【 伊藤忠によるデサント株式へのTOB 】
2019/1/31、伊藤忠(8001)子会社による、デサント(8114)株式に関する公開買付け(TOB)が発表された。
1.デサントの主張
http://www.descente.co.jp/jp/ir/190131.pdf
・本TOBの公表は、当社取締役会に対して何らの連絡もなく、また事前協議の機会も無いまま、一方的に行われたもの
・当社としては、今後、本TOBに係る公開買付届出書等の内容その他の関連情報を精査した上で、速やかに当社の見解を公表する予定
・株主の皆様は、当社から開示される情報に十分ご留意いただき、慎重に行動していただきますようお願い申し上げる
2.伊藤忠の主張
https://www.itochu.co.jp/ja/ir/news/2019/__icsFiles/afieldfile/2019/01/31/ITC190131_j.pdf
・近時の対象者のコーポレート・ガバナンス体制を含む経営体制や経営方針に問題があり、その結果、対象者の今後の企業価値向上が疑問視されると判断するに至った
・そのため、伊藤忠グループとしては、対象者の更なる企業価値向上のためには、これまで以上に伊藤忠商事グループと対象者との資本関係を強化し、経営体制の見直し及び健全なコーポレート・ガバナンスの再構築を行い、対象者の成長戦略及び施策について伊藤忠グループと対象者とが建設的に協議を行える協力関係を構築する必要があると判断した
・そして、対象者の経営体制及び経営方針の見直しについて、対象者の現経営陣に対してより具体的な提案を行うとともに、対象者の関係者(対象者の株主、役職員、取引先等)との間で協議を行い、対象者の企業価値向上に向けた施策について、真剣に見直す必要があると考えた
< 伊藤忠グループが対象者株式を買い増すことが望ましいと判断した背景 >
1)対象者に対してより具体的な提案を行うのであれば、対象者の経営についてより責任を持つべく、対象者株式を一定程度買い増すことが望ましいと考えられること
2)他方で、優れた企画・開発力を有する対象者の社員の方々に、今後もその能力を最大限に発揮していただけるよう、対象者の独自性を維持する観点からは、現段階では対象者を子会社化することまでは必要ないと考えられること
3)対象者の経営体制及び経営方針が見直された場合には、対象者の企業価値は向上し、対象者株式の投資価値も向上すると考えられること
< TOBとした背景 >
・近時の対象者の株価動向や市場環境等を総合的に考慮のうえ、株価によっては対象者株式の売却を希望される対象者株主の皆様に対して適切な売却機会を提供するために、直近の市場株価に対して適切なプレミアムを付した価格でのTOBが、伊藤忠グループによる対象者株式の買い増し手続の透明性を確保するとともに、一般投資家の皆様にもご理解いただける方法であると考えたため
< TOBの買付予定数の上限を40%にした背景 >
・法令上買付予定数の上限を具体的に定める必要があることから、伊藤忠グループの考え方にご賛同いただける対象者株主の見込みの観点や、対象者の優秀な社員の皆様の能力や高いブランド力を十分に発揮できるような経営の独立性の確保という観点を総合的に考慮
< 経営体制刷新のための取締役選任議案 >
・伊藤忠らは、対象者の経営体制の見直しにあたって、TOB終了後に対象者と協議を行うことを予定しており、対象者との協議が整わなかった場合には、TOBの結果も踏まえ、対象者の経営体制の刷新のため、取締役選任に関する議案等を、本年6月に開催される予定の定時株主総会において提案する可能性がある
< 伊藤忠出身の取締役等 >
・伊藤忠から1985年に派遣された飯田洋三氏が 1994年6月に対象者の代表取締役社長に就任して以降、 2013年6月まで伊藤忠出身者が対象者の代表取締役を務め、この間、伊藤忠と対象者は信頼関係を深めていた
・2013/2/26の取締役会において、伊藤忠から派遣されていた取締役らには事前に何らの連絡もなく、石本雅敏氏(当時常務取締役)の社長昇格について決議がなされた
・なお、現在の対象者の取締役である、石本雅敏氏(現代表取締役社長)、田中嘉一氏(現取締役専務執行役員)、三井久氏(現取締役常務執行役員)、羽田仁氏(現取締役常務執行役員)及び辻本謙一氏(現取締役常務執行役員)は、2013年当時より継続して取締役を務めている
・2013年6月に石本雅敏氏が対象者の代表取締役社長となって以降、伊藤忠から派遣する対象者の取締役は代表権を持たない取締役会長及び非常勤の取締役に留まり、対象者出身の取締役中心の経営体制となってから5年超が経過
・この間、石本雅敏氏が代表取締役社長となる直前の 2013年3月期と直近の2018年3月期の対象者の業績を比較すると、連結ベースの業績で、売上高で約1.5倍、営業利益で約1.8倍、経常利益で約1.7倍まで拡大しており、業績面では一定の成果を残してきたと考えられる一方、これは主に2013/3期〜2016/3期までの韓国事業の収益拡大に拠るところが大きい
・そのため、伊藤忠から派遣されている非常勤の取締役からは、2016年3月期までの間に十分な成長を遂げてきた韓国事業に過度な成長期待をかけずに日本及びその他のエリア(特に中国)での収益拡大に取り組むべきであるという事業戦略に関する問題提起を行うとともに事業方針の見直しの検討を求めていた
・しかしながら、かかる要請について真摯に検討する姿勢が見られず、伊藤忠グループとの事業面での協働も少なくなり、 伊藤忠から派遣されている非常勤の取締役に対しても、取締役会において取締役として意見を述べるに当たっての最低限の情報のみが共有されるという事態に陥っている
・対象者の業績が韓国事業に過度に依存している状況において、韓国事業の市況低迷に起因して業績見通しが悪化したことで、伊藤忠としては対象者の企業価値が毀損する虞が増したと判断せざるを得なくなったことを受けて、2018年6月に改めて事業戦略に関する問題提起や方針の見直し、改善策の検討、実施を強く要請したものの、対象者の経営陣において真摯に検討する姿勢が見られなかったため、対象者の経営陣に危機意識を持たせ、伊藤忠からの指摘に対して真摯に対応することを期待し、2018年7月〜10月にかけて対象者株式の買い増しを行った
< 株式の買い増し >
2018年7月 769,300株/1,975円/株(議決権の26.56%を保有)
2018年8月 130万株/1,944円/株(同28.28%)
2018年10月 165万株/2,411円/株(同30.46%)
・しかしながら、伊藤忠の指摘に対して経営陣から明確な回答が示されることはなく、また、 2018/8/30には、伊藤忠商事から派遣されている非常勤の取締役に事前に何らの連絡 や説明もなく、ワコールとの包括的業務提携契約の締結に関する議題が緊急動議として取締役会に付議されるなど、対象者の成長戦略及び施策について 伊藤忠らと対象者とが建設的に協議を行える関係ではなくなってしまっている
・伊藤忠らとしては、現在の対象者は、以下に挙げる経営上の問題を抱えていると考えており、対象者の経営体制に大きな懸念を抱いている
< 懸念事項 >
1)中期経営計画(Compass 2018)の目標未達と韓国事業への過度な依存
2)コーポレート・ガバナンス体制の脆弱性
3)現経営陣の社員軽視の可能性
・伊藤忠は、2018年11月中旬頃、代表取締役社長である石本雅敏氏(「石本氏」)から、特定の投資ファンド(「本件ファンド」)との間で対象者の非公開化(「本件非公開化」)について協議をしている旨の連絡を受けた
・伊藤忠は、本件ファンドから本件非公開化の内容に関する説明を受けたが、その内容は、本件ファンド傘下の事業体が多額の資金を外部から借り入れた上で本件非公開化を実行し、本件非公開化後に当該事業体と対象者の合併等を行うことで、最終的に対象者が多額の債務を負担することになるスキームであり、現在優良な上場会社の社員という立場にある社員の皆様が、本件非公開化により、財務体質が極めて不安定な非公開会社の社員の地位に置かれることになる内容だった
・伊藤忠商事は、優秀な社員の皆様の存在が対象者の企業価値向上の源泉であると判断しているところ、本件非公開化は、社員の皆様の士気を大幅に低下させることにつながり、ひいては、対象者の企業価値が大幅に低下することになると判断したため、本件非公開化に反対した。本件非公開化は、石本氏を含めた現経営陣による経営の継続を前提としたものであり、伊藤忠としては、本件非公開化は現経営陣の保身を優先し、社員の皆様を軽視している可能性のあるスキームと考えている
・なお、伊藤忠は、2019/1/30に、本件ファンドに対して、正式に本件非公開化に反対する旨を通知している
3.TOBの概要
出資比率:現在約30%(筆頭株主) ⇒ TOB後40%(721万株取得)
TOB価格:2,800円/株(1/30終値1,871円の49.65%のプレミアム)
取得総額:約200億円
取得期間:1月31日〜3月14日(30営業日)
4.株価終値推移
1/30 1,871円、1/31 2,271円(ストップ高比例配分)
<感想>
本件は、伊藤忠によるデサント株式の敵対的TOB(出資比率40%まで)。
デサント側の相談なしのMBOに対して、伊藤忠の堪忍袋の緒が切れたTOBであると言える。
今後のデサント側の出方を注目して行きたい。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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