東大生集団わいせつ事件のフィクション?
【 姫野カオルコ:彼女は頭が悪いから 】
以下は、「彼女は頭が悪いから」(姫野カオルコ著、文藝春秋)からの一部抜粋。
美咲の示談の条件は、一つだった。
國枝の母や、和久田の父母が、「そんなことでいいの?」と言い、つばさの兄が「お一人好し」と言った条件とは、東大を自主退学すること。
國枝と和久田にとっては、実に「そんなことでいいの」だった。
國枝も和久田も大学院生であり、すでに東大は卒業している。自主退学したところで「東大卒」の肩書はそのままだ。
災難。
譲治とつばさも、事件をそうとらえていた。譲治の父母も、つばさの父母も。
逮捕は災難。訴えられたのも災難。
そう思うからこそ、美咲の示談条件を拒んだ。
示談に応じた者も、5人の東大生と、その父母全員に通ずるのは、
「強姦しようとか、輪姦しようとか、そんな気持ちは皆無だった。ふざけただけ。痛飲により、ふざけの度合いが過ぎた。こんなことで逮捕されるのは遺憾だ」
という思いである。
「これが罪になるというのであれば、そんなんでしょう」
と、勾留時にエノキが警察に語ったのは、開き直りではないのだ。
強姦目的は皆無だから逮捕は遺憾だ。女子学生の洋服を脱がせて全裸にした。背中や尻を平手で叩いた。罪になるというのであれば、これなのだろう。罪名が強制わいせつだというからそうなのだろう。法律も、強姦未遂ではないとみなしたのだ。叩いた譲治とつばさには暴行罪が加わり、美咲にはわずかにしかふれていないエノキには暴行罪は加わらなかった。
譲治は有罪となった。懲役2年、執行猶予4年の判決である。のちに東大は退学処分となる。
譲治、つばさに比するといくぶん軽く、懲役1年、執行猶予3年の判決だった。エノキものち東大は退学処分となる。
「とくに被告人は、被害者から好意を寄せられ、被告人に対して従順であることをいいことに、被害者を現場に連れていったのであり、他の被告人の行為を制止しようとするどころか煽りたてていた。被告人中、最も悪質といえよう。学生の悪ふざけと評価することは、とうていできない」
と断罪し、有罪となった。懲役2年、執行猶予4年。2016年10月5日の判決だった。こののち、つばさも東京大学院を退学処分となる。
一方、以下は「姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』について語ろう!【インスタ読書会】」(2018.11.20)からの一部抜粋。
https://mi-mollet.com/articles/-/14611
この作品は2016年に起こった実際の事件「東大生集団わいせつ事件」を元にしたフィクションです。東大生5人が酒に酔った同年代の女の子を裸にし、カップラーメンをこぼすなどといった恥辱的でわいせつな行為をしたとして逮捕され、その非道な行為に世間の注目が集まりました。小説では、実際の事件をモチーフにしながら、あくまでフィクションとして、被害者になった神立美咲ちゃんと加害者の一人つばさ君を中心に、その成長過程から事件、事件後を描いています。
バタやん:ホモソーシャルもこの小説の大事なキーワードですね。一人ずつなら悪人ではないのに、集団になることで役割を演じ合う。ある種、性欲よりも男子社会の中でウケたい気持ちが優ってる。
島田:男性から見ても、お前ら何やってるんだよとモヤモヤはする。なんだけど、このくらいの年齢でこの場にいたら「やめろよ」とはなかなか言えないでしょうね。黙って出て行くとかはあるでしょうが。
<感想>
本書は「東大生集団わいせつ事件」を元にしたフィクション。
東大生に関係なく、集団の中にあっても人としてどうあるべきかが問われた作品のように思われた。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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