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蓮舫氏代表質問の実質経済成長率



民進党・蓮舫氏の代表質問に見る実質経済成長率


 以下は、蓮舫代表の2017/1/24の参院本会議で安倍総理の施政方針演説に対する代表質問(予定稿)からの一部抜粋(https://www.minshin.or.jp/article/110757/)。


『 【経済政策

 実質経済成長率で見ると、安倍内閣年平均1.3%我々の政権時年平均1.6%を下回っています。 』


国内総生産(支出側、実質:連鎖方式(旧基準)>
(出所:http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h26/h26_kaku_top.html

(単位:兆円)
2007/12 08/12 09/12 10/12 11/12 12/12 13/12 14/12 
 513.7  508.9 480.3 503.8 502.2  511.2 518.2  518.1



<結論>

 民進党は、前民主党時代の2009年9月から2012年12月まで、衆議院第一党として、日本の政権を担当

 2008年9月のリーマンショックの影響は大きく、2007/12に513.7兆円だったGDPは2009/12に480.3兆円まで落ち込んでおり、どん底を基準とする民主党時代の成長率が高いのは自明であり、蓮舫代表の発言には首を傾げざるを得ない。


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テーマ : 民進党
ジャンル : 政治・経済

トランプ大統領の貿易赤字に関する誤解



トランプ大統領の貿易赤字に関する誤解


 以下は、2017/1/21付日本経済新聞朝刊大機小機からの一部抜粋。

『 米大統領の貿易観は間違いだ

 米国のトランプ新大統領は、中国、日本などとの貿易収支が不均衡(米国が赤字)であることを大きな問題と認識している。しかし、この考えには大きな誤りがある。

 そもそも一国の貿易収支の赤字を是正すべきだとする経済理論は存在しない。貿易収支の均衡を政策目標に掲げている先進国もない。「貿易収支が赤字だから、経済パフォーマンスが悪化する」という関係は全く見られないからだ。

 まして、米中・日米貿易収支のような2国間の不均衡を是正すべきだという経済理論などあるはずがない一国の輸出先国と輸入先国の構造は異なるのだから、2国間の収支が均衡しないのは当たり前である。


 例えば、日本は大量の石油を輸入しているが、これが途絶えたら経済は大混乱する。欲しいと思うから輸入しているのであり、いやいや輸入しているわけではない

 世界をリードする超大国の新しい指導者が誤った経済認識を持っていることは、世界にとって大きな懸念要因だ。これほど経済学的に間違った考えはないのだから、米国の経済学者は新大統領が認識を変えるように力を尽くしてほしい。(隅田川) 』(太字は筆者)


 一方、以下は、「財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済」(上念司著、講談社α新書)からの一部抜粋。

『 貿易赤字と黒字はまったく無意味

 「経常収支」=「貿易・サービス収支」+「所得収支」

 一方、「資本収支」とは、その国への資金の流出入を表す収支で、資金が流入するときは、黒字流出するときは赤字になります。よって外国から借金をすれば、海外から資金が流入することになるので、「資本収支」は黒字になります。逆に、日本から外国に投資する場合は、資金が海外に流出することになるので、「資本収支」は赤字になります。

 それからもう一つ大事なことがあります。「経常収支」が黒字なら、「資本収支」は赤字、反対に、「経常収支」が赤字なら「資本収支」は黒字、という関係が必ず成り立ちます(正確にいうと、「経常収支」に外貨準備高の増減を加えて、誤差や漏れを除くと一致するが、ここでは大雑把な理解で問題ありません)。

  また「対外資産」とは、外国に貸したり投資したりした金額から、自国が借りたい投資されたりした金額を差し引いたものです。外国に貸しているお金より借りているお金が多ければ赤字、その反対は黒字です。

 世の中には、国家と国家の間で経済をめぐって激しい戦争をしているという妄想があります。新聞記事などでは、貿易赤字は「転落」するものであり、貿易黒字は「獲得」「達成」するものだとかかれていますが、経済学的にはまったく無意味です。 』(太字は筆者)


<米国の経常収支と資本収支(2016年9月)>
(出所:https://www.bea.gov/iTable/iTable.cfm?ReqID=62&step=1#reqid=62&step=6&isuri=1&6210=1&6200=1

経常収支*      -112,958百万米ドル(赤字)
資本収支**      -207,945百万米ドル(黒字)
統計上の不一致*** -94,987百万米ドル


*  Current Account
** Net lending (+) or net borrowing (-) from financial-account transactions
*** Statistical discrepancy


<まとめ>

各国との貿易収支はその国の需給バランスにより決定され、国全体の貿易収支を含む経常収支の赤字資本収支の黒字で賄われる。

各国と公正な貿易が行われている限り、一国との貿易赤字の解消を図ることとその国の利益に繋がることとは無関係である。


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テーマ : アメリカ合衆国
ジャンル : 政治・経済

2016年の貿易収支は+4.1兆円(6年ぶりの黒字)



貿易統計速報(H28年分)

 2017/1/25、財務省より貿易統計(H28/12分及びH28年分速報、http://www.customs.go.jp/toukei/latest/index.htmhttp://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/gaiyo2016.pdf)が公表された。


2016年の国・地域別の貿易収支(内訳)>

      輸出額  輸入額  差引額
総額
   70.0兆円 66.0兆円 +4.1兆円
米国   14.1兆円  7.3兆円 +6.8兆円
自動車 4.4兆円  0.1兆円 +4.3兆円)
EU     8.0兆円  8.1兆円 ▲0.2兆円
アジア  37.1兆円 33.2兆円 +3.9兆円
中国   12.4兆円 17.0兆円 ▲4.7兆円)
中東    2.6兆円  6.5兆円 ▲3.9兆円
原油等   -    4.8兆円 ▲4.8兆円)


平成28年分貿易統計(速報)の概要

 平成28年分については、輸出は鉄鋼、自動車等が減少し、対前年比▲7.4%の減少となった。また、輸入は原粗油、液化天然ガス等が減少し、▲15.9%の減少となった。その結果、差引額は4兆741億円(6年ぶりの黒字)円となった。


トランプ新大統領就任演説>(出所:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38702737

 貿易関連部分を一部抜粋してみた。

『 Every decision on trade, on taxes, on immigration, on foreign affairs, will be made to benefit American workers and American families.

貿易、税金、移民、外交に関するすべての決断は、アメリカの有権者とアメリカの家族の利益となるよう行われます。

We must protect our borders from the ravages of other countries making our products, stealing our companies, and destroying our jobs. Protection will lead to great prosperity and strength.

私たちは、私たちの製品を作り、私たちの企業から盗み、私たちの職を破壊する外国の侵害から、この国の国境を守らなくてはならない。保護によって、繁栄と力は拡大します。 』


>>対米の自動車の輸出等に関する、トランプ新大統領の今後の対応が注目されるが、そもそも、トランプ氏の考え方に誤りがないのか、明日以降、考えてみたい。


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テーマ : 感想
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「ぼくらの哲学」⑤



「ぼくらの哲学」(青山繁晴著、飛鳥新社)


 以下は掲題書の十三の章、十五の章からの一部抜粋。


『 十三の章 ぼくらの目的地はどこにある

 拠出金十億円の真相


 戦いが弱いからこそ外交上手の韓国は、アメリカの圧力が日本に対してもあるはずだと考え、NSC(国家安全保障会議)の谷内正太郎局長と李丙ぎ(王編に其)・韓国大統領秘書室長のソウルでの秘密折衝で(1)日本は国費から20億円を慰安婦への償いとして出せ(2)口頭で良いから「日本軍が関与して朝鮮女性を傷つけた」と岸田外相が明言せよ(3)そのふたつだけで韓国政府はもはや慰安婦問題を取りあげないと日本と国際社会に確約する――との「最終提案」を出した。

 日本政府内のすべての情報を総合すると、安倍総理の反応は「もう蒸し返さないというのは大きい」、「軍の関与と言うだけなら、韓国の言ってきた『日本軍は朝鮮女性を強制連行して性奴隷にした』という話とは違う」、「あくまで対等な外交交渉として妥結したという形にするために、外交の基本として話を半分にしよう。だから拠出金は半分の10億円だ」ということだった。「対等な外交交渉」とは、加害者と被害者という立場ではなく、という趣旨だろう。

 わたしは、このすべてに反対した。わたしごときの反対はどうでも良いが、政府内部で何人もの重要人物が反対した。わたしは「嘘を本当にしてしまえば、日本の子供たち、次世代だけではなく、韓国の子供たちにも致命的に有害だ」と総理サイドに強く申し入れた。

 それでも安倍さんは、迷った挙げ句、2015年12月27日の夜に踏み切った。外交が得意分野だからだ。イエスマンの岸田外相に最終的に妥結を指示したのである。視線の先にあったのは韓国よりもアメリカだった。「対等な日米」という本願に近づく一歩と見たのだ。



 十五の章 響き合う世界

 諸国の軍人らに伝えたのは「日本はいよいよ敗戦を乗り越え、新しい生き方を世界に示し、ほんものの平和国家に生まれ変わる」という哲学の提起である。

 安倍内閣は、国連の場(女性差別撤廃委員会)で初めて、韓国政府と日本のマスメディアが声高に主張し続けた「日本軍が朝鮮女性を強制連行、慰安婦とした」という話が、まったくの虚偽であることを説明した。安倍晋三総理が決断して西暦2015年末に成立した「日韓合意」で、「(日本)軍の関与の下で女性を傷つけた」と岸田文雄外相が公式に述べ、実質的に日本政府自ら嘘をついてことの埋め合わせだった。

 ところが実は国連での初説明は、口頭だけであり、文書に記録しない。それを水面下で国連や韓国、さらに中国とも摺り合わせたうえでの言いっ放しであった。

 そのために「慰安婦の多くは日本女性であり、日韓とも家庭の貧しさから親や親族に売られた女性が慰安婦となった」という客観事実は葬られたままになった。

 だから、そのあとに国連のこの委員会が出した日本政府への「勧告」なるものに「皇位継承を男性に限っているのは女性差別であるから皇室典範を改正しろ」という前代未聞の暴力的な内政干渉が、中国の対国連工作でやすやすと盛り込まれたのだ。

 さすがに安倍内閣の抗議でそこは削られ、「国連は戦争をなくす美しい組織ではない。日本を永遠に敗戦国にとどめようとする自称戦勝国が賄賂も使ってやりたい放題に工作する場だ」という冷厳な事実、わたしが長年、国連本部の近くのカフェで国連職員から聞いてきた真実を日本国民がすこしばかり知る機会になった。 』(太字は筆者)


