fc2ブログ

直木賞受賞シリーズ最新作も痛快


「喧嘩(すてごろ)」(黒川博行著、角川書店)より  


以下は掲題書帯より。 

 ミステリ史上最凶コンビが、史上最悪のピンチを迎える。累計110万部突破 直木賞受賞シリーズ最新作

 「売られた喧嘩は買う。わしの流儀や」  

 建設コンサルタントの二宮は、議員秘書からヤクザ絡みの依頼を請け負った。大阪府議会議員補欠選挙での票集めをめぐって麒林会と揉め、事務所に火炎瓶が投げ込まれたという。麒林会の背後に百人あまりの構成員を抱える組の存在が発覚し、仕事を持ち込む相手を見つけられない二宮はやむを得ず、組を破門されている桑原に協力を頼むことに。選挙戦の暗部に金の匂いを嗅ぎつけた桑原は大立ち回りを演じるが、組の後ろ盾を失った代償は大きく--。

 腐りきった議員秘書と極道が貪り食う巨大利権を狙い、代紋のない丸腰の桑原と二宮の「疫病神」コンビ再び。 


  以下は本文より一部抜粋。

「桑原さんはどうなったんや」
「復縁するでしょ。若頭の襲名の功労者です」
 桑原は嶋田に、鳴友会との手打ち料をふくめて、一千万円を超える金を差し出したらしい、と木下はいう。
「なるほどな。それもあのひとの世渡りか」 

 桑原も金の撒きようを考えていたということだ。
「口では復縁なんかせんというてたけど、桑原さんは堅気では生きられんひとです」
「それはよう分かる。あのひとはどこまで行ってもヤクザや。けど、あれほどのイケイケやったら、組の看板なしでもやっていけんことはないと思うけどな」
「返しでしょ。鳴友会だけやない、桑原さんはいままで極道をボロにしてきた。返しが怖いと、大手を振ってキタやミナミを歩けませんわ」
 極道すなわち代紋。イケイケだけではシノギができない、と木下はいう。 


<感想>
 頭と度胸を兼ね備えた桑原が戻ったら、当面は二蝶会も安泰であるに違いない。  次回以降の活躍にも期待したい。

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
『まぐまぐ!』へのご登録はこちら 
http://www.mag2.com/
発行者HPはこちら http://tsuru1.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------

