ToSTNeT-3ではなくディスカウントTOBを選択?
【 サンリオ:リキャップCB 】
2023/11/28、サンリオがユーロ円CB、自己株式TOBと自己株式消却を発表した。
(https://ssl4.eir-parts.net/doc/8136/tdnet/2367695/00.pdf、他)
以下は、プレスリリース等からの一部抜粋。
1.ユーロ円CB発行+自己株式TOB
(1) 潜在株式数の増加:3,891千株(30,000百万円÷7,710円)(a)(ユーロ円CBの転換価額:7,710円(11/28終値@6,425×120%))
(2) 自己株式数の増加:1,990千株(b)
2.自己株式消却
消却する株式の総数:4,000,000株(発行済株式総数に対する割合 4.49%)
消却予定日:2024年2月29日
消却後の発行済株式数:85,089,701株(c)
消却後の自己株式数:4,423,217株(d)(d÷c=5.20%)
3.潜在株式顕在化時に自己株式充当した場合
自己株式数:2,522千株(b+d-a)
ご参考)ToSTNeT-3ではなく、TOBを選択する理由
1.益金不算入額の改正(2022/4/1~)
<配当等の区分に応じた益金不算入額>
https://www.koyano-cpa.gr.jp/archives/knowledge/13104
2.株式保有割合
発行済株式数:89,089,701株
*滝川商事:6,591千株(7.40% > 5%)
*光南商事:4,534千株(5.09% > 5%)
→益金不算入額:50%(*オーナー家の資産管理会社)
3.自己株式TOB > ToSTNeT-3
自己株式TOB価格:2023/11/30と2023/11/28の東証終値を比較して、より低い価格に対して10%ディスカウントを行った価格
→10%ディスカウントにしても、益金不算入の「税効果」メリットがあるため、TOBを選択
<感想>
オーナー家の資産管理会社を活用したMBOを選択して非公開化する事例が散見されるが、税務メリットのある自己株式TOBを活用して上場を維持する選択肢もあり得るものと思われる。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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三信電気の2回の自己株式TOBのその後?
【 三信電気:2回の自己株式TOB 】
以下は、2121年と2018年に、PBR1倍の価格で自己株式TOBを実施した三信電気の株価推移等。
<月間株価推移>
2021年12月 高値1,485円、安値1,371円
2021年11月 高値1,701円、安値1,375円
2021年10月 高値1,731円、安値1,572円
2021年 9月 高値1,806円、安値1,605円
2021年 8月 高値2,156円、安値1,543円
1.2021/7/20「自己株式の公開買付けの結果及び取得終了並びに主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」
https://www.sanshin.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/07/tob_kekka_shutoku_end210720.pdf
TOB期間:2021/6/22~2021/7/19(20営業日)
TOB価格:普通株式1株につき、金2,249円※
TOBの結果:応募数 7,486,162株、買付数7,000,000株(発行済株式総数の28.83%)
株式取得価額の総額:15,743百万円
※ https://www.sanshin.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/06/shutoku_et_tob210621.pdf
当社は、新中期経営計画を推進し、事業構造改革による収益改善と自己株式の公開買付けや増配等による資本の適正化を図って資本効率を高めることが当社の中長期的な企業価値の維持ないし向上に資するとの考えの下、新中期経営計画における目標達成のためには、本公開買付けの実施及びシティインデックスイレブンスによる応募が必要不可欠であること、本公開買付けが実施されることによる収益性や資本効率の向上等も勘案し、2021年4月27日に、シティインデックスイレブンスとの間で、2021年3月期末時点の連結ベースでの1株当たり純資産と同額の2,249円を公開買付価格とすることについて、内諾を得ておりました。
月間株価推移:
2021年7月 高値2,211円、安値1,989円
2021年6月 高値2,189円、安値2,115円
2021年5月 高値2,199円、安値2,006円
2.2018/6/12 「自己株式の公開買付けの結果及び自己株式の取得終了に関するお知らせ」
