやヨーロッパのようには、自由貿易にも飲み込まれていない。世界でもいち早く高齢化社会を迎えているものの、トッドさんが言うように技術力をはじめ、低成長でも潜在力を秘めている。つまり、日本は、これから、さらにグローバル化を推し進める余地を膨大に持っていると同時に、グローバル化せずにこれまで日本が培ってきた様々なものを大切にしつつ、国民の力で経済のみならず社会的にも文化的にもさらに成長していく潜在力を大きく秘めているとも言える。だとすると、いま日本が置かれている立場は、世界の未来を決める実験場のようなものなのかもしれませんね。


>>フランスのように家族をもっと気楽にとらえる人が増えれば、日本も出生率低下に歯止めをかけることが出来るはずだ

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