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「政府は必ず嘘をつく」④


「政府は必ず嘘をつく」(堤未果著、角川マガジンズ)より


 第3章  真実の情報にたどりつく方法


  「資本主義が犯した最大の罪は、人間性を破壊したことです」--アルバート・アインシュタイン


  顔のない消費者ではなく、人間らしく生きる

 元外務省の孫崎享氏は、点のニュースに騙されないために最も大事なことは、歴史をしっかりと見ることだと言う。

 「人間がやることには、それほどバリエーションはありません。過去に目を向け、それまでの経緯を時系列で理解すれば、原因と結果が見えてくる。そして、世界を広い範囲でとらえることも大切です。日米関係だけではく、アジアや中東、アフリカや南米といった複数の関係性をつなげてゆく。特に外交に関しては、決まったいくつかのパターンがあるものですから」


 「ひとつ望むとすれば、GDP信仰からの自由です。私たちはモノじゃない、人間らしく生きたいのです」

 <アメリカ型独裁資本主義>の最大の功罪は、国民を市民ではなく消費者にしてしまったことだろう。顔があり名前があり、生きる選択肢を持つことを根底に置いた市民と、単に生涯を支える数として位置づけられることは、天地ほどに違う。今、世界中で起きている社会現象は、全てこれに対するアンチテーゼなのだ。

 <TPP>にFTA、格差と貧困の拡大に、商品化した医療と教育。情報の統制に<原子力村>、切り捨てられる被災地。未来に希望が持てない若者と高齢者、そして<革命>という言葉の裏に別な力が見え隠れする<アラブの春>。それらの点と点をつなぎ、一本の線を描いた時、浮かんでくるのはズコッティ公園の入り口に座りこんだ一人の男子学生だ。彼が掲げていた1枚のバナーには、国境を超えて世界を飲み込むこのシステムに対する99%側の問いかけが記されている。

 「Who makes Democracy?(誰が民主主義を作るのか?)」

 それは市場の見えざる手ではなく、私たちのようなごく普通の人々の手によって作られるべきだろう。単なる計算方式だったはずなのに、いつの間にか幸福を測るものさしにすり替わったGDP信仰を手放し、幸福とは何か、子供たちに手渡したいのはどんな社会だろうかと、ひとりひとりが本気で考えることで。

 顔のない消費者から、名前や生きてきた歴史、将来の夢や健やかな暮らしを手にする権利を持つ「市民」になると決めること。失望した政治を見捨てる代わりに、誰もが人間として尊厳を持って生きられる参加型民主主義の枠組みを作るために自分の行動に責任を持つこと。

 人間が太古からの歴史の中で繰り返し生み出してきた、数字で測れない価値を持つ数々の宝を守ることは、私たちがより人間らしく生きられる社会を作ることと同義だ。

 もうひとつのグローバリゼーションは国境を超え、このシステムの中、さまざまな形でバラバラにされた私たちを、再びつなげる力になるだろう。


  エピローグ  「3・11から未来へ」

 原発も放射能汚染も、<TPP>も金融危機も、医療も教育も第一次産業も、さまざまな立場からの声が上がるだろう。大切なのはひとつの情報を鵜呑みにせず、多角的に集めて比較し、過去を紐解き、自分自身で結論を出すことだ。

 震災をきっかけに多くの人にもたらされた、大切なものの優先順位や<自分にとって本当の幸せとは何か>という問いの答えが、生き延びるための情報を選り分ける、自分だけのものさしになるだろう。溢れかえる情報の中から、そうやって見つけ出した<真実>を手にした時、私たちはモノではなく人間になる。


  おわりに

 東日本大震災と福島第一原発事故が起きた日の夜、海外に住む友人たちから次々に連絡がきた時のことを。
 サンフランシスコに住む友人の一人は、私に警告した。
 「気をつけて。これから日本で、大規模な情報の隠ぺい、操作、統制が起こるよ。旧ソ連やアメリカでそうだったように」


