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公の便益に訴えた提案?

 

【 森岡毅:「公の便益」に訴える 】

 


 以下は、『マーケティングとは「組織革命」である。』(森岡毅著、日経BP社)からの一部抜粋。

 


何が相手に響くのか?(WHAT)
「公の便益」に訴える

 

 万事において、私は戦う前に成功確率を上げることを重視します。できるだけ勝てる戦いを選び、一見勝てそうにない戦いを勝てる戦いに帰る方法を考えたいのです。・・・(成功すれば投資、失敗すれば消費)・・・手足を動かす前にまずはじっくりと頭を使うことにしています。

 

 “公の便益”とは、組織全体のメリットです。この提案を実行すれば、会社や部やチームなどの共同体にとって良い結果がもたらされることを訴求します。売り上げやシェアが上がる、コストセービングになる、組織モラルが高まるなど、経営学として”正しいこと”が主に挙げられます。

 

 なので「公の便益」は憚られることなく、提案が買われて実行される際に表向きの理由になります。これが弱いとターゲットを説得する確率が下がり、たとえ説得できても実行させる際の推進力が不足します。人々が情熱を傾けるには強い“大義名分”を必要としますので、多役の便益がクリアに強いことは大切です。

 

 便益そのものの魅力はTarget Analysisの精度次第です。相手が気にしていることや信じていることにひっかけて、その文脈で語ると魅力度は増します。・・・主な便益の一つにターゲットが気にしているタイムリーな共同体の目的を組み込めればベターなのです。ターゲットにとって、上に提案を通しやすいと感じますし、上からの評価にプラスなので自己保存に繋がるからです。

 

 実現可能性を高めるためにはどうすれば良いか? その魅力ある便益が達成可能だと相手に信じさせるためには何が必要か? そのために“戦略”を組み立てて相手にまざまざと見せるのです。どんな高い壁でも階段さえ作れば上ることができます。“便益”を目的とした、達成のための会談を戦略化し、どうやれば辿り着けるのか、自分自身の中で自信の持てるレベルまで策を練るのです。そしてその道筋を相手に理解させます。そうすると相手はその魅力ある便益が達成可能に思えてきます。そして便益の魅力が強いほど、その階段を自ら登りたくなってきます。

 

 多くの人が提案を通すのが苦手なのは、魅力的な便益を見つけることができないことが原因ではありません、“実現可能性を明確に示すスキル”が不足しているのです。夢を見つけて語ることはできても、どうすれば実現できるか説得力のある道筋を示せない。だから相手は提案の便益を「手に入るもの」として認識することができません。

 

 魅力的な「行先」がある時、「行けるのではないか?」とさえ思えば人は行ってみたくなるものです。つまり「公の便益」を強くするカギは、実現可能性の説得力なのです。

 


<感想>
組織全体のメリットである「公の便益」をしっかり考えた内容を盛り込んだ提案を心掛けてゆきたい

 

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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熱を込めて戦術で勝つ?

 

【 確率思考の戦略論:数字に熱を込める 】

 


 先日、久しぶりに森岡毅氏の「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(今西聖貴・共著、角川書店)を読み返してみた。

 

 以下は一部抜粋。(その5)

 


第4章 数字に熱を込めろ!

「熱」を込めて戦術で勝つ

 戦略がある程度正しいことは、成功するための必要条件ですが、それだけでは全く十分ではないのです。戦略だけでは決して成功しない。ビジネスにおける最終的な成功確率は、戦略と戦術の両方を合わせて決まるのです。

「戦術的勝利」がなければどれだけ優れた戦略でも絵に描いた餅で終わります。もちろん優秀な軍師がいて、勝つ確率の高い戦と正しい戦略を選べている場合は、よほどマズイ戦術でない限り勝てる場合が多いものです。しかしながら、同じ価値でも、戦術の出来具合によっては価値の度合い(戦果)に雲泥の差が生まれるのです。だから戦術が何としても大切。戦術で勝たねばなりません。