>>韓国国際公約を違えるような動き、レームダックの朴槿恵大統領サムソンの凋落、日韓通貨スワップ協定の中止等を起因とする、韓国発の通貨危機が起こって日本がとばっちりを受けないことを祈念している


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「ぼくらの哲学」④



「ぼくらの哲学」(青山繁晴著、飛鳥新社)


 以下は掲題書の四の章、十一の章からの一部抜粋。


『 四の章 祖国の沖縄 その一

  異例の「公式発表」


 会談の表舞台を伝えた報道は、ほとんど意味がない。裏舞台というより、両者の本音をあえて忖度、すなわち他人の気持ちを推し測ることを交えて表現してみると、こうだ。

菅さん「あなたは自民党の沖縄県連幹事長まで務めて、その自民党時代にずっと長く、辺野古移設を進めてきたではないか。ほんとうは知事になりたいがために、沖縄の地元紙をはじめ声の大きなところに追従して反対に回ったのじゃないだろうか。そこが許せないから、官房長官の私も安倍総理もあなたに会わないできた。そろそろ互いに、何かの妥協点や歩み寄りを見出さないと、長年の沖縄政策が壊れてしまう

翁長さん「そうやって私を見くだすことをまずやめないと、話にならない。いつまでこの私を、自民党の一地方県連の幹事長とみているんだ。私は知事選で圧勝して、今は沖縄県知事だ。そもそも辺野古への移設は無理筋なんだよ。すでに地元の名護市長も反対派に替わったじゃないか。私はその現実を冷静に見ているのであって、追従しているんじゃない。私を見直せ。知事として丁重に扱え。そこからあなたも総理も出直せ」

 この会話は、ふたりが眼で伝え合った会話であって、実際にこのように口に出したのではない。しかし苦労人の菅さんは、この翁長さんの真意がよく分かった。

 だからこそ、「粛々という言葉は上から目線だと知事が仰ったので、もう使いません」という異例の「公式発表」をしたのだった。


十一の章 沖縄から世界へ 日本の出番


  人のために生きる哲学

 わたしたちの古来の生きる哲学とは、人のために生きる哲学である。皇帝を筆頭に私利私欲で生きてきた中国に、この哲学は無い。ないからこそ、いかなる時に日本次といえども私利私欲が頭をもたげ、おのれ自身を支配するかを良く知っている。

 不当に軽視され、きちんと遇されていないと不満を持つ時がそれだ。中国は自民党沖縄県連の歴史を知悉し、幹事長まで務めた翁長さんが国政進出も知事立候補も認められていなかったことを徹底的に利用した。

 普天間問題に絡んで、翁長知事はしきりに「沖縄差別」を発言する。さらに国連の人権理事会という場違いな場に県民の費用で出張し、沖縄県民を知事みずから「先住民」と扱って「差別を受けている」と世界にアピールする恥さらしをやってのけた。

 この恥辱を本土と沖縄のマスメディアは「人権を守れと訴えた」と一斉に報じ、若き沖縄県民の我那覇真子さんが同じ場で「わたしたちは先住民ではない。日本国民として高度な人権が護られている」という趣旨を明快に訴えたことは、ほぼ無視した。

 翁長知事のこの言動は多くのひとにとって理解しがたい。あえて申したい。わたしには切実に、翁長さんの胸の奥深くが伝わってくる。

 翁長雄志さんは、実は沖縄県民のことを言っているのではない。ご自分のことを仰っている。「俺は中央から無視された」としきりに訴えているのである。

 そして、「沖縄をみごと独立させたら、初代の琉球王にしていやる」と言わんばかりの中国のささやきに陶然とする。

 まさかと思う人は、政治的人間ではない人である。


 わたしは共同通信政治部の記者の時代に、国会議員という名の政治的人間に接し、もっとも大きな政治的エネルギーのひとつが「俺は正当に評価されていない」というルサンチマン(怨念)だと知った。

 翁長さんは、その典型である


  哲学とは人間である

 翁長さんに知事選で破れた仲井眞さんは、選挙のあと、長く完全な沈黙を守ってきた。それは潔い。沖縄県民の審判を甘受して、敗軍の将、兵を語らずという古武士のごとき姿勢を貫いてきた。


 「そろそろ語られるべきではありませんか」。わたしは、ほとんどそれしか言っていない。


 仲井眞さんはリラックスされ淡々とした語り口で、辺野古移設に必要な海の埋め立てに当時の知事として許可を出したいきさつについて、「法的に瑕疵がないだけではなく、沖縄県から徹底的に中央政府に言うべきを言い、求めるべきを求めた結果としての埋め立て許可でした」という趣旨を語られ、翁長知事の許可取り消しを、初めて真正面から論破された。


 今のところ翁長さんは無視の構えだ。できればフェアに論争してほしい。たとえば沖縄タイムズは、不肖わたしの沖縄での講演内容を一面で詳報したこともある。公平であろうとする秘めた努力を感じる。その「沖タイ」が前知事VS現知事の対論を企画してほしいと思うのは、わたしだけだろうか。 』(太字は筆者)


>>翁長沖縄県知事の辺野古移設の許可取り消しを含めた(特に中国の関与を彷彿とさせる)各種言動についてウォッチして行きたい


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「ぼくらの哲学」③



「ぼくらの哲学」(青山繁晴著、飛鳥新社)


 以下は掲題書の三の章、六の章、十の章からの一部抜粋。


『 三の章 天皇陛下の語られる勅語をめぐって

 憲法四条の「天皇は、この憲法に定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する機能を有しない」という「天皇は政治に関与せず」の定めを今上陛下がいかに大切にされてきたかは、万人の知るところだ。


 日本の自称リベラルとはいったい何者なのか。その安穏とした奇妙な存在を許してきたのが、もう一度言う、わたし自身をも含めた敗戦後の日本社会なのだ。

 天皇陛下も人間でいらっしゃるから、その静けくも毅然とされたお姿は、わたしたち日本の民が築いてきた文化である。もはや右も左もなく、その原点を共に考えたい。


六の章 祖国の沖縄 その三

不幸な歴史を超克する契機に

 両陛下は、皇太子殿下と妃殿下の時代に「ひめゆりの塔」へ行啓された。そして、ひめゆり学徒隊は、沖縄県立第一高等女学校(一高叙と沖縄師範学校女子部というもっともエリートだった女学生の部隊だったから、記憶され、映画にもなり、そして観光地になっている。悲劇には変わないし、お土産を熱心に売る声が響く観光地になっていることが、ひめゆりの少女にとっていいことか分からない上に、他の二高女、三高女、そして私立の女学校、農学校の女子の学徒隊は合わせて八っつもあったにもかかわらず、ほとんど忘れられている。敷地の広い白梅の塔に、行幸啓をいただいて、そこにひめゆりを含めた九つの隊全部の生き残りのかたがたに集まっていただければ、敗戦後の不幸な歴史を超克していく契機になるのではないか。


 十の章 祖国の沖縄 その七

両陛下が深々と頭を下げられた


 沖縄県庁の幹部が仲井眞知事をも裏切る妨害工作を密かに行い、話が漏れた。

 その県庁幹部もわたしは許し、説得し、宮内庁などにも繰り返し働きかけ直し、実現した「代替策」が、両陛下が沖縄に行幸啓されるとき本来は予定になかった休憩をしていただき、白梅学徒隊の生き残りのかたがたとお会いくださることだった。


 きくさんたちによると、両陛下の臨時のご休憩所となった部屋は狭く、両陛下と、わずか三人だけ許された白梅同窓生でいっぱいになった。


 宮内庁の侍従から、きくさんたちは、退去を促された。

 このままでは帰りたくない、十代のなかばで命を散らした同級生のために何かが足りないという気持ちを抑えて、退室しようとしたそのとき、皇后陛下が一歩、きくさんたちに近づかれた。

白梅の塔は、どちらの方角ですか

 首をわずかに傾げられ、そうお尋ねになった。

 あまりに自然なお声に、きくさんは緊張することもなく慌てることもなく、こちらですと、正確な方角をお示しした。

 すると両陛下は、まるで事前に入念なお打ち合わせを二人でなさっていたかのように、揃ってその方角に向かれ、深々と、永遠の時のように長く、頭を下げられた

 きくさんたち白梅同窓会のみなさんは「学徒隊がみな報われた」と感じ、心残りなく退出することができたという。


 人間の大切な本物の知性

 わたしは、この日のあと、少し時間を置いてから宮内庁の当局者にこの出来事を話し、「予定されたことでしたか」と聞いた。

 当局者は静かな眼をして「いいえ」と答え、「両陛下がすべてを呑み込まれて、おふたりで話し合われて、お決めになっていたのではないでしょうか」と言った。

 わたしは今、こう考えている。

 現実に妨害は行われた。しかし「白梅の塔への両陛下の行幸啓が実現して、それで良しとすべきではない」という天の意思ではないだろうか。

 天はすべてを知っている。


 沖縄戦の真実を求める試みをこれから続けよ。終わりにするな。白梅の少女のために、ひめゆりを含めてすべての学徒隊の少女のために、そして生き残ったすべての沖縄県民と、そこから生まれた現在の県民と、沖縄を護るために全国津々浦々から集結したすべての英霊のために、真実を共に問い続けよ。

 その意思を示すために、天が行幸啓の実現を先に延ばしたとも、わたしはごく自然に思慮している。

 忘れられた学徒隊は他にもまだ七つある。少女たちが報われるためには、広範なかたがたの関わりも必要だ。


 わたし自身も含めて、日本のただ一度の敗戦後に生まれたわたしたちはひとり残らず、きくさんたちとすべての英霊の献身によってこそ、現在の生を享受している。

 白梅の塔の存在を長年、ささやかに訴え続けて、マスメディアにもいくらか知られるようになった。すると白梅の塔の生き残りのかたがたを安保法正反対の象徴として利用しようとする動きも出てきた。「天の声」を僭称し続ける朝日新聞にも、その動きがある。

 永遠の少女たちを、日本国民をさらに分断するために利用させてはならない。

 わたしたち自身がどれほど深く、正確に、まっすぐに沖縄戦を理解するか。それにかかっている。 』(太字は筆者)


 >>我々が現在の生を享受できているのは、ひめゆり学徒隊を始めとするす九つの女学校の方々やすべての英霊の献身によってこそであることを忘れてはなるまい


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同一労働同一賃金(その3)