 震災から10か月の間に出会った、真実を伝えようとする多くの人々。原発と放射能が一向に安定しない一方でますます情報統制を強めてくるこの国の政府。

 それでも、人間を壊すこの価値観に飲み込まれそうな世界の中で、未来をあきらめない大人なちの存在が、子供たちの勇気になると信じたい。
 
 世界が変わるのを待っていないで、それを見る私たち自身の目を変えるのだ。


  2012年1月26日  堤未果


>>情報を多角的に集めて比較し、<自分にとって本当の幸せとは何か>を見つけ出したい


「政府は必ず嘘をつく」③



「政府は必ず嘘をつく」(堤未果著、角川マガジンズ)より


 第2章  「違和感」という直感を見逃すな

  「私の国であれだけ政府に都合がいい報道をさせようとしたら、ジャーナリストを拷問することになるでしょう。いったい日本政府は、どんは方法を使っているのですか?」  --ジプロー・トーブ(ロシア人ジャーナリスト)


  従順な人間を作る教育ファシズム

 「アメリカの<失われた10年>で元も打撃を受けたのは、何と言っても<公教育>です」

 「9・11以降、政府がすすめてきた教育改革は、強力に規格化された点数至上主義と厳罰化による教育現場の締め付けでした。<恐怖>は国民を萎縮させ、統制するのに有効なツールです。テストでいい点数を取れなければ、生徒は学校から切り捨てられ、教師は無能だとして処罰される。効果はあったようです。その結果、皆が怖がってモノを言わなくなってきましたから」

 「現場をまるで理解していない政府は、<国際的に通用する人材>と<落ちこぼれ>の二極化が、インセンティブを生むという。ですが、学力を全て数値化する点数至上主義は、教育から多様性を奪うのです。生徒の好奇心や批判的思考、物事の根拠を追求する姿勢や正当性のない権威に抗議するような姿勢を圧殺することにつながる」

 「子供たちは自分の頭でものを考えなくなる。<改革>というと何か希望をもたらす印象を受けますが、実態は新しいタイプのファシズムです。これは生徒だけではなく教員も同じです。私たちは地域の人々や親たちではなく、政府が管理する共通テストだけで評価されるようになった。点数を上げるノウハウを除いて、教師にとって授業内容を深める工夫をしたり、学校の教育方針に意見を言ったりする自由はなくなりました。私が高校生だった頃のように、もっと本を読むように勧めてくれる教師は激減してしまったのです」

 「サッチャー首相が、やはり市場原理ベースの教育改革をやって失敗しています。イギリスの教育現場は荒廃し、学力は伸びなかった。<落ちこぼれゼロ法>はサッチャー改革の失敗から学ぶどころか、むしろさらに内容を過激にしたのです」

 大阪府の<教育基本条例>の内容を伝えると、ポールは驚いたように言った。

 「教育を“商品”に、子供たちや保護者を“消費者”にし、テストの点数というサービスを提供できない教師は処分され、結果が出せない学校は売り上げの悪い店舗のようにつぶされてゆく。これは今まさに、アメリカのあらゆる分野で行われていることと同じです」

 大阪の橋下視聴を「ファシストだ」と批判する声も少なくない。だが、本当にそうだろうか。人間の歴史を振り返れば、ファシズムを産み育てるのはいつだって大衆の無知と無関心だ。


 日本でも2010年の尖閣諸島問題をきっかけに、外交、防衛、治安の幅広い分野で、安全保障に関わる情報を「特別秘密」とし、公務員等による漏えいに厳罰を科す「秘密保全法案」が持ち上がっている。民主党政府が2012年の通常国会に提出する予定の同法案が通過すれば、国民の知る権利や取材の自由は大きく規制されることになる。

 「言論の自由の統制は、もはや全体国家だけで起こるものではありません。グローバル経済が拡大するほどに、効率化を阻む多様性を抑圧する動きは、ますます世界で同時進行してゆくでしょう。それを理解するために、海の向うで起きている点と点をつなぐのです。政府は言論と表現の自由の最後の砦であるインターネットを検閲できるように、管理下に置こうとしている。そしてその背後には、99%である私たちと逆側の人々がいます」