 戦略家の立場で、組織を戦術で勝たせるためにはどうするか?多岐にわたって広がる多種多様な戦術レベルの課題があります。それらを把握し、細かく指示を出して、勝ちをコントロールできるスーパーマンならば素晴らしいですが、実際には時間と気力、体力などの個人のキャパシティーがパンクしてしまします。そこで戦略家は、1)自分自身の時間をどこに集中して使えば戦果が最大化するか、2)自分以外の人々をどこにどう集中させて使えば戦果が最大化するか、この2つを冷静に考えるのです。

 槍をとったら天下無双のような豪勇の士であれば、戦術の最前線で大きな槍働きをするのが一番でしょう。しかし戦略を統率するリーダーの最も大切な仕事は、人々をより生き生きと動かすために自分の時間を集中することだと私は考えています。

 人を動かすために最前線に出ることはあっても、戦術で槍を振り回すことは目的ではないのです。しかし戦術レベルの仕事が大好きで部下の仕事のスペースを圧迫している上司は少なからずいます。それでは本末転倒です。もちろん自分がいないとどうしても勝てない重要戦局ならば、槍をとってでも最前線で戦わねばありませんが、それは戦略家本来の役割ではないのです。


 私にとって、最前線の現場を頻繁に視察して指示を出す最大の目的は、戦術の重要性を組織全体に浸透させて、戦術局面に従事する人々の士気を高めて良い仕事をしてもらうことです。私自身がどれだけ戦術を重要視しているか、私自身の勝ちへの執念、その「熱量」を現場に伝えるためです。

 もちろんマーケティングのプロとしての戦略眼で、さまざまな課題を早く理解して対処するために有効なのですが、私個人が現場に出て解決できることは実はたいしたことではないのです。私1人がどれだけ槍を振り回しても、組織全体の能力の総和に比すれば、ちっぽけな仕事量しか生み出さないことは、数学的にも自明です(笑)。だから私は人々を動かすために戦術の現場に出るのです。端的に言えば「人に良い仕事をさせる」のが私の仕事です。


 「熱」は人に伝わるのです。人々の中心に立つリーダーの圧倒的な熱量は、直接それに触れた人から、その部下や周辺へ、そしてそのまた周辺へ、拡散していきます。最初の熱源が「熱い」のと「ぬるい」のでは、組織全体の体温に決定的な差が生まれます。

 後者では組織は低体温症になり、末端では凍りついて仕事をしない(できない)人が増えていくのです。だからリーダーは戦術のど真ん中へ出向いて、彼らが達成すべき目的が何なのか、彼らの困難が何のためなのか、彼らの頑張りが組織の未来にとってどれだけ大切か、「熱」を伝えなくてはいけません。できるだけ現場の直面している困難やバリアを理解して、彼らが良い結果を出しやすいように「決めること」や、場合によっては「援軍(追加リソース)」を送り込むことが重要です。絶対に勝つのだという気迫とともに。


 人をどこかへ連れていきたい人は、誰よりも「熱」を持っていなければならないと思います。なぜならば、ビジネスにおいて1人で達成できることなど1つもないからです。USJのV字回復においても、私1人で成し遂げたことなど1つもありません。組織に属する人は皆が同じでしょう。
 多くの人を巻き込んで動かしていることでしか、大きな成果は達成できないのです。氷のような戦略の行きつく先にあるのは、できる限りのあらゆる「熱量」を注ぎ込んでいく戦術なのです。そうやって成功する確率(戦略+戦術)をできる限りギリギリまで上げてから、人事を尽くして天命を待つのです。そう、最後の最後に確率の神様のランダムの審判が待っています。

 合理的に準備して、精神的に戦うのです。この戦術面での強さ、現場の団結力、士気や規律意識の高さ、勤勉さなどは、日本人の卓越した強みだと思います。確率思考を始め戦略の合理性を増すことは、日本人の戦術面の強みをもっと活かすことに他なりません。100%は絶対にない世界で、残りの数%なり数十%なりの不確定さや想定外の困難を乗り越えていくのは、ギリギリまで戦術にこだわって確率を高めていく、戦略家本人の意志の力であり情熱の力です。それが「数字に熱を込める」ということ。

 左手には数字に裏打ちされた氷のような冷徹さを、右手には枯れることのない執念を燃やしマグマのような情熱を、それぞれ両手に備えて、ようやく困難なゴールに辿り着く、私はそう考えています。

 


<感想>
数字に熱を込めて、どこにどう集中すべきかの戦術を明確にして、組織全体で勝ち抜いてゆきたい。

 

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目的達成時の状況を徹底的に考える?

