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「悼む人」


「悼む人」(天童荒太著、文藝春秋)より


「亡くなった人の人生の本質は、死に方ではなくて、誰を愛し、誰に愛され、何をして人に感謝されたかにあるのではないかと、亡くなった人々を訪ね歩くうちに、気づかされたんです」


 謝辞

 創作に関する雑気帳に、この物語の萌芽となる考えがつづられるようになってのは2001年秋のことでした。同じ年の暮れに、萌芽は少しまとまった言葉となり、雑記帳に初めて『悼む人』というタイトルがあらわれます。それにつづき、次のようなメモ書きがあります。

「多くの人々の死にふれ、悲しみを背負いすぎて、倒れてしまった人。」

「何もする気にはなれず、ただただ悼んでいる。」


 最後に、この物語を書けたこと、書かせてもらえたことが何よりの幸福でした。<悼む人>のことを人々に届ける役目が自分でよかったのか、いまなお畏れ多く感じながら、<悼む人>の存在を自分に任されたことを誇りに思い、日々、彼と彼の周囲の人物に向き合える喜びを感じていました。この物語を書かせてくれたあらゆる存在、あらゆる意思に、畏敬の念をもって感謝を捧げます。

 なお、このあと挙げる参考資料だけでなく、日々現実に亡くなった方々の報道は、さまざまな形でこの作品に影を落としています。静人のように悼むことは、自分にはとてもできませんが、深く感謝をいたすとともに、謹んで方々のご冥福をお祈りいたします。

 2008年10月 天童荒太


>>「悼む人」がいればそれだけで良いのかもしれない



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