 アメリカの<愛国者法>は他人事ではないのだ。この10年でアメリカ国内に起きたことの数々は、違和感という直感を見逃し続けたことの積み重ねだった。それらの例は、政府によってこっそりおかしな監視法案が通されないよう、決して政治から目を離さないことの大切さを私たちに警告していくれている。


>>無知と無関心に陥ることなく、また違和感という直感を見逃さないようにしたい

「政府は必ず嘘をつく」②



「政府は必ず嘘をつく」(堤未果著、角川マガジンズ)より


 マックスは、すました笑みを浮かべながら言う。
 
 「政府が嘘をついたり、マスコミが偏向報道をするのは今に始まったことではありません。グローバル企業が巨大規模になるほどに、本当に必要な情報は国民から隠されてゆく。当然、そのほうが効率がいいからです。

 9・11以降のアメリカの10年を見れば、大衆がいかにたやすくコントロールされるものかが、よくわかります。国民がテロへの恐怖で思考停止している間に戦争は拡大し、自由の国は“警察国家”になってしまった。そこで気づけばよかったのに、今度は『チェンジ』というスローガンに酔って、再び政治から目を離したのです。その結果、貧困率は過去最大になり、1%が支配する社会が完成した。ウォール街デモをしている連中は政府や富裕層を責めますが、繰り返される嘘や捻じ曲げられた報道を鵜呑みにしたのは、彼ら自身なのです」

 「この10年、それが顕著だったと?」

 「そうです。米国民はこの10年、巨大権力による理不尽な暴力や腐敗、嘘や強欲、無責任といったものを嫌というほど見てきたはずだ。でも、高速で流れてくる大量の情報や皮膚感覚的なニュースの中で、だんだん物事を深く追求するのをやめてしまったのです。

 たった10年の間に起きたたくさんのことの責任が、いったい誰にあるのか。どの法律を通過させてはいけなかったのか。知らされなかった本当の重要情報は何だったのか。大半の国民は企業でいうマーケティング戦略に、いともたやすく引っかかり、もう自分の頭で考えられなくなっているのです」

 マックスの指摘は、私たちの国にもそのまま当てはまる。

 問題の本質は、TPP参加の是非だけだろうか。アメリカ政府はすでに長い間、日本に対して数々の規制緩和やその他、いろいろな要求をし続けてきた。グローバル経済が国境を消してゆく中、世界市場を拡大しようとする業界の思惑は当然、予測できる流れだろう。

 1%が力を持つ世界で、彼らの息のかかった政府やマスコミの動きを想定し、自らの頭と体で集めた情報を検証してゆく。政府は憲法に沿った私たちの権利や暮らし、コミュニティを全力で守ろうとしているか。検証に値する情報が政府から出され、選択肢を提供すべきマスコミによって、ちゃんと国のすみずみにまで届けられているか。そうしたことを機能させなければ、<TPP>に参加しようがしまいが、寄せては返す波のようにやってくる外圧から国民を守ることは難しい。

 歴史学者のハワード・ジンがイラク戦争真っ只中の学生たちに繰り返し伝えた「政府や権力者は嘘をつくものです」という言葉。それは単なる政府批判ではなく、未来を創る際の選択肢を他人任せにするなという、力強いメッセージだ。

 <原子力村>を肥大化させ、無責任な政府や選択肢を提供しないマスコミを野放しにしてきたものの存在が、アメリカの<失われた10年>を通して私たちを揺さぶってくる。

 問われているのは、私たち自身なのだと。


>>政府やマスコミの動きを想定して、自分の頭で検証して行きたい


「政府は必ず嘘をつく」①



「政府は必ず嘘をつく」(堤未果著、角川マガジンズ)より


 第1章  「政府や権力は嘘をつくものです」


  「政府は嘘をつくものです。ですから歴史は、偽りを理解し、政府が言うことを鵜呑みにせず判断するためにあるのです」  --ハワード・シン(歴史学者)