同一労働同一賃金(その3)


 内閣府から、2016/12/16に「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000146064.pdf)が、また、同12/20に「同一労働同一賃金ガイドライン案」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdf)が公表された。


<ガイドラインに見る安倍政権の目的・戦略・戦術>

 目的 : 新たな第一の矢希望を生み出す強い経済」という強い大きな目標を掲げ、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」を実現し戦後最大の名目GDP600兆円を達成する

 戦略高齢者雇用の促進非正規雇用労働者の賃金改善を通じて賃金総額・可処分所得・消費支出の増大を図る

 戦術正規・非正規の不合理な格差を是正すべく、賃金決定能力と待遇の関連性を明確化したガイドラインを策定する


ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月2日閣議決定)(P6参照)」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/pdf/plan3.pdf#page=16


<企業法務ナビのレポート>
https://www.corporate-legal.jp/%e6%b3%95%e5%8b%99%e3%83%8b%e3%83%a5%e3%83%bc%e3%82%b9/%e8%a8%b4%e8%a8%9f%e3%83%bb%e8%a1%8c%e6%94%bf/9622)も踏まえて、「同一労働同一賃金ガイドライン」から一部を抜粋して、特に定年後の継続雇用について考えてみる。


『 2.有期雇用労働者及びパートタイム労働者

(注)無期雇用フルタイム労働者と定年後の継続雇用の有期雇用労働者の間の賃金格差については、実際に両者の間に職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の違いがある場合は、その違いに応じた賃金差は許容される。なお、定年後の継続雇用について、退職一時金及び企業年金・公的年金の支給、定年後の継続雇用における給与の減額に対応した公的給付がなされていることを勘案することが許容されるか否かについては、今後の法改正の検討過程を含め、検討を行う。 』(太字は筆者)


 定年後の継続雇用における年金等の支給を勘案する(=無期雇用フルタイム労働者と賃金格差を設ける)ことが許容されるか等については、今後の法改正に伴って検討すべき項目として、先送りされた。

 これら賃金等の処遇は、本来、労使交渉によって決定すべきものであろうが、相当の時間がかかるものと思われるため、政府主導により、企業の立証責任説明責任を含めた「同一労働同一賃金ガイドライン」を早期に確立する必要があるように思われる。


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同一労働同一賃金 ②



同一労働同一賃金(その2)


 内閣府から、2016/12/16に「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000146064.pdf)が、また、同12/20に「同一労働同一賃金ガイドライン案」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdf)が公表された。


 政府が目指す「同一労働同一賃金」が実現しないのは、なぜか。

 八代尚宏先生のレポート(http://diamond.jp/articles/-/85778/http://diamond.jp/articles/-/112527?display=b)を踏まえて、考えてみる。


1.定年退職制の弊害

(1) 日本

 特定の企業内の限られた構成員の年齢と結びついた曖昧な能力を尊重

 ⇒ 年功賃金の傾きが大きな従業員1000人以上の大企業の93%60歳定年制を堅持(就労条件総合調査2014年)=年齢という客観的な基準で後進に道を譲ることは、公平な仕組みと見なされている

 (一方、中小企業では、仕事能力に見合った賃金であれば、企業の方から熟練労働者である高年齢者に辞めてもらうインセンティブは小さいため、定年制は65歳か、それ自体存在しない場合も少なくない)


(2) 欧米

仕事能力を規準として同一労働・同一賃金の原則下の米国欧州主要国では定年退職制は原則禁止

  ⇒ 個人の仕事能力にかかわらず年齢のみを根拠とする解雇は、人種や性別と同様に「年齢による差別」となるから


2.雇用の流動化が進んでいないこと

 過去の高成長期に成功した、大量の新卒採用者を企業内で時間をかけて訓練する雇用慣行を維持するのではなく、正社員と非正社員に共通した職務給を普及させて、雇用の流動化を図ることが必要


3.正社員の年功賃金カーブの存在

 企業への貢献度を上回る年功賃金が大きな負担になるため、定年制による一律解雇せざるを得ない

 ⇒ 過去の高い成長期大企業を中心に普及した年功賃金は、今日の低成長期には社員間の生産性に見合わない賃金格差の主因となる



<高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 : 第8~9条>(出所:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46HO068.html

『 (定年を定める場合の年齢)
第8条  事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。(以下、略)

(高年齢者雇用確保措置)
第9条  定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

一  当該定年の引上げ

二  継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入

三  当該定年の定めの廃止 』(太字は筆者)


 そもそも、米国や欧州主要国では原則禁止されている「定年退職制」について、第8条で60歳定年制を所与とする考え方事態に問題があろう。また、正社員と非正社員間における同じ職種での賃金差の根拠を明確に示さない場合の罰則を謳うことも必要であるように思われる。

 日本でも個人の仕事の概念を明確化にして、職務給を普及させて、あいまいな人事評価を本格的に改めて、(1)定年退職制を原則禁止とし、(2)雇用の流動化を促進し、(3)正社員の年功賃金カーブを見直す、時期に来ているのではないか。


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同一労働同一賃金 ①



同一労働同一賃金


 内閣府から、2016/12/16に「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000146064.pdf)が、また、同12/20に「同一労働同一賃金ガイドライン案」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdf)が公表された。


 以下の「企業法務ナビ」のレポート(https://www.corporate-legal.jp/%E6%B3%95%E5%8B%99%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/9477)を踏まえて、「同一労働同一賃金」について考えてみる。


同一労働同一賃金に関する裁判例

 労働契約法20条では、有期労働契約を締結している労働者について、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を課すことを禁止していますが、これまで同条違反を認めた判決はありませんでした。

 もっとも平成28年5月13日東京地裁判決においては、同条違反である事例として注目を集めました。

 この事件では、定年後嘱託従業員として再雇用されたトラック運転手が、定年前と同じ業務であるにも関わらず、賃金に格差が生じたことは違法であると主張しました。

 これに対し、「当該職務の内容及び配置の変更の範囲が無期契約労働者と同一であるにもかかわらず、労働者にとって重要な労働条件である賃金の額について、有期契約労働者無期契約労働者との間に相違を設ける」ことは、「その相違の程度にかかわらず、これを正当と解すべき特段の事情がない限り、不合理であるとの評価を免れないものというべきである。」とし、本事案においては「仕事の内容は正社員と同一と認められ、賃金に差があるのは労働契約法に反する」として、会社に対し正社員と同じ賃金の支払いを命じる判決を言い渡しました。 』(太字は筆者)


<平成28年5月13日東京地裁判決>(出所:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/349/086349_hanrei.pdf

『 本件において、嘱託社員と正社員との間に職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲に全く違いがないにもかかわらず、賃金の額に関する労働条件に相違を儲けることを正当と解すべき特段の事情は認められない。
 
 以上によれば、本件相違は、労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情に照らして不合理なものであり、労働契約法20条に違反するというべきである。 』(太字は筆者)


<労働契約法20条>(出所:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19HO128.html
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない
(太字は筆者)


>>本判決に見られるように、今後益々高齢化が進展する中、定年退職後の継続雇用時の賃金のあり方について、高度経済成長期から続く年功賃金を含めた抜本的な考え方の見直しが必要なように思われる。


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小説と映画の「君の名は。」



「小説 君の名は。」(新海誠著、角川e文庫)


『 あとがき

 この小説を書こうとは、本当は思っていなかった。

 こんなことを言ってしまうと読者の方々に失礼かもしれないと思うけれど、『君の名は。』は、アニメーション映画という形がいちばん相応しいと思っていたからだ。


 小説と映画で物語上の大きな違いはないけれど、語り口にはすこし差がある。小説版は瀧と三葉の一人称、つまり二人の視点のみで描かれている。彼らが知らないことは語られないのだ。一方、映画はそもそもが三人称――つまりカメラが映し出す世界である。だから、瀧と三葉以外の人々も含めて文字通り俯瞰で語られるシーンも多くある。どちらも単体で十分に楽しんでいただけると思うのだけれど、このようにメディアの特性として必然的に相互補完的になっている。

 小説は一人で書いたものだけれど、映画はたくさんの人の手によって組み立てられる構造物である。『君の名は。』の脚本は、東宝(映画会社です)の『君の名は。』チームと数ヶ月にわたり打ち合わせを重ねて形にしていったものだ。プロデューサーの川村元気さんの意見はいつもキレッキレで、僕は時折チャラいなあと密かに思いつつも(重要なことも軽そうに言う人なのです)、常に川村さんに導いてもらっていたと思う。


 それから、映画の音楽を担当してくれたRADWIMPSの楽曲たち。小説ではもちろんBGMは流れないけれど、RADWIMPSの歌詞の世界に、この小説も大きな影響を受けている。映画『君の名は。』においては音楽が担う役割は特に大きいのだけれど、それが映画・小説それぞれでどう演出されているか、確かめていただければ嬉しい(そのためには映画も観ていただく必要がありますね。ぜひ観てください!)。

 最初にこの物語は「アニメーション映画という形がいちばん相応しいと思っていた」と書いたけれど、それは映画版が、先に挙げたような多くの方々の才能による華やかな結晶だからだ。個人の能力をはるかに超えた場所に、映画はあると思う。

 それでも、僕は最後には小説版を書いた。
 
 書きたいと、いつからか気持ちが変わった。

 その理由は、どこかに瀧や三葉のような少年少女がいるような気がしたからだ。この物語はもちろんファンタジーだけれど、でもどこかに、彼らと似たような経験、似たような想いを抱える人がいると思うのだ。大切な人や場所を失い、それでももがくのだと心に決めた人。未だ出逢えぬなにかに、いつか絶対に出逢うはずだと信じて手を伸ばし続けている人。そしてそういう想いは、映画の華やかさとは別の切実さで語られる必要があると感じているから、僕はこの本を書いたのだと思う。

 手にとってくださって、読んでくださって、本当にありがとうございました。

   2016年3月  新海誠 』


>>一人称の視点の小説と三人称の映画。
  一人で書く小説と大勢で作る映画。

  音楽は聞こえない小説と音楽の役割が大きい映画。
  切実さで語られる小説と華やかな映画。
  
  新海誠監督が書かざるを得なかった小説もとっても良かった。
  

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家計が国富の8割超



国民経済計算確報

 2017/1/19、内閣府は2015年末の国民経済計算確報http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/h27_kaku_top.html#c3)を公表した。


国全体の正味資産(国富)(対前年末比)