 

 【 確率思考の戦略論:目的達成時の主なビジネスドライバー 】

 


 先日、久しぶりに森岡毅氏の「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(今西聖貴・共著、角川書店)を読み返してみた。

 以下は一部抜粋。(その4)

 


第3章 戦略はどうつくるのか?

 

3.戦略はゴールから考える

 

◆ いかに到達地点の景色を明瞭にできるか?

いくら戦況分析の能力に秀でていようとも、数式やデータを使いこなせようとも、それだけでは戦略をつくることはできません。なぜならば、戦略とは明確な「目的」がないのであれば存在するものではないからです。企業のリーダーにとって、その目的設定こそが最初で最重要な仕事になります。「結局。どうしたいの?」という話です。そこに人間の生み出す強烈な意志がなければ目的は生まれようがなく、まして戦略の出番など永遠にありません。

 

達成したい目的があるとき、次になすべきことは、その目的が達成できているときの状況を想像力と数値を使って徹底的に考えることです。ここはずいぶんとアートな部分ですから、後に必ずサイエンスで検証をしなくてはなりません。

 

しかし、とにかく最初にやるべきはゴールの達成状況を具現化していくことです。特に目的達成時に主なビジネスドライバーがどうなっているべきか、具体的な数値を当てはめていきます。そうすると、目的達成に必要ないくつかのクリティカルな条件が見えてきます。次に、その条件を達成するために、今日とのギャップをどう埋めていくか? そのための戦略を考えていくのです。そのように私はゴールを具現化するところから始めます。

 

戦略は必ず達成したい目的付近の地景を明確にしてから逆算で組んでいくのです。そうしないと、あらゆる無駄な道に迷い込んで時間と労力を消耗するだけでなく、正しい戦略に辿りつかなくなる恐れも大きいのです。

 

ベストだと思える目的から逆算したシナリオ(戦略)を導き出すとき、私が必ずやることにしていることがあります。同じ目的を、そのベストシナリオとはできるだけ違う道筋で達成する戦略をもう1つ考えてみるのです。一番良いと思えるプランAに対して必ずプランBを考えてみる、この習慣は多くの局面で私の危機を未然に防いでくれました。プランBを考える過程で、プランAを相対化することができるのです。それによって想定の脆弱さや盲点に事前に気がつくことができる。場合によってはプランBの方が成功確率が高くなることもあります。

 

登りたい壁があるならば、まず足場をつくる技術が必要なのです。高い壁があった時に一気に壁を飛び越えることしか考えられない人は、無理だと思って諦めます。そのような人は、階段(=戦略)をつくる方法を知らないだけです。目的が高いところにあっても、目的から現在を逆算して、巧みに足場を組んでいく技術があれば、ガウスのように辿りつけるのです。どれだけ壁が高くても、階段さえ作れば必ず登れる。まずはそれを信じることです。

 


<まとめ>
1.明確な目的設定(「どうしたいのか」を明確化)して、目的達成時の状況を想像力と数値を使って徹底的に考える(ゴールを具現化する)。

 

2.目的達成時に主なビジネスドライバーがどうなっているべきか、具体的な数値を当てはめて、目的を達成するための必要な条件・戦略(今日とのギャップをどう埋めていくか?)を考える。

 

3.目的が高いところにある時は、目的から現在を逆算して、巧みに足場(戦略)を作って必ず登り切る。

 

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プレファレンスの水平方向への拡大?