https://www.sanshin.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/03/tob_kekka_shutoku_end180612.pdf
TOB期間:2018/5/15~2018/6/11(20営業日)
TOB価格:普通株式1株につき、金2,191円**
TOBの結果:応募数 9,956,667株、買付数9,000,000株(発行済株式総数の30.74%)
株式取得価額の総額:19,719百万円
** https://www.sanshin.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/03/shutoku_et_tob180514.pdf
株主間の平等性に配慮し、本公開買付けに応募せず当社普通株式を引き続き保有する株主の皆様の利益を尊重する観点から、資産の社外流出を可能な限り抑えるべきことを踏まえ、客観的な指標である連結ベースの1株当たり純資産額を取得価格とすることが望ましいと判断いたしました。
当社は、以上の検討を経て、2018年5月14日開催の取締役会において、本公開買付価格を連結ベースの1株当たり純資産額である2,191円とすることを決議いたしました。
月間株価推移:
2018年6月 高値2,200円、安値1,847円
2018年5月 高値2,454円、安値2,121円
2018年4月 高値2,251円、安値2,082円
<感想>
旧村上ファンドに株式を取得され、2回の自己株式TOB(@PBR1倍)を実施した三信電気。
29,281千株の発行済株式数の内、2回の自己株式TOBで16百万株(54.6%)を取得。
昨年末、NISA枠の一部で取得した当該株式の株価動向を当面確認してゆくこととしたい。
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ハーバー研究所も資産管理会社から自己株式TOB?
【 ハーバー研究所:自己株式TOB 】
2019/9/6、ハーバー研究所(4925)が、自己株式の公開買付け(TOB)を発表した。
http://www.haba.com/company/wp-content/uploads/2019/09/2d647bed0617a9ecc59f1f15a6ca9edf.pdf
以下はその概要。
1.TOBの概要
TOB価格:7,458円(9/5終値×95%)
(1)数量:165,100株(上限)(発行済株式数の4.2%)
(2)金額:1,231,315,800円(上限)
(3)期間:2019/9/9〜10/8(20営業日)
(4)目的等
< 基本方針 >
将来の積極的な事業展開とそれを支える経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、株主に安定的な配当を実施すること
< 資産管理会社からの売却意向 >
2019/7上旬、第4位の大株主である*有限会社ナチュラル(「ナチュラル」)より、保有する株式の全ての152,000株(保有割合:3.86%)を売却する意向がある旨の連絡を受けた
*当社代表取締役社長小柳典子氏の実兄で、当社の創業者であり元取締役会長でもある故小柳昌之氏の配偶者小柳かず江氏が代表取締役を務め、故小柳昌之氏(2019/2死去)及び小柳かず江氏の資産管理会社であり、小柳かず江氏、小柳典子氏がその議決権の全てを保有
< 当社の判断 >
2019/7中旬
一時的にまとまった数量の株式が市場に放出された場合における株式の流動性及び市場株価への影響、並びに当社の財務状況等に鑑みて、自己株式取得の具体的な検討を開始
2019/7下旬
自己株式取得は、株式の需給関係の一時的な悪化を回避することが期待できるだけでなく、当社の1株当たり当期純利益(EPS)の向上や自己資本利益率(ROE)などの資本効率の向上に寄与し、株主に対する利益還元に繋がることになると判断した
株主間の平等性、取引の透明性の観点から十分に検討を重ねた結果、TOBの手法が適切であると判断した
TOB価格は、当社は、TOBに応募せずに当社株式を保有し続ける株主の利益を尊重する観点から、資産の社外流出を可能な限り抑えるべく、一定のディスカウントを行った価格が望ましいと判断した
2019/9/5
当社は、ナチュラルに対して、一定のディスカウントを行った価格でTOBの応募について打診したところ、同日に、ナチュラルより売却意向株式(152,000株(保有割合:3.86%)の応募を前向きに検討する旨の回答を得られた
当社は、実際にディスカウント率の基礎となる株式の価格については、直近の業績が最も株価に反映されていると考えられる、TOBの取締役会決議日の前営業日(2019/9/5)の終値とし、そこから5%程度ディスカウントした金額をTOB価格とすることをナチュラルに提案した