国民資産残高    10,219.1兆円(+2.7%)
内、家計        2,864.4兆円(+1.1%)
   うち、金融資産 1,818.2兆円(+1.8%)
      固定資産   354.9兆円(▲1.0%)
      土地      682.1兆円(+0.2%)
  非金融法人企業 2,235.3兆円(+4.4%)
  金融機関      3,664.8兆円(+4.0%)
  一般政府      1,324.9兆円(+0.4%)

負債残高        6,928.9兆円(+4.3%)

正味資産        3,290.2兆円(▲0.4%)
内、家計        2,483.1兆円(+0.7%)
  非金融法人企業  521.7兆円(▲0.4%)
  金融機関       123.7兆円(▲11.1%)
  一般政府        62.6兆円(▲18.2%)


家計の金融資産    1,818.2兆円(+1.8%)
内、現金・預金       920.2兆円(+1.5%)
  持分・投信受益証券  298.3兆円(+5.7%)
         うち、株式 194.8兆円(+6.9%)
  保険・年金・定型保証 521.5兆円(+1.2%)


>>正味資産(国富)3,290.2兆円8割超は、家計(個人企業を含む)2,483.1兆円
   更に、その8割弱が金融資産1,818.2兆円)で、その半分強現預金920.2兆円)、1割強株式

   株式の比率を上げながら、フィナンシャル・リテラシーを高めて、効果的な資産運用を心がけて行きたい。


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ライザップの戦略




ライザップの戦略


『 戦略的に考えられるということは、「目的⇒戦略⇒戦術」の順番で、大きいところから考えられるようになるということです。決して具体的で発想しやすい戦術から考えないということです。目的戦略が定まらない限り、戦術に費やす時間は無駄になる可能性をはらんでいるのです。 』(太字は筆者)
(出所:「成功を引き寄せるマーケティング入門 USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」(森岡毅著、角川書店)


<ライザップ(RIZAPグループ(2928))の目的・戦略・戦術>

 目的 : 「自己投資産業グローバルNo.1ブランド」となって、人々の健康に貢献する

 戦略ライザップの支援により成長が見込まれる(=上場を維持しつつ(担保見合いとなり得る)レバレッジ(借入の調達等)可能となるような)更なるM&Aを実施してグループ力を強化する

 戦術 : 時価よりもディスカウントした価格での(1)TOB(公開買付)、(2)第三者割当、により、上場会社等のM&Aを継続する


<上場会社の子会社化を通した戦術>

 2013/ 8 イデアインターナショナル(3140) : 第三者割当増資(▲10%)6億円

 2013/12 ゲオディノス(現、SDエンターテイメント)(4650) : ディスカウントTOB(▲49%)8億円

 2015/ 2 夢展望(3185) : 第三者割当増資(▲68%)7億円

 2016/ 4 パスポート(7577) : ディスカウントTOB(▲57%)11億円

 2016/ 4 マルコ(9980) : ディスカウントTOB(▲70%)28億円

 2017/ 1 ジーンズメイト(7448) : ディスカウントTOB(▲23%)+第三者割当増資(▲10%)24億円


 ライザップ傘下に入るプレスリリース後、いずれも株価は上昇/急騰(ジーンズメイトは翌日ストップ高:209円⇒289円に)しており、ライザップの目論見通りに市場が反応していることが分かる。


<有利子負債と株主資本>

      有利子負債 / 株主資本
 2006/3期   ゼロ  /  2億円
 2013/3期   49億円 / 25億円
 2014/3期  119億円 / 51億円
 2015/3期  182億円 / 61億円
 2016/3期  238億円 / 102億円
 2016/9期  388億円 / 135億円

 ⇒直近の(M&A等に充当するための)レバレッジ金額は半端ない


<結論>

 ライザップは、ただのパーソナルトレーニングジムにあらず


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ライザップがジーンズメイトをTOB



ライザップがジーンズメイトをTOB


 2017/1/16、かのライザップ(RIZAPグループ(2928))(「RIZAP」)が、ジーンズメイト(7448)(「JM」)との資本業務提携、JMに対するTOB(公開買付)及び第三者割当増資の引受を発表(https://www.rizapgroup.com/ir-releases/)した。


資本業務提携の概要

1.第三者割当増資

 RIZAP宛て、総額約645百万円(@187円(▲10%))
 
2.業務提携

 RIZAPのマーケティング力やプロモーション力を活用し、両者間の各種相互協力を通じて、JMの売上向上を図る

 
創業者一族が時価より低いTOB価格でも応募

 同日付で、創業者一族(資産管理会社を含む)は、所有する52.62%の株式の応募契約を締結したという。

 TOB価格160円は、時価(1/13終値207円、1ヶ月終値平均193円、同3ヶ月185円、同6ヶ月178円))より、かなりのディスカウント

 RIZAP側としては、TOB価格をディスカウントにして

 (1) 創業者一族以外からの応募を避けて
 (2) 上場を維持(⇒JM株を担保(の見合い)として、更なるレバレッジ(借入等)が可能となる)して

 更なるM&A等の実施を狙っているものと思われる。


 JMの創業者一族がそんな価格でも応募するのはなぜか。


1.業績不芳による事業継続への懸念

 今期(17/2期)予想含め、2009/2期以降、9期連続当期純損失を継続中。08/2期には142億円あった純資産が16/11(17/2期3Q)には41億円まで減少。11/2期から「継続企業の前提(going concern)に重要な疑義」が記載され続けられている。

(参照:「継続企業の前提」(出所:https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ke/keizokukigyou.html


2.従業員(正社員及び契約社員)に関する合意

 出向又は転籍の対照となる者も含めて、

(1) 3年間は雇用を維持する

(2) 1年間は現在の労働条件を維持する


 創業者一族の西脇元会長は1945年生まれの71歳。
 従業員のことを考えた苦渋の決断だったのではないか。


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機械受注統計



機械受注統計


 2017/1/16、内閣府から平成28年11月の機械受注統計実績(http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/juchu/1611gaiyou.pdf)が公表された。


以下は、「機械受注、11月は5.1%減 鉄道車両で反動減」(出所:日経電子版 2017/1/16 11:41)の記事の大要を抜粋してみた。


『 「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み) : 8337億円(前月比▲5.1%)・・・2カ月ぶりの減少
     内、製造業:3635億円(同+9.8%)、非製造業 : 4834億円(同▲9.4%)

 内閣府の基調判断 : 「持ち直しの動きに足踏みがみられる」(据え置き)
 (http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/juchu/1611gaiyou.pdf

 非製造業
  鉄道車両が減った運輸業・郵便業 : 前月比▲12.5%
  内燃機関が減ったその他非製造業 : 同 ▲16.1%

 製造業
  電気機械の半導体製造装置などへの発注 : 前月比+68.0%
  自動車・同付属品産業からの受注 : 同▲2.4%・・・9月以降は月間400億円を超える高い水準

 官公需などを入れた全体の受注総額 : 2兆5915億円(前月比+20.6%)
  外需 : +37.3%
  官公需 : +21.6%・・・ゴミ焼却施設などの受注があった


 なお、機械受注の解説は、SMBC日興証券の用語集(出所:http://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ki/J0286.html)ご参照。

『 「機械受注統計調査」は内閣府が毎月公表している経済指標の1つで、代表的な景気の先行指標となっています。機械メーカーが受注した設備投資用の機械の受注額を集計したものです。一般に企業が増産を行うためには設備投資、すなわち機械を購入して準備しなければならないため、機械受注は、企業の実際の設備投資よりも6カ月から9カ月程度の先行性を持っています。つまり、機械受注が好調であると公表されれば、将来の企業業績にプラスの影響をもたらし、設備投資関連の銘柄だけでなく、株式市場全体景気全体を動かす場合もあります。

ワンポイント
船舶・電力の受注は、景気局面との対応性が薄く不規則な動きをとるため、通常は、「船舶・電力を除く民需」ベースの数字が重要視されています。景気動向予測には、「船舶・電力を除く民需」の機械受注に注目するとよいでしょう。 』 (太字は筆者)


>>今後の景気の動向予測に、「民需(船舶・電力を除く)」の数値の推移に注目して行きたい。


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株式市場における海外投資家動向



我が国の株式市場における海外投資家の動向


 2016/12/26に内閣府より掲題レポート(http://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2016/1226/1157.html)が、2017/1/10に東証より株式年間売買状況(http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/investor-type/00-02.html)が公表された。大要は以下の通り。


<投資主体別売買状況>

 海外投資家 : 順張り(株価上昇局面で買い越し、下落局面で売り越す)
 2016年の委託(Brokerage Trading)内訳(シェア)/ネット売越・買越 :
   海外投資家 776.0兆円(73.8%)/▲3.6兆円
   個人     175.8兆円(16.7%)/▲3.2兆円
   法人      89.1兆円( 8.5%)/+4.7兆円
   証券会社   10.3兆円( 1.0%)/▲0.1兆円

<株式保有比率>
 外国人等

 1990年代初頭の株式保有比率5%弱⇒2013年度30%超まで上昇

 金融機関(銀行や保険会社)
 1990年代半ば頃まで15%程度(株式持ち合いを軸に)⇒徐々に低下(大口信用供与規制等)


<市場関係者へのアンケート調査結果>

 先行きの株式相場において海外投資家の動向に注目する割合 : 約8割
 海外投資家が株式相場に与えるインパクト : プラスのインパクトを与えるとの見方が増えている


<まとめ>

 我が国の株式市場における海外投資家は、売買シェアや市場関係者からの注目度が高い
 今後も、我が国の株式市場を確認する上で海外投資家の動向を把握することが重要

 ⇒海外経済の不確実性にも留意していく必要あり


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新たな合理的な保護主義の時代の始まり



新たな保護主義の時代に
仏歴史人口学者 エマニュエル・トッド氏
(出所:2017/1/12日本経済新聞朝刊)


『 ドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利に驚きはない。2000年以降、自由貿易によって雇用が奪われ、白人有権者の心に耐えがたい痛みが生まれたからだ。トランプ氏の勝利は、労働者階級だけでなく、中間層の怒りでもあったのだ。


 今始まろうとしているのは一つの時代だ。グローバル化、つまり新自由主義1980年ごろに始まった。そこから35年後、我々はまた35年の周期の初期段階にいる。人口学者として私はこれから終わりを見るのではないと断言できる。

 自由貿易は絶対的な自由貿易しかない。しかし保護主義にはいくつもの種類がある。ばからしいものも節度あるものもあるのだ。先進世界では保護主義と開国、つまり自由貿易が代わる代わるやってきた。


