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「評伝 吉田茂」


「評伝 吉田茂 下」(猪木正道著、読売新聞社)より


 芦田委員長以下十三名の委員からなる小委員会は、日本国憲法案第九条に二つの重大な修正を加えた。二つとも芦田委員長みずからの手になるものだ。第一項に加えられた「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」という文句は、単に国民の理想を積極的に表明しただけであるが、第二項の冒頭に「前項の目的を達するため」という一句が挿入されたことによって、第二項の意味はいちじるしく変化した。もし原案のままであったならば、陸・海・空軍その他の戦力の保持は違憲になるのに反して、「前項の目的を達するため」という限定が加わったことにより、国際紛争解決の手段としての陸・海・空軍その他の戦略は禁止されるけれども、自衛のための陸・海・空軍その他の戦略は保持できることになったからである。


 吉田首相が日本の再建に果たした絶大な役割は正当に評価されているのに反して、芦田均の業績が軽視されたり、無視されたりしているのは遺憾である。吉田茂が行政府の最高責任者として、日本は自衛のための戦争も行わないという点を強調することにより、戦勝国や近隣諸国の猜疑心を拭い去るのに全力を挙げていた時、芦田均は立法府で日本国が将来自衛力を保持できるよう、めだたない努力を続けていた。吉田茂と芦田均とは性格の違いもあって親しい間柄ではなく、やがて二人は政敵同士になってしまうが、憲法改正の過程に関するかぎり、両者の間には意図しない協力関係が成立していたのだ。

 芦田修正によって、日本国が将来軍を持てるようになったことは、いわゆる文民条項を加えるよう総司令部が申し入れてきた点からも明らかである。


 文民条項というのは、現行憲法第六十六条第二項に「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と規定されていることを指す。


>>芦田修正がなければ自衛隊が存在しなかっただろう



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