 

【 確率思考の戦略論:認知・配荷・プレファレンスの伸び代 】

 


 先日、久しぶりに森岡毅氏の「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(今西聖貴・共著、角川書店)を読み返しててみた。

 

 以下は一部抜粋。(その3)

 


3.「認知」の伸び代を探す

 

 まずは自社ブランドおよび主だった競合ブランドの認知率を測定してみましょう。

 

 仮に自社ブランドの市場における消費者認知が50%だったとすると、それを10pts伸ばして60%にすることができれば、ほぼ確実に売上は20%伸ばすことができます。

 

 極端な嗜好品の場合はそうはならない場合もありますが、認知率の伸びに対してビジネスはあるレベルまでは直線的な関係で伸長していきます。もし自社ブランドの認知率が、まだまだ競合などに比べても伸び代があるのであればラッキーです。それは「勝てる戦」の可能性が高い。

 

 まずはその伸び代をどう埋めるかを考えて戦略を立案してみましょう。

 


 問題は、それらの認知を上げる戦略にどれだけの経営資源をかけられるのか、あるいはかけるべきなのかという判断です。同じ20ptsを増やす場合でも、認知率を20%から40%に伸ばすためのマーケティング費用に比べて、70%から90%に伸ばすために必要なマーケティング費用は何倍もかかります。

 

 費用に対して認知率伸長の効果は逓減していくからです。ですから、認知を伸ばす戦略と、その他の戦略を比較して、どちらの方が簡単で安くて確実かを検討することになります。

 


4.「配荷」の伸び代を探す

 

 配荷率(Distribution)とは、市場にいる何%の消費者がその商品を買おうと思えば物理的に買える状態にあるかという指標です。

 

 配荷の課題は、配荷の面積だけではありません。配荷の質にも改善の伸び代がないかを探ってみなければなりません。店頭空間は、消費者がブランドを選ぶ真実の瞬間であり、それは市場の縮図そのものなのです。パンテーンのような圧倒的なブランドでさえも配荷に大きな伸び代があったように、多くのブランドにとって配荷の量も質も、認知と並んで最も確実な経営資源の投資先であることを理解しておくことは大切です。

 


5.「プレファレンス」の伸び代を探す

 

 ブランドのプレファレンスを伸ばそうとするときに、実戦経験の浅いマーケターがよくやってしまう過ちは、既存の特定の消費者ターゲットの中でのプレファレンスを伸ばすことで頭がいっぱいになってしまうことです。

 

 しかし、我々が肝に銘じておくべきは、あくまでも市場全体での自社ブランドへのプレファレンスを上げることです。USJのチケットを買うファンの人数を、市場全体でどう増やしていくのか? という勝負なのです。先ほど述べたように、既存顧客の深堀りばかりが芸ではなく、むしろ市場全体から新規顧客を獲得する方法を常に意識しておく必要があります。

 

 そういう視点に立ったときに、私はUSJの既存のファン層である映画が大好きな人達に更にUSJを好きになってもらうよう投資することよりも(プレファレンスの垂直方向への拡大)、明らかに効率が良く見えるファンの増やし方がいくらでも思いつけたのです(プレファレンスの水平方向への拡大)。

 

 つまり、狭すぎる消費者ターゲットの幅と、限られた範囲の消費者のプレファレンスしか満たさない狭すぎるパークのコンテンツを本気で改善すれば、USJは市場全体におけるプレファレンスを格段に大きく捕まえてもっと高く飛べると確信しました。実行できるかどうかのチャレンジはあったとしても、実行できればそれは高い確率で「勝てる戦」だと判断したのです。

 


 という訳で、「映画だけ」にこだわることがUSJにとっては百害あって一利なしであることは明白です。私の中では論点にすらならないので一切迷いませんでした。しかしUSJがそれを実績で証明するまでは、多くの厳しい御意見の大合唱でした。映画のテーマパークからズレると失敗するとか、ディズニーとの差別化ができなくなるから失敗するなどのご意見です。既存ファンの皆様のみならず、社内の根強い意見や社外のブログやネット記事などでも実に猛威を振るっていたのです。

 

 2015年度に年間集客はまた過去最高を更新して1390万人を達成していますが、それは私が入社した当時から+660万人もの集客増です。

 

 そしてその増えた膨大な集客数のほとんどは、かつてのファンの来場回数の増加よりも、プレファレンスを拡大したことで新規に獲得したファン人数の圧倒的な増加によるものです。

 

 では、「映画だけのテーマパーク」が大好きだったかつてのファン層が離れたかと言えば、そんなことは決してありません。水平方向に大幅に伸びただけではなく、かつてのファンの垂直方向への伸びも確認できています。それは5年半前に計算したとおりです。より多くの消費者の頭の中にUSJを買う必然(プレファレンス)を築き上げて、1人当たりの投票数「M」を劇的に増やしたのです。

 

「M」:自社ブランドをすべての消費者が選択した延べ回数を、消費者の頭数で割ったもの

 


<感想>
消費者認知を伸ばした上で、プレファレンスの水平方向への拡大による顧客数の拡大を目指したい。

 

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戦略の焦点は3つしかない?