 グローバル化は特に英米で途方もない格差を生み、日仏独にもある。この格差は資本の移動の自由と、低賃金の労働力を使うことで生まれた。

 重要なのは格差が生まれる仕組みではなく、先進国が格差を受け入れた点だ。どうして先進国は自由貿易に扉を開いたのか。私は経営者などのビジネス人ではなく、教育階層に問題があると思う。大学と結びついた理論家が格差拡大につながる議論を主導した。


 自由貿易は忘れねばならない。我々の前にあるのは良い保護主義と悪い保護主義の議論だ。給与水準を守ったり、内需を刺激したりする合理的な保護主義は貿易を活発にする。保護主義が国家間紛争になるというのは嘘だ。保護主義協力的で敵対を意味しない。  』(太字は筆者)


 1980年頃に始まったグローバル化(新自由貿易主義)の終わりと新たな35年周期の保護主義の始まり。

 中国を主とする貿易不均衡の解消等を目指すトランプ氏の主張は、トッド氏の言う合理的な保護主義に合致しているように思われる。


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「君の名は。」と「天国から来たチャンピオン」



「小説 君の名は。」(新海誠著、角川e文庫)


『 ほんの一メートルほど先に、彼女がいる。名前も知らない人なのに、彼女だと俺にはわかる。しかしお互いの電車はたんだんと離れていく。そして別の電車が俺たちの間に滑り込み、彼女の姿は見えなくなる。
 でも俺は、自分の願いをようやく知る。

 あとすこしだけでも、一緒にいたかった。

 もうすこしだけでも一緒にいたい。

 俺たちはかつて出逢ったことがある。いや、それは気のせいかもしれない。夢みたいな思い込みかもしれない。前世のような妄想かもしれない。それでも、俺は、俺たちは、もうすこしだけ一緒にいたかったのだ。あとすこしだけでも、一緒にいたいのだ。
 

 やっと逢えた。やっと出逢えた。このままじゃ泣き出してしまいそう、そう思ったところで、私は自分がもう泣いていることに気付く。私の涙を見て、彼が笑う。私も泣きながら笑う。予感をたっぷり溶かしこんだ春の空気を、思いきり吸い込む。

 そして俺たちは、同時に口を開く。

 いっせーのーでとタイミングをとりあう子どもみたいに、私たちは声をそろえる。

 --君の、名前は、と。 』


 このシーン、ウォーレン・ビューティー主演の『天国から来たチャンピオン Heaven Can Wait』のラストシーンを思い出す。

(出所:http://www.script-o-rama.com/movie_scripts/h/heaven-can-wait-script-transcript.html
 Beatty : Have we met ?
 Julie : No. I don't think so. No, I guess we haven't. I'm sorry.
 ・・・
 Julie : What's that?
 Beatty : They're just closing up the place. Here, give me your hand.
 It's all right. There's nothing to be afraid of.
 ・・・
 Julie : When you said "There's nothing to be afraid of," your voice sounded so familiar.
 Beatty : Well, like I said, I thought I knew you, too.
 ・・・
 Beatty : All of a sudden, I don't feel like going to a party, and I thought maybe if... I mean... You want to have a cup of coffee or something?
 Well, I guess not.

 Julie : You are the quarterback.
 Beatty : Yeah, how'd you know that ?
 Julie : Yes, I'd love to have a cup of coffee with you.


>>突然、電気が落ちる。そこで驚くジュリー・クリスティに対して言う。
 It's all right. There's nothing to be afraid of.
 これは、ファーンズワース演じるウォーレン・ビューティーが最後に言った言葉。
 彼だとわかった瞬間だ。

 (この映画で使われたデイヴ・グルーシンの曲を4大学大会の英語劇(ニール・サイモンの"God's Favorite")の幕間で使ったことも懐かしい。)


 なお、次のクイズ(http://www.funtrivia.com/en/Movies/Heaven-Can-Wait-16515.htmlの最後から2番目)もご参照。

『 ? : After the Super Bowl, what does the main character say to Julie Christie's character to make her realize who he is ?

Answer : "It's all right. There's nothing to be afraid of."

Just before Beatty's character is shot, he proposes to Julie Christie's character. When he realizes that he is about to be taken away, he tells her that someday someone else might come up to her, maybe even a football player, maybe even a quarterback, and she'd be able to look into his eyes and feel recognized. She expresses confusion, and he assures her, "It's all right. There's nothing to be afraid of." Those are the last words he speaks to her before being shot. 』


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小池都知事の選択肢



小池都知事の都議選における選択肢


 森岡剛さんの「成功を引き寄せるマーケティング入門 USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」(角川書店)に、以下内容の記述がある。


『 「よし頑張って痩せよう(A)

 自分は運動する時間がなかなか取れないから、食事制限でカロリーをコントロール(B)しよう。

 毎晩の夕食をすべて野菜ジュースに変える(C)ぞ!」


 重要なことは、「目的(A)⇒戦略(B)⇒戦術(C)」の順番で考えることです。そのほうが効率が良いからです。最初に目的を明確にすることが何よりも重要。戦略は目的達成のために存在するので、目的が変われば全ての戦略は(戦術も当然)やりなおしになります。

 そして戦術よりも先に戦略を明確にすることです。戦略は資源集中の大方針を決定します。該当する戦略の範囲外にある無数の戦術オプションを、全て考えなくて良い領域にしてくれるのです。

 マーケティングでは戦略的思考がこのように当てはまります。

 目的:OBJECTIVE
 目標:WHO(ターゲットは誰か?)
 戦略:WHAT(何を売るのか?)
 戦術:HOW(どうやって売るのか?)

 戦略的に考えられるということは、「目的⇒戦略⇒戦術」の順番で、大きいところから考えられるようになるということです。決して具体的で発想しやすい戦術から考えないということです。目的戦略が定まらない限り、戦術に費やす時間は無駄になる可能性をはらんでいるのです。 』(太字は筆者)


 これを小池東京都知事のこの夏の都議選の一例に置き換えてみる。

目的
・都議会の運営を円滑に進めて小池改革を断行する

戦略
・127議席の過半数を握る

戦術
・自民党(都議会)を改革阻止守旧派(悪玉)として、公明党との連立により、64議席を確保する


選択肢

1)自民党(除、都議会)との連携 ◎

・(安倍総理の了解のもと)自民党小池派(のような新党)として、(公明党との連立により)過半数の議席を確保して小池改革を断行する
(ザ・ボイス そこまで言うか!1月10日(火) 高橋洋一(経済学者)「6 安倍総理と小池都知事が東京オリンピックについて会談」参照)

2)民進党との連携 ×

・自治労/東京都職員組合が支援する民進党と連携すれば、天下り撲滅等の改革がし難くなり、小池改革の実行が不可能となる
(ザ・ボイス そこまで言うか!1月9日(月)長谷川幸洋(ジャーナリスト)「6 小池都知事と民進党 都議選協力で協議へ」参照)


>>まずは、前哨戦となる、2月5日投開票千代田区長選の行方に注目したい。


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テーマ : 小池百合子
ジャンル : 政治・経済

公募増資と株価(時価総額)の関係



公募増資と株価(時価総額)


 最近2つの公募増資案件を目にした。

 公募増資は、(インサイダー情報が存在しないタイミングで)取締役会決議で可能なため、会社側に「いつ実施するのが最適か」を選択する権利がある(既存株主は(希薄化に伴う株価下落を被る)受身の存在)。

 公募増資で調達した資金を、投資家の期待利回りを超える投資等に回すことが出来たならば、(少なくとも理論上は)「将来の株価>(公募増資発表前の)現在の株価」となり、調達金額を超える時価総額の増加となるのであろう(が、その結果が出るまでには時間がかかる)。


【みちのく銀行の事例】
プレスリリース:1月6日15:30
公募増資株式数:30,440千株(発行済株式数の20.2%)
1月6日終値:227円/時価総額34,254百万円
1月10日終値:200円(▲11.9%)/同36,268百万円

【ケンコーマヨネーズ】
プレスリリース:1月10日16:00
公募増資株式数:2,000千株(発行済株式数の14.1%)
1月10日終値:3,370円/時価総額47,891百万円
1月11日終値:3,190円(▲5.3%)/同45,333百万円

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テーマ : 感想
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完全失業率3.1%と有効求人倍率1.41倍



 2016/12/27、総務省統計局から「労働力調査(基本集計)平成28年11月分(速報)」が、厚生労働省から「一般職業紹介状況(平成28年11月分)」が公表された。


労働力調査(基本集計)平成28年11月分(速報)
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/

<ポイント>
 (1) 就業者数、雇用者数
   就業者数は6452万人。前年同月に比べ73万人の増加。24か月連続の増加 ↑
   雇用者数は5758万人。前年同月に比べ82万人の増加。47か月連続の増加 ↑
 (2) 完全失業者
   完全失業者数は197万人。前年同月に比べ12万人の減少。78か月連続の減少 ↑
 (3) 完全失業率
   完全失業率(季節調整値)は3.1%前月に比べ0.1ポイント上昇 ↓


一般職業紹介状況(平成28年11月分)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11602000-Shokugyouanteikyoku-Koyouseisakuka/0000146333.pdf

【ポイント】
○平成28年11月の有効求人倍率1.41倍で、前月に比べて0.01ポイント上昇。 ↑
○平成28年11月の新規求人倍率2.11倍で、前月と同じ水準。 →  

 厚生労働省では、公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめ、求人倍率などの指標を作成し、一般職業紹介状況として毎月公表している。


<結論>
・上記数値は、アベノミクスが上手く機能している証左であるものと思われる。


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テーマ : 安倍内閣
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国民経済計算(GDP統計)の基準改定



国民経済計算の平成23年基準改定および2008SNA対応について


国民経済計算(GDP統計)に関するQ&A(平成29年1月6日版)

 2017/1/6、内閣府より、掲題Q&A(平成29年1月6日版、http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/otoiawase/faq/pdf/faq_20170106.pdf)が公表された。


『 問 GDP統計の基準改定とは何ですか。

4.「平成23年基準改定」の主な内容(基礎統計の取り込み以外)は以下のとおりです。

 ①「*2008 SNA」への対応
 ・研究・開発(R&D)の資本化、特許使用料の取扱変更、防衛装備品の資本家、等
 (*2008 SNA:United Nations “Systems of National Accounts 2008”)

 ②各種の概念・定義の変更や推計手法の見直し
 ・経済活動別分類の国際比較可能性の向上
 ・供給・使用表の枠組みを活用した推計制度の向上
 ・建設部門の産出額の推計手法の見直し

詳細は内閣府ホームページを参照してください。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/seibi/2008sna/pdf/20161130_2008sna.pdf 等 


問 他国の2008SNAへの以降状況はどうなのですか。日本は遅い方ですか。

2.日本は、平成23年基準改訂を行う2016年末に、2008SNA対応を合わせて行ったため、結果として主要先進国を追った形での対応となっています。

 国        対応時期
 オーストラリア 2009年
 カナダ      2012年
 米国       2013年
 韓国       2014年
 EU加盟国*   2014年
 (*英国、ドイツ、フランス、イタリア等) 』


>>基準改定の内、最も大きな変化は、「研究・開発(R&D)の資本化」である。



平成28年科学技術研究調査結果

 2016/12/28、総務省統計局より掲題調査結果(http://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/pamphlet/s-01.htm)が公表された。

『 研究費

①平成27年度の科学技術研究費(「研究費」)の総額は18兆9391億円(対前年度比0.2%減)で、3年ぶりに減少
②国内総生産(GDP)に対する研究費の比率は、3.56%と対前年度比0.10ポイント低下 』


 一方、「統計でみる日本の科学技術研究(平成27年科学技術研究調査の結果から)」(http://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/pamphlet/index.htm)で各国の数値を確認してみた。

『 日本、米国、中国、ドイツ及び韓国における研究費とGDP比率(平成26年度)
http://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/pamphlet/s-01.htm

 国名 研究費(億ドル)GDP比(%)年度
 日本   1802      3.87    2014
 米国   4570      2.73    2013
 中国   3365      2.08    2013
 ドイツ   1010      2.85    2013
 韓国    689      4.15    2013 』


 安倍政権が掲げる名目国内総生産(GDP600兆円目標に向けて、国際基準に合わせて追加された「研究・開発(R&D)」を始めとする景気浮揚につながる積極的な支出を期待したい。


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テーマ : 安倍内閣
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月例経済報告に見る日本経済の基調判断



月例経済報告

 2016/12/21発表の内閣府の月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料(http://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/kaigi.html#h28)によれば、日本経済の基調判断が「一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」と上方修正された。

 過去からの日本経済の基調判断の表現を確認してみた。

<日本経済の基調判断>

 [現状(H27/5以降の現状)]
 H27/5~7 「景気は、緩やかな回復基調が続いている」
 H27/8  「景気は、このところ改善テンポにばらつきもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」

 H27/9  「景気は、このところ一部に鈍い動きもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」
 H27/10~H28/2 「景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」

 H28/3~11 「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」
 H28/12  「景気は、一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」


 [先行き(H28/9以降)]
 H28/9-10 先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済で弱さがみられており、中国をはじめとするアジア新興国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある。また、英国のEU離脱問題など、海外経済の不確実性の高まりや金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。

 H28/11-12 先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。



家計調査報告

 一方、2016/12/27、総務省統計局から家計調査報告(2016年11月分速報、http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_mr.pdf)が発表された。

<消費支出>
 1世帯当たり 270,848円
 前年同月比 実質▲1.5%(名目▲0.9%)
 ・・・13ヶ月連続減(除、16/2月(閏年要因)) ↓

<勤労者世帯(2人以上の世帯)の1世帯当たり収支>
 [実収入] 432,415円 前年同月比 実質+1.0%(名目+1.6%)
               ・・・10月の実質▲0.1%から改善 ↑

 [可処分所得] 351,894円 前年同月比 実質+1.4%(名目+2.0%)
                  ・・・10月の実質▲0.2%から改善 ↑

 [消費支出] 294,019円 前年同月比 実質▲0.9%(名目▲0.3%)
                 ・・・7か月連続の実質減少 ↓

 [平均消費性向] 83.6% 前年同月 85.5%(▲1.9%) ↓
                  ・・・季節調整値72.9%(前月比+2.0%) ↑

(太字は筆者)


 家計調査の数値は強弱まちまちではあるが、政府としては、トランプ効果による株価上昇、円安基調等も踏まえて、日本経済の基調判断を上方修正したものと思われる。


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テーマ : 安倍内閣
ジャンル : 政治・経済

「小説 君の名は。」



「小説 君の名は。」


 昨年、映画「君の名は。」を見た。
 興味を持ったので、「小説 君の名は。」の電子書籍を読んでみた。

 また、2017/1/8の「題名のない音楽会」(http://www.tv-asahi.co.jp/daimei_2015/contents/Broadcast/bn-cur/)に、新海誠監督が映画のテーマ曲に込められた思いを語っていた。

 「小説 君の名は。」(新海誠著、角川e文庫、H28/6/18発行。角川文庫「小説 君の名は。H28/6/25初版発行にもどついて制作)の解説で、川村元気さんが主題歌との関係について以下のように述べている。



『 解説  川村元気

 新海誠が僕に解説を頼んだ理由が分かった気がした。
 彼は「解説」して欲しかったのではない。この小説が生まれた経緯を、身内から「暴露」して欲しかったのだと、僕は理解した。

 2年前、新海誠と長編映画をつくることが決まった。
 その日の夜、僕は新海誠と有楽町のガード下にある安い居酒屋で酒を飲んでいた。
 ぼくはハイボールを、彼は生ビールを片手に語り合った。
 
 新海誠をまだ知らない人たちがかれの世界に触れ、驚いて欲しかった(ぼくが14年前『ほしのこえ』を観てぶったまげたように)。そして、新海作品を見続けてきた人たちには、あらためて新海誠という才能がなにを成し遂げたのかを目撃して欲しかった。
 加えて、新作は限りになく音楽的であって欲しいと、僕は言った(いつだって新海誠の作品は素晴らしい音楽とともにある)。好きなミュージシャンはいるのか? と訊ねた。すると彼はあるバンドの名前を挙げた。以前から親しくしているそのバンドのフロントマンに、僕は酔った勢いでメールを打った。

 「君の前前前世から、僕は君を探し始めたよ」

 それから半年後、RADWIMPSの野田洋次郎から主題歌『前前前世』のデモが届いた。

 すれちがうふたりの物語を、どこまでも大きな世界で描く。新海誠と野田洋次郎。
 ふたりは運命に導かれるように出会い、奇跡的なコラボレーションが生まれた(きっかけはガード下の居酒屋だったけど)。

 「今回、小説は書きません」
 そう宣言していた新海誠が、野田洋次郎の音楽によって書かされた。
 小説に音は鳴らせない。でもRADWIMPSの曲がここから聴こえてくる。
 運命的な出会いがもたらした、希有な小説だと思う。
 
 本作のなかで瀧は自問している。
 人は不思議な生き物だ。大切なことを忘れ、どうでもいいことばかり覚えている。メモリーカードのように、必要なものを残し、不必要なものだけを消すようにはできていない。それはなぜだろう、と考え続けてきた。
 でもこの小説を読んで、少しだけ、わかった気がする。
 ひとは大切なことを忘れていく。
 けれども、そこに抗(あらが)おうともがくことで生を獲得するのだ。

(映画プロデューサー・小説家) 』


 有楽町のガード下から生まれた、映画と音楽の奇跡的なコラボレーション。
 世の傑作が、どこから誕生するか分からないところがまた面白い。


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テーマ : 君の名は。
ジャンル : 映画

平成29年度予算政府案



平成29年度予算政府案


 2016/12/22、平成29年度予算案(租税及び印紙収入概算)が閣議決定(http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2017/seifuan29/index.htm)された。


<平成29年度予算案(シェア)/平成28年度補正後(増加率)
 所得税   17.9兆円(31.1%)/17.7兆円(+1.3%)
 法人税   12.4兆円(21.5%)/11.1兆円(+11.3%)
 消費税   17.1兆円(29.7%)/16.8兆円(+2.0%)
 上記小計  47.5兆円(82.3%)/45.6兆円(+4.0%)
一般会計分計57.7兆円(100%)/55.9兆円(+3.3%)

>>改めて、上位3つ(所得税・法人税・消費税)のシェアの高さ(82.3%)が目を引く


 一方、財務省HPで一番古い(補正後)予算額である平成9年度(消費税率が3%から5%に上がった最初の年度http://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/1c012t1.htm)を確認してみた。

<平成9年度補正予算>
 所得税   19.5兆円(34.7%)
 法人税   14.8兆円(26.2%)
 消費税   9.7兆円(17.2%)
 上記小計 44.0兆円(78.2%)
一般会計分計56.2兆円(100%)

>>上位3つ(所得税・法人税・消費税)のシェア(78.2%)の内、所得税・法人税の高さ(61.0%、平成29年度予算案では52.6%)が目を引く


・安倍政権は、消費税率10%への引き上げを延期(当初2015/10⇒17/4⇒19/10)したが、平成28年度補正を単純に1.25(10%÷8%)倍した差額が4.2兆円、所得税・法人税の平成28年度補正と9年度補正との差額が4.1兆円

・景気浮揚等に伴い、(消費税率アップに見合うような)所得税・法人税が増えれば、良いことになる。

・やはり、当面は、(消費税率アップに頼ることのない)所得税・法人税の元となる景気浮揚等を優先すべきものと思われる。


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テーマ : 感想
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「勤労統計調査」



毎月勤労統計調査


 2017/1/6、厚生労働省から掲題の平成28年11月分結果速報(http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/28/2811p/2811p.html)が発表された。


 ここから、一般労働者とパートタイム労働者の収入等を比較してみた。


<賃金:月間現金給与総額(対前年増減率)>

調査産業計
 事業規模5人以上)274,778円(+0.2%)
    同 30人以上)310,036円(+0.6%)

調査産業計
 一般労働者   353,170円(±0.0%)
 パートタイム労働者 96,130円(▲0.2%)
  ⇒ 一般労働者の3割未満


<常用雇用労働異動(対前年増減率)>

常用労働者    49,252千人(+2.2%)
 一般労働者    34,193千人(+2.4%)
 パートタイム労働者 15,059千人(+1.4%)


就業形態別(H22年平均=100)(対前年増減率)
 調査産業計 全体 109.0(+2.2%)
        製造業  98.6(+0.3%)
   卸売業、小売業 102.2(+1.5%)
      医療、福祉 122.8(+2.7%)

内、一般労働者
 調査産業計 全体 104.9(+2.4%)
         製造業 98.2(+1.0%)
    卸売業、小売業 96.1(+0.9%)
      医療、福祉 117.4(+2.1%)

