陽気なギャングが地球を回す
「陽気なギャングが地球を回す」(伊坂幸太郎著、祥伝社)より
あとがき
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九十分くらいの映画が好きです。もちろんその倍以上のものでも、半分くらいのものでも良いのですが、時計が一回りしてきて、さらに半周進んだあたりで終わる、そんな長さがちょうど体質にも合っているようです。
あまり頭を使わないで済む内容であれば、そちらのほうが好ましいです。アイパッチをつけた男が刑務所に忍び込んで、要人を救出して逃げてくる。そういうのはとても良いですね。現実味や、社会性というものはあってもいいですが、なかったからと言ってあまり気になりません。
今回、ふと、そういうものが読みたくなり、銀行強盗のことを書いてみました。
四人の銀行強盗が出てきて、わいわいがやがやと喋り散らかしながら、騒動に巻き込まれていく話です。
現実世界とつながっているように見えながらも、実はつながっておらず、また、寓話のようにも感じられるかもしれませんが、寓意は込められていない。そういうお話になりました。
実は、この四人の銀行強盗たちを引っ張り出すのは、これが初めてではありません。数年前、サントリーミステリー大賞で佳作をいただいたことがあるのですが、その話にも彼らは登場してきます。当然ながら内容は別物で、そこでの彼らは、銀行をうまく襲撃した後で誘拐事件に巻き込まれたりしています。
彼らは饒舌で、時にのんびりしていますので、もしかすると、傍目からはふざけているように見えるかもしれませんが、本人たちは真剣だったりします。
真剣な人たちのことが僕は嫌いではありませんので、彼らの話を書くのは苦痛ではありませんでした。
読み終えた方々が何かの折に「そう言えば、あいつらどうしてるのかな」と思い出してくれれば、これほど嬉しいことはありません。
>>成瀬、響野、雪子、久遠の四人は今頃どうしてるのかな