「疫病神」



「疫病神」(黒川博行著、新潮社)より



 「おれは少なくとも自分の意思に従って行動してます。誰に頭を押さえられることもない」


 ちがう。桑原のことなんか、どうでもええ。おれはおれなりに片をつけたいだけなんや--。


 「おれは片をつけたかった。これで、あんたとはチャラや」


 「おれは代償が欲しい。蠅は蠅なりに、腐ったゴミどもにひと泡吹かせたいんや」


 二宮はつづける。「おれの要求は正当や。ゆすりでもたかりでもない。いまここで五百万の出金伝票を作ってくれ」


 「サバキを途中でキャンセルする方がむちゃやないか。いくら大手のゼネコンでも最低限の信義があるはずや」


 桑原は煙草を吸いつけ、二宮は金と注文書を待つ。


 「舟越とFK、神栄と陵南、三沢谷と加味沢谷、あんたはみんな忘れてしもた。・・・・・・そういうこっちゃな」


 「おまえもなかなかのタマやで」

 「金といっしょに注文書をとるとはな」

 「金の出先が山本組なら、舟越は裏金をつかう必要がない。おれもあんたも手が後ろにまわる心配がないからな」


 「おい、おい、疫病神が泣いとるがな。三百万も稼いで文句たれんな」

 「おれには八十万しか残らへん」

 「上等やないけ。古川橋のサバキの始末がついたんや」


 「おまえとわしは折半やろ」桑原は内ポケットから百万円の札束をひとつ抜いた。「持っていけ」


 「な、桑原さん、盆のトロには利子がつくんや。十日で一割、二百二十万を返さんといかんのや」

 「この、くそぼけッ」

 桑原はどなった。札入れを出して十枚の一万円札を抜く。「おまえみたいな図々しいやつは見たことない」

 「ありがたい。これできっちり、チャラやな」

 二宮は札束と十万円をポケットにおさめて社外に出た。

 「死んでまえ」

 ドアが締まるなり、BMWは走り去った。


>>二宮のように自分の意思に従って片をつけられる人生を送りたい


「後妻業」



「後妻業」(黒川博行著、文藝春秋)より


 「黒澤小夜子、昭和18年1月15日、北河内郡門真町で出生。初婚の相手は星野やった。星野小夜子は昭和48年4月に占脱で北淀署に逮捕され、離婚。その年の12月に和歌山で轢き逃げ。翌49年9月、有田市で海南署に窃盗容疑で逮捕されたときは北岸小夜子という名前やった。北岸と離婚して黒澤姓にもどり、昭和50年11月、自転車盗と覚醒剤取締役法違反で曽根崎署に逮捕。昭和62年2月、詐欺、有印私文書偽造で奈良県警上牧署に逮捕されたときは西山小夜子、平成3年5月に有印私文書偽造で大阪府警茨田署に逮捕されたときは中尾小夜子という名前やった」

 本多はメモ帳を見ながらいい、顔をあげた。「星野、岸上、西山、中尾、末永、本木、名城、津村、竹内・・・・・・入籍して名字が変わった相手が九人。ほかにも公正証書をまいただけの相手が何人もおるはずやで」

 「男運があるいんやろ」

 「黒澤小夜子は福原にもおった。たぶん昭和50年代や。シャブで三年ほど務めたあと、出所して神戸に流れた。西山いう男は浮世風呂の客やったんやろ」

 そう、小夜子は福原で西山と知り合った。西山は総身に墨の入ったヤクザ者で、債権取立てをシノギにしていた。西山は奈良王子の土建業者が振り出した白地手形を入手して総額一億もの金額を書き、小夜子に裏書させてサルベージ屋に持ち込んだという。土建業者は上牧署に泣き込み、小夜子は西山の共犯として逮捕された。小夜子はいまもいう。うちがほんまに惚れたんは西山だけや、と--。

 「まだある。名城善彦や」

 本多はまたメモ帳に視線を落とした。「平成16年4月、名城は小夜子といっしょに白浜に行った。宿泊したんは『はまゆり荘』。名城は宴会のあと姿を消して、添乗員が真砂海岸を探した。地元警察が出動し、名城の溺死体を発見したんは・・・・・・」

 「分かった。もうええ」


 「あと一件、調べごとがあって、それがわかったら、まとめて弁護士に渡す」

 「なんや、調べごとで」

 「轢き逃げや。平成7年から9年の夏、比叡山ドライブウェイで末永いう男が撥ね飛ばされて崖下に落ちた。遺体は翌朝に発見されたけど、近くのホテルにいっしょに泊まってたんが末永小夜子や。その事件はいま、滋賀県警に照会している」

 これはいよいよ危ない。この男は末永の死まで調べている。

 末永を撥ねたのは平成8年の夏だ。夜、小夜子は末永を誘い出して展望台へ行った。その帰り路、末永の少し後ろを歩く小夜子はガードレールの隙間から左に逸れた。耳の遠い末永は気づかず、ドライブウェイの坂を降りていく。柏木はヘッドライトを消した車で近づき、末永を撥ねた。末永はガードレールに叩きつけられて跳ねあがり、白いシャツとズボンが宙を舞う情景がストップモーションのように、いまも瞼の奥に焼きついている。柏木は名神高速道路から北陸自動車道を経由して新潟へ行き、角神温泉近くの山中で車を崖下に転落させた。社内の指紋は入念に拭きとった---


>>京都連続不審死事件と酷似する後妻業は現代の新手の詐欺の手法の一つであるに違いない


FC2プロフ
プロフィール
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
CEO (4)
夢 (8)
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR