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「文系の壁 理系の対話で人間社会をとらえ直す」②



「文系の壁 理系の対話で人間社会をとらえ直す」(養老孟司著、PHP研究所)より


 第二章  他者の現実を実体験する技術で、人類の認知は進化する  藤井直敬×養老孟司


  「前提を問う」ことこそが科学


養老 その前提から始めたら普通の科学になるんですが、科学というのは本来、新しいことに挑戦することのはずでしょう? なのに、前提自体を問えと言うと、絶対嫌がられる。
 でも、科学者に「あなたがやってることはすべてあなたの脳みそに依存してるでしょう?それがどれだけ確かなもんですか?」と聞いた瞬間に、すべての前提はくずれてしまうんですよ。

藤井 そうですね。科学者はルールの上に成り立ってる仕事なので、ルールの根本を、「それでいいの」って聞くと、すごく嫌がられる。


養老 言ってみれば、麻酔科の教授は患者の意識を毎日コントロールしてるわけでしょう?でもその仕組みはわからない。なぜ酒を飲むと意識がなくなるのかもわからない。それなのに、意識で科学をやっているんですよ。だから僕は、「科学的に証明された」なんて言うやつは一切信用しない。前提を考えたことがないって言ってるのと同じですからね。

 学問はどれも、前提を問うという面を持ってます。それがすべてとは言わないけど。哲学なんか典型的で、常に前提を問わなきゃいけない。でも、特に、日本の学問はそれをやらないですね。世間というのがあって、それに合わせなきゃいけないから、前提が与えられちゃうんですよ。

藤井 前提というか、主観のフレームみたいなものが外から来ているので、そのルールにのとって闘うことを強いられていますね。それは、しょうがないといえばしょうがないと思うんですけど。

養老 それを壊すと、こっちがルール違反になっちゃう。

藤井 そうすると、論文が出ないから業績が出ない。

養老 そうすると、業界から外されてしまう。


  創造とは、脳の中で新しい組み合わせをつくること

藤井
 突拍子もないことをたくさん思い浮かべ、それをつなげたらどんな価値が生まれるかということをずっと考えるのが、「創造」なんだと思います。


 おそらく、創造とは、今まで別々だったものをくっつけて新しさを生み出すことで、そこに価値があれば売れるんでしょう。僕らはよく「創造性を高める」といいますけど、それは、脳の中でいろんあものを関連づける作業を無限にやるってことじゃないかと思う。その中で、幾つか「これはいけるかも」と思える組み合わせが出てくる。それが創造の瞬間でしょう。今までは脳の中でやっていたそういう作業を、最近は脳の外で計算でやるようになってきたんです。


>>常に、前提を問い続けて、新しい組み合わせを創造して行きたい

「文系の壁 理系の対話で人間社会をとらえ直す」①



「文系の壁 理系の対話で人間社会をとらえ直す」(養老孟司著、PHP研究所)より


第一章  理系と文系――論理と言葉  森博嗣×養老孟司


  今の学生は、考えないで答をさがす


 今の学生たちは、わからないことの答は、検索すればどこかにあると思っていますね。あまり、自分で考えて仮説を立てようとはしない。わからないことは、ネットで検索すれば見つかるはずだと信じているのです。学生に課題を出すと、たしかに一所懸命調べて、集めた情報でなんとか辻褄合わせをしようとする。だけど、それは研究ではありません。


「どうしてかな?」と不思議に思えば、頭を働かせて想像するでしょう。小さい頃にそういう体験をしていないと、考えない大人になってしまうのではないかという気がします。



  自分一人で楽しめないのは、工夫して自分で問題を解決していないから

  うまくいった工夫は、自分一人でこっそり眺めて悦に入っています。今の人は、何をするにしても他人に見せびらかせないと楽しめないところがあるようです。写真を撮影するにも、どこかに公開してみんなから反応がないと楽しめない。でも、自分一人で楽しめないのは、工夫して問題を自分で解決してないからです。


>>いつまでも、頭を働かせて想像して、仮説を立てて、考えて、工夫して自分で問題を解決し続けて行きたい
 

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