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極めてベタなインサイダー取引?


【 TOB開示前の株式取得 】

 


 2024/3/29、未公表のTOB情報を利用したインサイダー取引について、証券取引等監視委員会が、金融庁宛て、課徴金納付命令を発出するよう勧告した。

 


< 全体概要図 >
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2024/2024/20240329-1.html#%EF%BC%90%EF%BC%


タツタ電線株式会社社員による内部者取引及び情報伝達行為並びに同社員から伝達を受けた者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 


1.勧告の内容
 証券取引等監視委員会は、タツタ電線株式会社社員による内部者取引及び情報伝達行為並びに同社員から伝達を受けた者による内部者取引について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。

 


2.法令違反の事実関係
 (1) 課徴金納付命令対象者(1)について
 課徴金納付命令対象者(1)は、タツタ電線株式会社(以下「タツタ電線」という。)の社員であったが、タツタ電線の役員がその職務に関しJX金属株式会社(以下「JX金属」という。)からの伝達により知った、同社の業務執行を決定する機関がタツタ電線株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を、その職務に関し知りながら、

 

ア.違反行為事実A
 親族である課徴金納付命令対象者(2)に対し、上記事実の公表がされる前にタツタ電線株式の買付けをさせることにより同人に利益を得させる目的をもって、上記事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けた同人が、上記事実の公表がされた令和4年12月22日より前の同月21日、タツタ電線株式合計4400株を買付価額合計183万8500円で買い付けたものである。

 

イ.違反行為事実B
 上記事実の公表がされた令和4年12月22日より前の同月21日、課徴金納付命令対象者(2)名義で、タツタ電線株式合計2000株を、自己の計算において、買付価額合計84万円で買い付けたものである。


 課徴金納付命令対象者(1)が行った

 

 上記ア.の行為は、金融商品取引法第175条の2第2項に規定する「第167条の2第2項の規定に違反して、同項の伝達をし、又は同項の買付け等をすることを勧める」行為に該当すると認められる。

 

 上記イ.の行為は、金融商品取引法第175条第2項に規定する「第167条第1項の規定に違反して、同条第1項に規定する特定株券等若しくは関連株券等に係る買付け等をした」行為に該当すると認められる。

 


 (2) 課徴金納付命令対象者(2)について
 課徴金納付命令対象者(2)は、タツタ電線の社員であった課徴金納付命令対象者(1)から、同人がその職務に関し知った、タツタ電線の役員がその職務に関しJX金属からの伝達により知った同社の業務執行を決定する機関がタツタ電線株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受けながら、上記事実の公表がされた令和4年12月22日より前の同月21日、タツタ電線株式合計4400株を、自己の計算において、買付価額合計183万8500円で買い付けたものである。

 

 課徴金納付命令対象者(2)が行った上記の行為は、金融商品取引法第175条第2項に規定する「第167条第3項の規定に違反して、同条第1項に規定する特定株券等若しくは関連株券等に係る買付け等をした」行為に該当すると認められる。

 


3.課徴金の額の計算
 上記の違反行為に対し、金融商品取引法に基づき納付を命じられる課徴金の額は、下記のとおりである。

 課徴金納付命令対象者(1)126万円
 課徴金納付命令対象者(2)133万円

 計算方法の詳細については、 *別紙のとおり。
*https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2024/2024/20240329-1/02.pdf

 


<感想>
本件は、未公表の重要事実であるTOB情報を利用して、本人と親族が株式を取得&公表後に売却した事案。このような極めてベタなインサイダー事案が発生しないように、国民一人ひとりの金融リテラシー向上が望まれる。

 

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インサイダー情報が公表前にダダ漏れ?

 

【 インサイダー情報:杜撰な取り扱い 】

 


 2023/9/5 11:50に、JFEが、増資(海外募集)・自己株式処分・ユーロ円CBをTDnetで公表したが、当日の日経朝刊(電子版は2:00)に記事が掲載されていた。

 同日の時系列、株価推移は、次の通り。

 


2:00 

日経電子版
JFE、公募増資・転換社債で2000億円脱炭素へ成長投資

 


8:40 

当社に関する報道について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120230905550523.pdf

 

本日、日本経済新聞において、当社の公募増資と新株予約権付社債に関して 2,000億円規模の海外募集を行う旨の報道がありましたが、報道された内容は当社が発表したものではありません。
本件については、2023年9月5日の当社取締役会に付議する予定であり、公表すべき事実について 決定した場合には、速やかに公表いたします。

 


11:50 

海外募集による新株式の発行及び自己株式の処分並びに2028年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ
https://www.jfe-holdings.co.jp/release/2023/09/230905.pdf

 


9月5日株価推移(9月4日終値@2,437)
始値@2,250(9:09)
安値@2,217(9:19)
高値@2,293(14:09)
終値@2,289(15:00)

 


重要事実一覧表
https://www.jpx.co.jp/learning/tour/books-brochures/tvdivq0000003rx6-att/jy_stock20210301_2.pdf

 


<感想>
JFEの調達は「重要事実の決定」に当たり、当該内容が未公表の段階で、発行会社の意思決定者側から日経新聞記者宛てに、リークされたものと思われる。
インサイダー情報の杜撰な取り扱いは嘆かわしい。

 

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インサイダー情報に基づいた買い増し?