 【 確率思考の戦略論:戦略の本質 】

 


 先日、森岡毅氏の「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(今西聖貴・共著、角川書店)を読んだ。

 

 以下は一部抜粋。(その2)

 


第2章 戦略の本質とは何か?

 

2.戦略の焦点は3つしかない


ビジネスの売上は、自社ブランドに対する消費者のプレファレンスによって最大ポテンシャルが定まるのです。その最大ポテンシャルが「認知」と「配荷」によって制限されて、現実のビジネスの結果が決まります。ということは、市場規模が一定と仮定すると、売上を伸ばすためには、1)自社ブランドへのプレファレンスを高める、2)認知を高める、3)配荷を高まる、の3つしかないということです。ならば、ビジネスを伸ばすための戦略の焦点、経営資源を集中するべきはどこでしょうか?

 

 ビジネス戦略の本質は実はかなりシンプルな顔をしていると私は考えています。ようするに戦略の行きつく先もその3つしかないということです。戦略、つまり経営資源の配分先は、結局のところPreference(好意度)、Awareness(認知)、Distribution(配荷)の3つに集約されるのです。その中でも無限の可能性を持っているのはプレファレンスのみですから、戦略の究極的な焦点は消費者プレファレンスを高めることです。繰り返しになりますが、プレファレンスは、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決定されます。

 

 裏返すと、戦略を立てる上で着眼すべき点も最初からその3つしかないということ。自社ブランドの問題点の発見も、成長させていく有力な伸び代の発見も同じです。最初からその3つのビジネス・ドライバーに絞って探していくことで、確率の高い戦略に早く辿りつくということです。認知にもっと伸び代はないか? 配荷にもっと工夫はできないのか? プレファレンスに革新的な変化を起こす方法はないか? その3点にベクトルを合わせて頭の中で追いかけ、仮説を立てながら思考するのです。そうすることで勝てる戦いを見つけるのが本当に早くなります。

 

 プレファレンスが上がれば、自社ブランドの最大ポテンシャルを上げることができ、ビジネスは成長します。消費者が相対的に自社ブランドをより強く好むようになれば、ポテンシャルが上がるのは当然です。またプレファレンスがたとえ一定でも、認知率や配荷率を上げることでも(制限が減るので)ビジネスは成長します。本書においては、プレファレンスを上げることで成長させる前者を「ブランドの質的な成長」と呼び、認知や配荷を上げることで成長させる後者を「ブランドの量的な成長」と呼びます。

 

 私の経験上、問題のあるビジネスのたいていはプレファレンス以前に、「認知」と「配荷」にわかりやすい大きな問題があります。認知と配荷は、それぞれの割合によってブランドの可能性を一気に制限してきますので、これを拡げることは効果抜群です。認知を上げても、配荷を上げても、ある程度までは直線的にビジネスは伸びていきます。認知を伸ばすこと、そして配荷率を伸ばすことは、一番わかりやすくて確実性の高い勝てる戦なのです。

 

 例えば、市場で認知率と配荷率がそれぞれ50%しかなければ、プレファレンスによって決定されたブランドの最大ポテンシャル100%は、25%(最大1.0×認知0.5×配荷0.5=0.25)にまで制限されることになります。100個売れたはずの商品が25個しか売れなくなるのです。この50%ずつしかなかった認知率と配荷率のどちらかだけでも80%に挙げることができれば、40個も売れるようになります。両方を80%にまで上げることができたとすれば、25個の倍以上の64個まで売上を伸ばせるのです。

 

 そして大切なことですが、認知率と配荷率は、0%から100%までの「面積」の世界に加えて、その1ptsの中身、すなわち「質」の世界も診なければなりません。

 


<感想>
1)自社ブランドへのプレファレンス(好意度)、2)認知、3)配荷、の3つを高めて、売上を伸ばしてゆきたい。

 

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