内、パートタイム労働者
 調査産業計 全体 119.6(+1.4%)
        製造業 101.4(▲4.1%)
  卸売業、小売業 110.4(+2.1%)
     医療、福祉 135.9(+3.7%)


<結論>

・全体の数値を引き上げているのは、医療、福祉の分野であることが分かる。

・安倍政権は、介護人材の処遇※について「競合他産業との賃金差がなくなるよう、平成29年度からキャリアアップの仕組みを構築し、月額平均1万円相当」の改善を目指しているが、特に、パートタイム労働者の大幅増額により、一般労働者との給与水準差の解消を目指す必要があるように思われる。

※H28/6/2閣議決定「ニッポン一億総活躍プラン」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/pdf/gaiyou1.pdf、P5)


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「ぼくらの哲学」②




「ぼくらの哲学」(青山繁晴著、飛鳥新社)


 以下は掲題書の二の章からの抜粋。

 「チャンドラ・ボース・ジャパン大学」の創設に対する心意気や、日本の葉隠と西洋の聖書が「自分以外の人のために生きるのなら空しくない」という共通の考えに基づいているということに感動した。


『 二の章 動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し

東南アジアの新しい連携

(講演再現の続き)

 インドやベトナムでは、先の不幸な世界大戦において日本の戦いが、欧米列強による植民地支配から自らの民族と国家が独立する運動を助けた肯定面もあるという共通認識があります。具体的には、インド独立運動の英雄、自由インド仮政府の国家主席であったすバス・チャンドラボースさんは、日本軍と連携してインド国民軍を率いて、英国による植民地支配からの解放へ戦いました。

 また、日本の敗戦後に東京で開かれた極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判でインド代表のパル判事が日本被告は全員、無罪という少数意見を正式に主張しました。その背景には、先の大戦の歴史をフェアに見るインドの姿勢があると考えます。

 パル判事は日本びいきで無罪判決を唱えたのではなく、あくまで国際法に客観的に基づいて「日本は一方的な侵略戦争を行ったのではない」という結論を導き、そこから無罪という判断を下したのでした。ここは極めて肝心です。利害や感情、偏見によらず、法の正義だけに従って打ち出した、日本無罪論でありました。


 またベトナムの救国の父、ホーおじさんことホー・チ・ミン初代国家主席は、フランス民主主義と戦うために日本軍を活用しました。

 日本は本来、名誉を重んじる国柄です。わたし自身、侍の伝統を持つ家に生まれ落ちましたが、「自分のためには刀を抜くな、人のためにはいつでも抜け」という武士道を教わって育ちました。

 先の大戦における日本の陸海軍には間違いもありましたが、アジアの諸国と民を列強の帝国主義からアジア人の手で解き放つという理念もまた確かに持っていました。

 ボースさん、パルさん、ホーおじさんは、その肯定面をしっかりと活かしてくださり、民族自決という永遠の正義をインドやベトナムをはじめとするアジア諸国に打ち立てられたのだと思います。


 わたしは、ここインドの地に、たとえば新しい大学を日本の支援によって創建することを安部総理と下村文部大臣に提案しています。

 その仮の名称を「チャンドラ・ボース・ジャパン大学」とします。


 「歴史学部」では、戦勝国側だけからの史観に支配されることなく、戦勝国でも敗戦国でもないインドやベトナムといった中立の諸国の研究者によるアジア史研究に、日本の研究者が加わり、新しい公平な視点を世界に提供することを目指します。



葉隠の真意
(講演再現の続き)

 武士道といふは死ぬことと見つけたり。

 この部分を戦前の日本の軍部は教科書にして小学生に配り、戦場で死ぬことを理想とするよう求めました。葉隠の真意は違います。

 ここに重大な言葉が省かれているのです。「死ぬこと」の前に、「誰のために」が省かれています。侍の本来の世界では、ここに「君主のために」が必ず入っていなければなりません。すなわち「君主のために死ぬこと」が武士道のはずなのです。

 ところが葉隠はあえて、それを入れなかった。なぜか。「君主でなくてもいい。自分以外の他の誰かのために死ぬことが、武士道だ」という考えがあったからです。

 この一節は、死ぬことを語っているのではなく、「生きよ。人のために生きよ」と言っているのです。「もしも自分のことばかり考えて生きていれば、どれほどうまくやっても、あるいは栄達しても、やがて必ず死ぬのだから人生はつまらない、空しい。しかし、自分以外の人のために生きるのなら、命が次につながっていくのだから、空しくない。生きよ、人のために生きよ」。それが日本の武士道のほんとうの根幹精神です。

 
 聖書に次の一節があります。

 誠にまことに汝らに告ぐ。一粒の麦、地に堕ちて死なずば、ただ一粒にてあらん。もし死なば、多くの実を結ぶべし。

 この意味するところは、人間誰しも一粒の麦に過ぎない。自分だけは死にたくないと生きていれば、ただ一粒の孤独が永遠に続くだけだ。むしろ死ぬことによってこそ、次の命に繋がり、空しさから救われるのだということです。


 その生き方と、葉隠の生き方は見事に重なります。すなわち日本文化の根幹は豊かな普遍性を持っているのです。 』


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「ぼくらの哲学」①


「ぼくらの哲学」(青山繁晴著、飛鳥新社)
2017年1月9日 第1刷発行


 携帯書は、『月刊WiLL』(ワック)2015年3月号~2016年5月号の連載に新たな題名を付し、単行本化したもの。

 2016年7月の参院選で、いかなる団体、組織の支援も辞退して48万票強の得票を得て自民党から選出された。

 ニッポン放送の「ザ・ボイスそこまで言うか」Podcastにも時々出演される青山繁晴さんの最新書から次の帯の内容を確認してみたい。


 「壊れた世界でいま、われら日本国民、ど真ん中を生きるには何が支えなのか。」


『 日本の哲学を世界にそっと送り出すとき――序に代えて


 最後に死の恐怖に辿り着いたから、「おのれのことだけを考えて生きていれば、やがて死ぬだけである。空しいだけである」という考えを抱いて、どん底から再出発することができたのではないかと思います。

 救われた直接のきっかけは、キェルケゴールの「死に至る病」を手にして、ぱらぱらと読んだことでした。読んだというより、ぼくが魂のなかで弱り切っていた時ですから、ただ文字の列を眺めたに近かったでしょう。


 日本には、「人のために大きく生きる」ことのお手本がいらっしゃる。今上天皇がご譲位を望まれたのは、ご自分がお疲れで休まれたいということではないと考えます。天皇陛下の本来のおつとめは、祈ること。それはご自分のために祈るのでしょうか、すべて、ただ人のため、わたしたち衆生のために祈られることです。それに集中されたいという大御心ではないでしょうか。


 祖国にいま必要なのは、死に至る病を超える哲学です。

 日本は、たった一度、戦争に負けただけで国家の理念、哲学を失ったと思い込み、それどころか「国が理念を持つと戦争になる」と刷り込まれてきました。

 いま世界は、壊れつつあります。アメリカの大統領選挙がその先駈けです。破壊は希望です。先の対戦後の世界は70年あまりしか持ちませんでした。人のために生きる、その大和心、やまとごころが世界の助けになる秋(とき)が来ています。



 一の章 ぼくらの祖国に、たった今、必要なもの

日本の仕組み

 安部総理が党総裁を務める自由民主党を始め、日本が「戦争に負けても資源もない国」でいることこそ既得権益として利を漁る人々が政界、官界、財界、東大をはじめ学会、マスメディア、農協・・・・・・これらに満ちている。

 日本がこのままでいてくれれば油やガスを中東の独裁者たちから、戦勝国アメリカやイギリスの仲介で高値で買い続けて、そこからマージンを取って、政治家、官僚、学者、企業で分けられる。

 
 祖の国を低きに留めおいて、おのれだけがうまくやる。これが日本人の本来の姿だろうか。 』



 おのれのことだけを考えて生きていないか、人のために生きているか、を常に問い続けながら生きてゆきたいと思う。


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「企業価値評価」③



企業価値評価 バリュエーションの理論と実践 第6版上
(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ダイヤモンド社)


 本書を通じて、マッキンゼーの人たちが考える「事業単位ごとの企業価値評価をどのように活用すべきか」を考察してみたい。


『 第17章 事業単位ごとの企業価値評価 Valuation by Parts

  要約


 多くの大企業には複数の事業部門があり、それぞれが異なる経済的特性を備えた分野(業界)において競合している。そのような企業を事業部門ごとに価値評価することは業界の代表的企業や投資経験の豊富な投資家にとっては基本的な作業である。それが単により優れた企業価値評価を生むためだけではなく、価値を創出している分野と方法についてのより深い洞察をもたらすからである。企業を事業部門から価値評価するには、事業部門が独立起業だった場合にはどのような業績をあげるかをおおよそ示すNOPLAT*、投資資産、事業からのフリー・キャッシュ・フローが必要である。そのような情報を用意する段階において、本社機能のコストを割り出し、内部取引に対応し、金融子会社の株式キャッシュフロー価値評価を行う必要がある。

 最も適切な同業他社の負債比率やベータ値に基づいて、事業部門ごとに分けて加重平均資本コストを見積もる。

 DCF表による企業評価の見積もりを三角測定するには、事業部門ごとにマルチプルに基づいて企業価値評価を行う。資産収益率と成長率がきわめて類似した同業他社グループを必ず取り上げる。筆者らの経験では、企業グループがコングロマリット・ディスカウントに悩まされる理由は、極めて高い資産収益率と成長率を備えた同業他社を比較対象に選択した結果であることが多い。


第21章 資産収益率を測定する別の方法 Alternative Ways to Measure Return on Capital

  要約


 ほとんどのビジネスにとって、ROICは資産収益率の優れた指標である。ビジネスが生み出すキャッシュフローの内部収益率は経済的リターンを正確に反映する。しかも、これは標準的な財務諸表から入手できる情報に基づいており、管理職にも理解しやすい。しかし、場合によっては、資産収益率の代替指標のほうが価値創造について優れた洞察をもたらすことがある。
 
 研究開発ブランドなどの無形資産に多額の投資を行うビジネスについては、ROICを調整してこれらを資産計上するべきである。資本の使用が皆無に近いビジネスの場合は、経済的利益のほうが価値創造の指標として優れている。規模が異なるビジネスを比較するには、経済的利益を売上高比で比較する。当初多額の資本投資が必要だが、その後長年にわたって安定したキャッシュフローを生み出すビジネスについては、ROICと比較して手間がかかったり複雑であっても、CFROI**などの指標が適切か検討することができる。


