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「楠田實日記」



「楠田實日記-佐藤栄作総理首席秘書官の二〇〇〇日」(楠田實著、中央公論新社)より
2001年9月25日初版発行


  解題――『楠田實日記』で読む佐藤政権  五百旗頭 真

 本書は佐藤栄作首相の秘書官を5年半にわたってつとめた楠田實の日記である。楠田が首相秘書官となったのは、佐藤政権発足後、2年3ヵ月余を経た1967(昭和42)年3月1日であったが、日記はその後間もなくの5月15日から始まり、政権終了の1972年7月まで、若干の休止はあっても、ほぼ毎日、かなり立ち入った記述がなされている。


 『佐藤日記』は、沖縄返還の共同声明について「満点以上、小生としては120点か」と完全な満足を表明しつつ、繊維問題の厄介さを記し、ジュネーブでの「とりきめの成立を望むのみ」としている(11・21)。沖縄返還を英断しつつ、他方で自由貿易の原則に直面して、佐藤としては応ずるほかなしと判断し、その時点ではそれほど重大化するものとは考えていなかったのである。しかしながら、いずれにしろ、沖縄返還に成功し、総選挙で300議席の勝利を得たあとも、佐藤首相が勇退しなかったこと、ニクソン大統領が日本に説明と協議をせずに米中接近を発表したこと、田中角栄が佐藤首相の後継者の座を手にしたこと、これら70年代を開く運命的な出来事に、繊維の密約は影を落としているように思われる。

 歴史は一回性を本質とし、同じ状況は存在しない。それでいて状況に対処する政治の困難さには変わらぬものがある。『楠田實日記』はあの時点で課題に立ち向かった一つの記録である。今日、冷戦後の世界と国内社会の流砂の如き事態を想えば、さらに状況は困難ですらあろう。そうであれば、時代の挑戦への対処能力も高められねばならない。「明日へのたたかい」が繰り返し沸き起こることが本書の願いであるに違いない。


>>これからも、常にいろいろな課題に立ち向かい、たたかい続けて行きたいと思う


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