その結果、当社がTOBの実施を決議した場合、ナチュラルより 上記条件にて売却意向株式(152,000株(保有割合:3.86%)の全てをTOBに応募する旨の回答を得た
2019/9/6
取締役会において、自己株式の取得及びその具体的な取得方法としてTOBを行うことを決議した。加えて、買付予定数については、ナチュラル以外の株主にも応募の機会を提供する観点から、165,000株(保有割合:4.19%)を上限とした
TOBに要する資金については、その全額を自己資金により充当する予定(連結ベースの手元流動性(現金及び預金)は約 5,471百万円であり、株式取得を行った場合においても手元流動性は十分確保でき、さらに事業から生み出されるキャッシュ・フローの積み上げにより、財務健全性及び安全性は今後も維持できると考えている)
なお、当社の代表取締役社長である小柳典子氏は、TOBに関して特別利害関係を有することに鑑み、利益相反を回避し、取引の公正性を高める観点から、TOBの諸条件に関する話し合い・ 交渉には当社の立場からは参加しておらず、上記の取締役会における審議及び決議にも参加していない
2.株価終値推移(円)
9/5 7,850、9/6 7,600、9/9 7,760
9/12 7,860、9/17 7,910
<感想>
本件は、創業者の死去に伴う、資産管理会社保有株式の自己株式TOB案件。*益金不算入制度(20%)を活用したものと思われる。
*https://www.eyjapan.jp/library/issue/info-sensor/pdf/info-sensor-2015-07-07.pdf
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SANKYOはオーナーの資産管理会社から自己株式TOB?
【 SANKYO:自己株式TOB 】
2019/8/6、SANKYO(6417)が、「自己株式の取得及び自己株式の公開買付け(TOB)に関するお知らせ」を発表した。
https://www.sankyo-fever.co.jp/corporate/modify/tool/03/press20190806.pdf?r=corp_info
以下は、その時系列等の概要。
1.2018年10月下旬
・更なる株主還元及び資本効率の向上を目的として自己株式の取得について検討を開始
・当社株式を自己株式として取得すること
(1)当社の1株当たり当期純利益(EPS)の向上
(2)自己資本当期純利益率(ROE)など資本効率の向上に寄与
(3)株主に対する利益還元に繋がること
⇒ 大株主が所有する当社株式を取得するのであれば、流動性を損ねることなく比較的短期間に相当規模の自己株式を取得できると判断
・当社株式を28,346,000株(所有割合34.92%、除自己株式)所有し当社の主要株主/筆頭株主の*マーフコーポレーション(「マーフC」)に対して、その所有する当社株式の一部の当社への売却を打診
⇒ マーフCより当社株式を売却の可否について検討する旨の回答を得た
*毒島秀行代表取締役会長が議決権の100%を所有する資産管理会社
2.2019年1月中旬
・マーフCに対して、市場価格より一定のディスカウントを行った価格でTOBを実施した場合の応募可否について打診
3.2019年6月下旬
・2,000万株程度での応募を前向きに検討する旨の回答あり
4.2019年7月
・中旬:TOBの具体的な条件についてマーフCと協議
・下旬:短期的な価格変動の影響を受けず、かつ直近の業績が十分に織り込まれていると考えられることから、TOBの実施を決定する取締役会決議日の前営業日(2019年8月5日)までの過去1 ヶ月間の東証終値の単純平均値を基準として 10%程度ディスカウントした価格でのTOBの実施についてマーフCに提案
⇒ マーフCは、その所有する株式の一部である2,000万株(所有割合 24.64%)をTOBに応募する意向を表明
5.2019年8月6日
・取締役会で以下内容を決議
(1)自己株式の取得を行うこと
(2)その具体的な取得方法としてTOBを実施すること
(3)TOB価格を前営業日(2019年8月5日)までの過去1ヶ月間の東証終値の単純平均値3,807 円に対して 10.01%のディスカウント価格3,426円とすること
6.株価終値推移
8/5 3,655円、8/6 3,630円、8/7 3,630円
8/8 3,600円、8/9 3,600円
<感想>
オーナー株式の出口戦略を、本件のように「自己株式TOB(⇒自社独自路線の継続)」で行くのか、「ファンケル⇒キリンHD」や「ぐるなび⇒楽天」宛て売却による資本業務提携で行くのか。
オーナー/会社の戦略次第で、その後の方向性が異なることが理解できる。
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