  訳者あとがき Closing Thoughts

 日本企業においても近年、組織スキル面では企業価値評価に対する理解度は大きく向上してきていると感じる。日本企業によるクロスボーダーM&Aが増加する中で、実際に案件を経験した人材が増えてきていると同時に、投資銀行などの出身者を積極的に採用し組織スキル強化に努めていると同時に、投資銀行などの出身者を積極的に採用し組織スキル強化に努めている企業も多い。ただ、企業価値評価を実施するスキルは向上してきたもののM&Aを企業価値向上のためのツールとしてうまく活用することができている企業はいまだ多くはないというのが筆者らの感覚である。

 たとえば、M&Aにおける買い手としては確かにスキルが向上し経験値も蓄積されてきているが、一方で事業の売却についてはいまだに消極的である。売却に踏みきる場合でもその判断が遅く、最適なタイミングを逃している事例が散見される。M&Aは、買収だけではなく、事業ポートフォリオ組み換えの手段として捉えることが重要である。また、M&Aからのシナジーの創出についても、いまだ米国企業などと比べると改善の余地が見られる。例えば、M&A後も買収先事業の「独立」経営が継続されて、調達・購買、生産、間接部門の最適化など、売上面でのシナジーと比較して相対的に実現が容易とされるコスト面のシナジーですら、十分に実現されていないことが多い。

 本書において読書に紹介したのは、企業価値評価を行うにあたり、バリュードライバーを検証し、DCF法を用いて計算する手法である。この基本的な企業価値算定の手法をベースに、税金の取り扱いやリースの処理といった会計上の技術面での扱い、資本政策上の観点からの検討、新興市場やボラティリティが高い業界への適用、自由度のオプション評価価値など、幅広い適用事例を紹介してきた。しかし、これらの手法を習得するのに併せて、経営陣がM&Aを経営戦略の実現手段として最大限に活用すること、また、その各プロセスにおいてM&Aの責任者が適切な検討や判断を行えるようになることが、M&Aを成功させるためには求められている。本書の内容が読者の企業価値評価の習熟度を向上させ、それが日本企業のより巧みなM&A活用と、企業価値向上に資することにつながれば望外の喜びである。

訳者 マッキンゼー・コーポレート・ファイナンス・グループ 』

*Net Operating Profit Less Adjusted Tax(みなし税引後営業利益)
**Cash Flow Return On Invested Capital(キャッシュフロー投下資産収益率)


事業部門ごとに価値を評価し、最適なタイミングで事業部門ごとに売却し、事業ポートフォリオの組み換えを通じて、より企業価値を向上することが重要である


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「企業価値評価」②



企業価値評価 バリュエーションの理論と実践 第6版上
(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ダイヤモンド社)


 本書を通じて、マッキンゼーの人たちが「どのような企業が価値を創造するか」を考えてみたい。


『 第Ⅰ部 原理編

第1章 なぜ、企業価値か? Why Value Value?

  本章について


 本章では、価値創造のエコノミクス(たとえば、競争優位に立つ企業がどのように高いROICを生み出すか)と、価値評価のプロセス(たとえば、財務報告書からどのようにROICを計算するか)を説明する。この知識があれば、たとえば、どういった事業を保有すべきか、あるいは、成長のROICのトレードオフをどう考えるのか、といった戦略的あるいはオペレーション上の課題に対して、企業はより賢明な意思決定ができるようになるだろう。同様に、この知識は、投資家が自信をもってリスクとリターンを算定するうえで役立つだろう。


第2章 価値創造の基本原則 Fundamental Principles of Value Creation

  要約


 本章では、企業価値は資本コストで割り引いた将来のキャッシュフローによって決まることを示した。また、キャッシュフローは将来のROIC売上高成長率によって決定される。企業資本コストを上回るROICを超えたときにのみ価値を創造する。すでにROICの高い企業にとっては一般に成長率のほうが企業価値により大きな影響をもたらすため、さらにROICを改善するよりも成長に集中することが望ましい。反対に、低いROICの企業では、まずはROICの改善に集中するべきである。


第3章 企業価値不変の法則とリスクの役割 Consevation of Value and the Role of Risk

  要約


 キャッシュフローの増加に寄与しないものは、価値を創造しないということだ。企業がキャッシュフローの帰属先を変えたとしても、キャッシュフローの総額が変わらない限り、企業価値も不変である。

 リスクは、投資家がリスクを取る対価として企業に求める資本コストと、将来キャッシュフローに対する不確実性という2つを通じて、企業価値評価に影響を及ぼしている。投資家は自分たちでポートフォリオを分散させることができるため、資本コストに反映されているリスクは分散可能なリスクだけである。キャッシュフロー・リスクをどのように取るべきかを示す金融理論はあまりないが、実務的には経営陣や投資家はキャッシュフローに対するリスクの中で、株主が自分自身で管理できないリスクについても考慮する必要がある。


第4章 株式市場の魔力 The Alchemy of Stock Market Performance

  経営への意味合い


 経営者は、自分たちが何を望むべきかをよく考えるべきだ。経営者は皆、株価が上がることを望む。しかし、一度株価が上昇してしまえば、株式市場の平均以上に上昇し続けることは難しい。「期待との再現なき闘い」から逃れることは不可能であり、期待を引き下げる簡単な方法もないのが実情なのである。


第5章 市場はすべて織り込み済み The Stock Market Is Smarter Than You Think
 
  要約


 収益は、それだけでは企業価値を創造しない。それができるのは、キャッシュフローだけである。有望な成長率ROICを有する企業は、高い収益も生み出す。市場は、確かなファンダメンタルズの裏付けのない収益、たとえば、十分な資産収益率を実現しないM&Aによる増収などを見抜く力をもっている。


第6章 投下資産収益率(ROIC) Return on Invested Capital

  要約


 ROICを学ぶことで、得るものは多い。第1に、ROICは価格プレミアムやコスト・資本効率性、あるいはそれらの組み合わせによって実現する競争優位性により高められるということである。第2に、ROICにとって業界構造は重要だが、それだけが決定要素ではない。業界ごとにリターンの高低が異なる傾向がある。 第3に、これが最も重要であるが、高いROICをもたらす戦略を策定できている企業は、時を経て経済・業界・企業が変化しても、高いROICを維持できる場合が多い。


第7章 成長とは何か Growth

  要約


 株主にとっての企業価値を最大化するために、企業は何が成長率を高めて、結果として何が企業価値の創造につながっているのかという点を理解すべきである。大企業の長期間にわたる売上成長の大部分は、属する市場(業界)自体の成長に依存している。短期的には市場シェアの増加も売上成長に寄与するが、長期的な成長という観点からみれば、市場シェアの増加はさほど重要ではない。 』


<まとめ>

・時を経て経済・業界が変化しても、キャッシュフローの増加に寄与する売上高をもたらす戦略を策定できる企業が、高いROIC企業価値を創造する



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「企業価値評価」①



企業価値評価 バリュエーションの理論と実践 第6版上
(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ダイヤモンド社)
2016年8月25日 第1刷発行


 キャッシュフローの開示2000年から始まり、東証から「コーポレートガバナンス・コード」(http://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/code.pdf)が発表されたのが2015年6月

 原書がマッキンゼーから出されたのが既に四半世紀以上も前のこと。米国では当時から企業価値評価が重視されていたことがわかる。

 マッキンゼーの人たちが考える「本書を通じた意義」を学んでみたい。



『 訳者まえがき Introduction


 第5版からの改訂のポイント


 第6版では、第5版の内容に加え、企業価値評価の実務において近年よく用いる、多様な事業を抱える企業の価値評価方法を第17章「事業単位ごとの企業価値評価」でとりあげた。加えて、第21章「資産収益率を測定する別の方法」においては、IFRS適用やスタートアップの増加による、発生時点で費用計上される研究開発費への対応や、必要資本が非常に小さい事業の評価手法について説明している。これらはいずれも、最近の企業価値評価における実務家のニーズに応えるものである。



 日本における企業価値――25年超の振り返り

 原書Valuationの出版から今日まで、日本企業における企業価値の見方は大きく変わってきた。

 初版出版当時、日本はバブル崩壊後まもなくであった。キャッシュフローの開示も行われておらず、そもそもキャッシュフローとは何かすら十分認知されなかったように思う。その後、1997年のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌における“キャッシュフロー経営”特集をきっかけに、企業価値を想像する経営が注目されるようになった。経営の視点が、会計上の利益確保から真の儲けであるキャッシュフローの確保へ転換したといえるだおろう。2000年からは財務諸表におけるキャッシュフローの開示も始まり、経営の場でキャッシュフローが論じられるようになった。キャッシュフローという概念は、日本企業経営に定着してきたようである。

 一方、企業価値キャッシュフローほどにはいまだ定着していないように思われる。これは、英語の“Value”が定量的な意味合いをもつのに対して、その訳語として一般的に用いられる日本語の“価値”に定性的な意味合いが強いからであろうか。企業価値を向上する重要性に異を唱える方はいないが、企業価値を定量的に測って戦略を策定し、大胆な価値向上を目指すというところまで至っていないのではないか。

 確かに、この10年で経験した、米国に端を発する日本でいうところのリーマンショックおよび欧州のソブリン危機という2度の経済金融危機においては、企業価値の1つのものさしになるべき株価が、変動が大きすぎて有意義な指標となり得なかったのは事実である。それでも現在、日本企業が保有する現預金や短期保有の有価証券総額が、日本企業年間投資総額約6倍にものぼるまでになっているのは、資金調達に困難を極める状況でないことを考えると、異常といってよいのではないだろうか。

 日本では今後人口減少し、高齢化が急速に進展して国内市場の成長が見込めない中で、グローバルな市場において企業価値向上させる経営が求められている。ところが、日本ではコーポレートガバナンスの機能がいまだに大変弱い。今後は機関投資家個人投資家からの要求が高まる可能性は大である。株主によって、企業が事業の一部売却について検討を求められることも想定される。

 そうした事態に対応していくためにも、企業価値を大きく向上させる戦略を策定し、それによる実際の企業価値の向上について経営レベルで活発な議論がなされ、日本企業の成長につながることを望みたい。そのための考え方着眼点を、この第6版が提供できれば幸いである。

2016年8月 訳者 マッキンゼー・コーポレート・ファイナンス・グループ 』(太字は筆者)


・日本企業の成長につながる、企業価値を大きく向上させるための戦略策定について、経営レベルで活発な議論がなされるような考え方や着眼点の提供、が本書の目的であるようだ。


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