 

【 日本製麻:特別調査委員会設置 】

 


 2023/8/29、日本製麻が、「特別調査委員会設置に関するお知らせ」を発表した。
https://www.nihonseima.co.jp/pdf/news/20230829_tokubetutyousa_iinkaisetti_oshirase.pdf

 以下は、一部抜粋。

 


1.特別調査委員会の設置について 
当社は、当社取締役(「対象取締役」)が大株主であり、かつ、取締役会長を務める株式会社(「対象会社」)が、当社が発行する株式を、市場にて大量に買い付けた事実が確認できております。

 

対象会社による上記買い付け行為は、同氏が、当社の未公表の情報を基に対象会社をして当社株式を買い付けせしめたものではないかとの疑惑(「本件疑惑」)が浮上しております。

 

本件疑惑が事実であれば、対象取締役ないし対象会社が当社のインサイダー情報を基に行った取引として、金融商品取引法上のインサイダー取引規制に違反し得ることになります。そこで、当社は、事実経緯の正確な把握のため、より客観的かつ公平な視点・ 立場から十分かつ適切な調査を実施する必要があるとの判断から、当社とは利害関係を有しない外部の弁護士を委員長とし、当社の監査等委員である社外取締役(弁護士及び公認会計士)を委員とする特別調査委員会を設置することを、本日開催の取締役会において決議いたしました。

 

なお、対象取締役については、特別調査委員会による本件疑惑の調査が完了するまで、 当社の取締役としての職務の執行を停止する措置を取らせていただいております。

 


2.特別調査委員会の目的
(1)本件疑惑に係る事実関係の調査 
(2)本件疑惑が事実であることが判明した場合、その影響額の算定 
(3)本件疑惑が事実であることが判明した場合、その原因の究明及び再発防止策の提言 
(4)上記各号の事項を遂行した結果に基づく調査報告書の作成及びその調査報告書の当社への提出
(5)その他、特別調査委員会が必要と認めた事項

 


3.特別調査委員会の構成
委員長:大下 良仁(弁護士 弁護士法人琴平綜合法律事務所)
委 員:渡邉 雅之(当社社外取締役(監査等委員) 弁護士 弁護士法人三宅法律事務所)
委 員:佐々木 健郎(当社社外取締役(監査等委員) 公認会計士 株式会社マネージポート会計事務所)

※ 本件疑惑に関する調査を、公正かつ網羅的に行うため、当社と利害関係を有しない外部専門家を委員長に、当社社外取締役(監査等委員)2名を委員として起用しております。

 


<感想>
本件は、ゴーゴーカレー(会長は宮森氏)が、日本製麻の取締役として宮森氏が把握する「インサイダー情報」に基づいて、同社株を買い増ししたのではないかとの疑念に関する特別調査委員会を設置したもの。
宮森氏の代表取締役解職が未公表の段階での買い増しに見えるため、恐らく、宮森氏側が不利な内容で終わるだろうが、SESC等が動くには微妙な事案なようにも思われる。

 

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刑事とは違う民事での事実認定?


【 刑事では有罪、民事では無罪:インサイダー情報の提供】


 2020/2/18、日経電子版に『インサイダー、民事は「無罪」 証券側の請求棄却』記事が掲載された。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO55772960Y0A210C2CZ8000

 以下は、「民事事実認定と刑事判決との関連」より。
https://chuo-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=8878&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1


「V むすび」
(P25)からの一部抜粋

 民事訴訟において刑事判決の理由として認定された事実に反する事実を認定することは妨げられない。このことは,裁判の独立,両者の証明度の差異など原理的観点から正当化されるが,民事事実認定と刑事事実認定とが乖離する場合には,相応の論拠が求められる。実際には,刑事訴訟で被告人が有罪となった場合には,刑事訴訟の方が民事訴訟よりも事実認定における証明度が高いことから,民事訴訟にも影響が大きく,証拠関係が大きく異なることがなければ同様の事実認定(民事責任も積極)がされ ることになる。


< 本件(民事事実認定と刑事事実認定とが乖離)の相応の論拠 >

「インサイダーした知人男性の情報の入手先が元執行役員」との刑事事実認定が、知人男性の証言が「具体性に欠け、変遷も多く、検察官の誘導で得られた部分も多い」として、民事では認められない

⇒ 「インサイダー情報の提供に関与した」との刑事事実認定を「推認できない」として、証券会社の損害賠償請求を棄却


<感想>
 本件は、発生当時所属していた証券会社で起こったインサイダー関連事案。
 民事事実認定の通りであることを祈念している。

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