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「傑作ドキュメンタリ-88 観ずに死ねるか!」



「傑作ドキュメンタリ-88 観ずに死ねるか!」(鉄人社)


  ゆきゆきて、神軍
  1987/日本  監督:原一男  企画:今村昌平

映画公開時の「知らぬ存ぜぬは許しません」のキャッチコピーどおり、アナーキスト・奥崎謙三が問答無用に戦争犯罪の真相を追求していく過程を追った戦争ドキュメンタリー。撮影時、奥崎の傍若無人ぶりは並ではなく、自分の意に沿わなければ原監督を泣いて謝らせるわ、時に「殺しのシーンを撮らせてあげますよ」と無理難題を押しつけるわ、その制作の舞台裏は本編に匹敵するほど面白い。ちなみに奥崎は、元中隊長の長男に発泡した殺人未遂罪事件の、広島高裁における公判で初めて作品を鑑賞。原監督に「全く面白くありません」と手紙で感想を寄せたという。


 これは、原一男が死を賭けて臨んだ映画である
 頭は迷っても体は迷ってない。
 だから原くんは奥崎を取れたんです   田原総一朗


 「ゆきゆきて、神軍」。言わずとしれた日本が世界に誇るドキュメンタリー映画の金字塔である。

 敗戦直後のニューギニアで起きた食人事件の真相を追求する奥崎謙三の強烈なキャラクターもさることながら、奥崎というモンスターを相手に一歩も引かず、修羅場をくぐり抜き通した監督・原一男のドキュメンタリスト魂や天晴れというより他ない。

 原監督によれば、その確信犯的とも言える制作手法の原点は、若かりしころ多大な影響を受けた「青春この狂気するもの」の著者で、その後師事することになったジャーナリスト田原総一朗の存在にあるという。

 ドキュメンタリーとは、すなわち「相手を土俵に上げ、後ろに逃げられない状況を作っておいてから、がっぷり四つに組む」ことなり。


 重要なのは、この作品が単に凶暴な男を撮ったんじゃなく、戦争映画だということです。戦争では、人の肉を食べたり、無意味な処刑があったという事をちゃんと暴いている。最初、奥崎がそのことを追求しても、みんなシラを切りますね。でも、戦争ってそういうもんですよ。そこも含めて、この映画は戦争を描いています。


>>終戦後十数日経過後のニューギニアで、日本人による日本人に対する悲劇があったことを初めて知った



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