  「復興特区」の名の下に市場化されつくしたニューオーリーンズ


 かつて、“新自由主義の父”である経済学者のミルトン・フリードマンはこう言った。

 「真の改革は、危機的状況下でのみ実施される」


 「教育改革とはつまり、ブッシュ政権が勧めていた新自由主義ベースのものですか?」

 「その通りだ。アメリカは9・11直後から急激に市場原理主義をベースにした教育改革を勧めているが、州や地域によっては教職員組合などの反対でなかなか進まない。そこで政府は、まず権力を1か所に集中させた。地元の教師や親たちの抵抗を抑え込んで、効率よく進めるためにね。そして、ルイジアナ州が全米で4番目に貧しく全校学力テストの成績も下位だったことを理由に、いきなりしないの学校の9割を“成績不振校”として教育委員会の管理下においたんだ」

 2002年にブッシュ政権が導入した<落ちこぼれゼロ法>では、学力テストの点数が低いのは教師の能力が低いからだと見なされる。ハワードを含めて7000人いた教員は解雇され、組合は解体された。


 融資元を大手金融機関やマイクロソフトなどのグローバル企業が占める営利学校は、市場原理ベースで運営されるため、テストの点数が低い子供たちは切り捨てられてします。


 「ショック・ドクトリンの実施には、マスコミの関与が大きいのですね」

 「まさにそうだ。だから、東北のことが他人事に思えない。被災地復興で一番優先されるべきは、大資本に市場を提供することじゃない。そこに住む人間の暮らしと、地域産業の再生なんだ。<被災地を応援する>という美しい言葉を、情緒的なスローガンで終わらせないでほしい。そして、被災地に同情する人々にはぜひ知ってもらいたい。可哀相だと言うだけではダメだってこと、政治の動きをしっかりチェックすることこそが、本当に被災地を救うカギになるってことを」

 ハワードの懸念は、現実になった。

 2011年10月28日。日本政府は東日本大震災の被災地を「復興特区」に認定、被災地の農地や漁業権、住宅などを、外資を含む大資本に開放し、金融、財政、税制など全分野にわたる規制緩和の特別措置を入れた法案を閣議決定した。15項目にわたる規制緩和の内容には、漁業権を漁協だけでなく、地元漁民を7割または7人以上含む民間企業にも与える許可や、国の認可を取った被災市町村の「復興推進計画」に建築禁止の建築物でも建てられること、条例によって法律を自由に変えられる被災自治体の裁量権などが盛り込まれている。

 「マスコミも政府側についていた」というハワード。

 被災地の復興特区構想についてマスコミの見出しは、「従来の規制や制度にとらわれていては復旧も復興も進まない」「オールクリアで復興を」「現在の漁業法を見直さない限り、民間資金を集めることもできない」など、煽り文句のオンパレードだった。


  TPPでも政府は嘘をつく

 日本の新聞業界は、独占禁止法の特殊指定によって、価格競争や新規参入といった自由競争から手厚く守られてきた。TPP施工後にもしグローバル企業が、こうした保護が自分たちの利益拡大の障害になると見なされれば、彼らはいつでも日本政府を訴えられる。裁判は米国の支配力が最も強い、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターで行われ、採血の基準は「国民の知る権利」や「新聞社によっての利益」ではなく、「投資家にとって実害があるかどうか」だ。


 韓国では学者をはじめ多くの知識人が、韓米FTAを推進してきました。彼らの言い分はこうです。

 「<韓米FTAで、途方もない量の雇用が創出される><国際社会に乗り遅れるな><韓国がFTAで巨大な米国市場に接近するチャンスを逃せば、ライバルの日本を安堵させる><韓米FTA反対者は親日だ>」


 「韓国社会は二極化が加速していますね」

 「IMF管理下に入ってから急速に新自由主義政策に舵を切り始めたのが原因です。韓米FTAもその流れです」


 「アメリカにとって最大の輸出品はモノではなく<著作権>です。今後、韓国では米国企業による著作権の民事訴訟が急増するでしょう。私たちのような弁護士には、嬉しい悲鳴が止まらないといったところですが」


>>政府やマスコミが言うことを鵜呑みにせず、自分で判断できる人間でいたい



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