「俺の考え」(本田宗一郎著、新潮文庫)
戦争前は、いやついこの間までは、資本力があるものが、資本にものをいわせてその地位を保ってきた。それは企業の石頭がよく承知しているとおりである。しかし、今日のように、目まぐるしく進歩する時代においては、独創性、つまりアイデアが資本力にかわって、より重要なものにのし上がってきた。
よいアイデアがなければ、いかに金貨の袋を抱いていても、時代のバスに乗りおくれるのは必定である。
資本がないから事業が思わしくないとの声をよく聞くが、それは資本がないからでなく、アイデアがないからである。
よいアイデアに国境はない。よい製品に国境はない。
そしてそれらは、過去の甘い夢にとらわれない 、不要な経験からまったく自由な、若い人たちの頭脳から生み出されるのである。
私の社の「社是」の第一条はこうだ。
「常に夢と若さを保つこと」
徳川家康も、孫子の兵法もまったく無縁なのである。
>>夢と若さを保つにはアイデアが必要だ
「やりたいことをやれ」(本田宗一郎著、PHP研究所)
日本人は、失敗ということを恐れすぎるようである。何かやろうと思って失敗するより、じっとしていたほうが賢明だという考え方が、身についている。完全にロスである失敗も、向上の芽生えである失敗も、区別する合理的な見識がない。失敗すれば、「馬鹿なやつだ」「出すぎた真似をするからさ」と冷たい嘲笑と非難を買う。これでは日本人のたあらかたが虚勢され、「コトナカレ主義」にちぢこまるのも不思議ではない。
しかし、これではいけないのである。なんとかして、日本人の根性からこんな無気力な考えを追放しなければいけないのだ。どだい、失敗を恐れて何もしないなんて人間は、最低なのである。
>>失敗を恐れて何もしない人間にはなるまい
「やりたいことをやれ」(本田宗一郎著、PHP研究所)より
日本人は、とくに自分の会社のためには一生懸命に働くけど、国全体や個人の幸せのことを余り考えない。個人個人が大きな集団や会社の影にかくれてしまって、本当に赤裸々な人間性を出して、感動しながら仕事をやるということがない。社員がみな自分の幸せを求めて働けば、おのずとその会社は伸びていくはずです。
>>「自分の幸せ」って、いったい何だったんだろう。