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ソ連建国から100年後のウクライナ戦争は必然?

 

【 ゴルバチョフ元大統領の死 】

 


 2022/8/31、数量政策学者の高橋洋一と、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠が、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」で、8月30日に亡くなったゴルバチョフ元ソ連大統領について解説した。
https://news.1242.com/article/383387

 


ゴルバチョフ元大統領の死でソ連の指導経験者は全員いなくなった

 

タス通信によると、旧ソ連末期に硬直した共産党独裁体制を立て直す「ペレストロイカ」を推進、東西冷戦を終結に導きノーベル平和賞も受賞したミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領が8月30日に亡くなった。91歳だった。

 


2022年はソ連建国100周年 ~100年経ち、最後の指導者が亡くなる

 

小泉)彼と一緒にペレストロイカを進めたヤコブレフさんなどの仲間たちも、多くが鬼籍に入られています。ソ連崩壊から31年が経ち、「遠くに行ったな」という感じですね。

 

今年(2022年)は1922年のソ連建国から100周年でもあります。1917年に革命がありましたが、そこから5年間の激しい内戦の末にソ連はできたのです。まさにソ連という企てから100年経ったところで、最後の指導者が亡くなった。何かのめぐり合わせでしょうか。

 


ロシア国内ではソ連時代の総括はし切れていない ~ソ連のなかの白人支配層が密約で解体を決めた

 

飯田)ゴルバチョフさんが亡くなり、ソ連時代の総括に関して、ロシア国内ではどのように見られているのですか?

 

小泉)総括し切れていないのではないでしょうか。ソ連がなくなってしまったのは、もちろん政治的に現実ではあるのだけれども、大日本帝国がなくなったときのように、軍事的に破局を迎えたわけではないですよね。

なくなる過程に関しても、崩壊したというよりはソ連内部のロシア側、ウクライナ側やベラルーシ側、要するに白人支配層が密約で解体を決めたのです。

 


ソ連崩壊によってアメリカとの冷戦に負けた形になり、30年間面白くない思いを続けてきたロシア国民 ~そこから誕生したプーチン大統領がウクライナとの戦争を始めた100年目の節目

 

小泉)ソ連がなくなった少しあとに、フランシス・フクヤマさんというアメリカの政治学者が、「共産主義という近代の在り方は失敗したのである。ナチズムはその前に負けているから、アメリカのような自由民主主義しかないのだ」というような、アメリカ陣営の冷戦勝利宣言とも取れる『歴史の終わり』と言う本を書いたのです。そういう感覚に対して、ロシア人はずっと面白くないものを感じてきたわけです。

 

「我々はアメリカとの冷戦に負けたわけではなく、終わらせただけだ。たまたまそこに国家崩壊が重なっただけなのに、敗北したような扱いを受けていて許せない」という気持ちがずっとあったし、ソ連崩壊で同じルーシ民族がバラバラになってしまったことも、民族主義的に面白くなかった。

 

この30年間、面白くない感情を抱え続けてきたロシア社会がプーチン大統領を生み、プーチン大統領が今回の戦争を始めてしまった。その意味でも、「ソ連建国から100年の節目でこういうことが起きた」というのは単に象徴的でもあり、ある意味では必然だったのかも知れません。

 


クリミアはロシア人にとって特別な「軍事的栄光の地」

 

小泉)クリミアはソ連ということを超えて、「ロシア人の軍事的栄光の地である」という感覚があります。何としても取り戻さなければいけないという感覚は、リベラルな人でも思っていることです。捕まっているナワリヌイさんでさえ、それは言うのです。

 

ナワリヌイさんでさえ、「クリミアは返さん」と言います。さらに言うとゴルバチョフさんは、91年8月のクーデターで監禁されていた場所もクリミアでしたから、彼にとって個人的な思い入れもいろいろあるのでしょう。そういう意味では、ゴルバチョフさんもリベラルではあるのだけれど、完全に我々西側世界の人間と同じだったかと言うと、もちろんそうではなく、やはりロシア人でもあったということです。

 


<感想>
 ソ連建国から100年目のゴルバチョフの死。
 ソ連崩壊から30年間のロシアがプーチン大統領を生み出し、ウクライナ戦争を始めたのは必然だったように思われる。

 

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NATO東方不拡大の約束はロシアのプロパガンダ?

 

【 NATOの東方不拡大の「約束」】

 


 2022/3/2、国際経済学者の細谷雄一氏が、『NATOの東方不拡大の「約束」はなかった ー最新の外交史研究の成果から』のブログを掲載された。
https://note.com/yuichihosoya/n/n778caf033b27

 以下は一部抜粋。

 


プーチン
NATOが東方不拡大の約束をしてそれを破り、ロシアの安全が脅かされて、ほかに方法がなくやむを得ずにウクライナを攻撃したという論法

 


サロッティ教授(米国人外交史家)
「NATO東方不拡大の約束はない」と明言


1990年2月9日のベイカー国務長官の、ゴルバチョフ書記長とのモスクワでの会談での発言

1)ベイカーがドイツ統一のソ連による承認を得るために、色々な条件を述べた中でそのような可能性(not one inchという言葉)を示唆したということであって、具体的には北大西洋条約5条の集団防衛条項を冷戦期の分断線を越えて拡げないという提案をした

2)その後モスクワからワシントンに戻ってブッシュ大統領に報告をした際に、ブッシュ大統領はそのようなベイカーの提案は到底アメリカ政府として認められないということで、却下


実際にはそのようなベイカーの提案があくまでも米国政府の正式な提示ではなかったので、文章化もなかった

 

通常は外交では「約束」といった場合には、文書化して署名が必要であり、そのことはゴルバチョフも理解していたはずなので、その点では「約束」があったとは両者とも認識していない、と言及。なので、「約束は、なかった」ということに

 

ただこのようなベイカーの発言自体は、ロシア政府側の記録に残っていたために、1997年にクリントン大統領とエリツィン大統領がNATO東方拡大についての米ロ首脳会談をした際に、ロシア政府側から「1990年のベイカー発言」について問題提起があった

 

それに対してクリントン大統領は、1990年の「約束」とはあくまでもドイツ統一に関連した内容で、中東欧諸国についてではないと論じ、それをエリツィンも了解。これで、米ソ両国とも、1990年に米ソ間でNATO東方不拡大についての「約束」があったわけではないことを、確認した

 


ともあれ、れいわ新選組がロシアのプロパガンダを鵜呑みにしたことによって、せっかく国会で全会一致でロシアのウクライナへの軍事攻撃と、それに伴う人道的被害を批判する決議を採択できる機会を失ってしまいました。残念です。

 


ご参考)2022年1月31日
NATO不拡大の約束はなかった
――プーチンの神話について

袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/安全保障問題研究会会長/青山学院大学名誉教授
https://www.jfir.or.jp/studygroup_article/7401/?fbclid=IwAR2Z8IIzaA06-acPI2U3AA-gBYb9KMvsws3S13bAUWULR3giKdXl1PFJ7ZU

 


<感想>
 ロシア(プーチン大統領)が繰り返す「NATO東方不拡大の約束」発言。
 プロパガンダに踊らされることなく、事実(史実)の確認が必要だと思われる。

 

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