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信越化学は株主を意識した取組を継続?


【 信越化学工業:配当性向、総還元性向、ROIC 】

 


 2022/7/28、日経電子版に、「信越化、今期純利益18%増 2期連続最高 住宅用塩ビ好調」記事が掲載された。
https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGKKZO62957400X20C22A7DTA000&scode=4063

 

 以下は、一部抜粋。

 


売上高は23%増の2兆5500億円、営業利益は22%増の8250億円を見込む。年間配当は前期比50円増の450円と、8期連続で増配する。さらに1000億円を上限とする自社株買いで発行済み株式数の2.2%に相当する900万株を取得し、全株を消却する。

 


業績予想および配当予想に関するお知らせ
https://www.shinetsu.co.jp/wp-content/uploads/2022/07/20220727J1.pdf

 


【配当性向】

 31.41%(450円÷1,432.59円)

 


【総還元性向】

 48.36%((a×b+c)÷d)

a:発行済株式数(除自己株式) 409,736千株
b:配当金 450円
c:自己株式取得 100,000百万円
d:当期純利益 588,000百万円

 


斉藤社長メッセージ(一部抜粋)
https://www.shinetsu.co.jp/jp/ir/policy


当社は2022年3月期(2021年度)に過去最高の業績を達成しました。

ROICは再び20%を回復し、ROEも目安とされる水準を上回りました。この実績を踏まえ、当社は年間配当金を一株当たり400円としました。これは当社の歴史の中で最も高い配当金であり、過去6年間の増加率は年平均で24%です。

増配に加えて1,000億円規模の自己株式の取得も発表しました。この二つを合わせた株主の皆さまへの総還元は約2,660億円です。これは当社の業績と強固な財務基盤にまさに裏打ちされたものです。

 


【ROIC】(信越化学バージョン)
https://www.shinetsu.co.jp/jp/ir/highlight/

 25.35%((a×(1-b)÷(c+d-e)

 a:営業利益 825,000百万円
 b:実効税率 34.21%
 c:株主資本 3,206,210百万円
 d:有利子負債 30,996百万円
 e:手元資金 1,096,908百万円

 


<感想>
 上記は、信越化学工業の各種指標。
 配当性向は30%超、総還元性向は50%近くと、株主を意識した姿勢が好感できる。

 

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株主還元は株主資本配当率3%?

 

【 配当性向、総還元性向 】

 


 2022年7月27日、日経新聞にキヤノンとオムロンの6月時点の決算内容が掲載された。

 以下は一部抜粋と配当性向等の数値について。

 


キヤノン、今期純利益22%増 上方修正、半導体装置など好調 年間配当20円上積み
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62924950W2A720C2DTA000/

 

御手洗会長は成長を追い風に「配当回復に向けて踏み出した」と強調する。前期に続き配当予想の上方修正を決めた。年間配当を120円(前期は100円)と20円引き上げる。20年12月期にコロナ影響で80円に半減していたが、業績の好転を受けて過去最高水準となる160円にまで早期に戻したい考えを示す。


< 配当性向 >
47.46%(120円÷252.86円)


< 株主還元についての考え方は? >
https://global.canon/ja/ir/individual/detail/08.html
「共生」の理念のもと、永続的な企業価値向上を目指し、株主の皆さまに貢献していきます。直接的な株主還元としては配当を中心に考えています。

 


オムロン、純利益60%減 4~6月、上海工場停止で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF261HG0W2A720C2000000/ 

 

オムロンは26日、200億円を上限とする自社株買いの実施も発表した。取得する株式は最大330万株で、自己株式を除く発行済み株式の1.7%に当たる。取得期間は7月27日~23年3月31日まで。23年3月期の年間配当予想は98円で据え置いた。


< 配当性向 >
30.99%(98円÷316.28円)


< 総還元性向 >
62.81%((a×b+c)÷d)
a:発行済株式数(除自己株式) 199,701千株
b:配当金 98円
c:自己株式取得 20,000百万円
d:当期純利益 63,000百万円


< 株主還元方針 >
https://www.omron.com/jp/ja/ir/irlib/pdfs/20220309_presentation_script_j.pdf、P57

1.「株主資本配当率(DOE)3%程度」を基準とする

2.長期にわたり留保された余剰資金については、機動的に自己株式の買入れなどを実施

 2021/3期:3.0%
 2022/3時:2.9%

 


<感想>
 上記は、キヤノンとオムロンの株主還元方針。
 会社の置かれたステージにより、各社各様の方針が設定されているものと思われる。

 

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制度ロックアップ違反による株式の売却?

 

【 制度ロックアップと任意ロックアップ 】

 


 2022/7/22、坪田ラボが、「第三者割当により割り当てられた株式の譲渡に関する報告書」の提出に関するお知らせ、を発表した。
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS82482/d5a95e3d/e61a/4015/bed8/5b80a56fcc7e/140120220722503258.pdf

 

 以下は、一部抜粋。

 


1.概要

 上場申請直前事業年度以降に行った第三者割当等により株式の割当てを受けた者は、株式上場日(2022年6月23日)以後6ヶ月を経過する日までの間は、当社株式を第三者に譲渡しない 旨、また当社株式を第三者に譲渡する場合は事前に当社に書面にて通知をする必要がある旨等の確約(いわゆる、制度ロックアップ)がされておりました。

 

 しかしながら、当社株主であった学校法人慶應義塾(以下、慶應義塾といいます。)との打ち合わせの際に、慶應義塾が譲渡制限期間内に下記の通り所有株式の全部を市場で売却していたことが判明致しました。

 

 そのため、当該事項判明後、当社は慶應義塾及びSMBC日興証券株式会社(以下、日興証券といいます。)と事実関係の詳細な確認等を行ないました。この詳細確認ができましたので、 本日付けで、有価証券上場規程及び有価証券上場規程施行規則に基づき、東証に対して「第三者割当により割り当てられた株式の譲渡に関する報告書」を提出致しました。


確認の結果、以下の事項が判明しました。

 

・当社は「継続保有確約書の締結先に対して、制度ロックアップを再周知する様に」という主旨の通知を日本取引所自主規制法人の上場審査部から4月15日に受領したものの、この対応を失念していたこと。

 

・上記もあって、慶應義塾が確約書におけるロックアップ条項の存在を認識ないままになっていたこと。

 

・日興証券は慶應義塾が所有する当社株式の口座受入れに当たり、当該株式が制度ロックアップの対象であることの確認が不十分であったことから、当該株式に売却規制登録の社内手続きを採ることの確認が漏れていたこと。

 

・このため慶應義塾は売却前に日興証券に対してロックアップの対象であるかについて問い合わせを行ったものの、日興証券は当該規制の対象ではない旨の回答を行っていたこと。

 

・なお慶應義塾は決して制度ロックアップ対象であることを把握したうえでの故意の売却でなく、あくまで制度ロックアップについて認識もれであったこと。

 


< 制度ロックアップ >

有価証券上場規程施行規則(東京証券取引所)
https://jpx-gr.info/rule/tosho_regu_201305070041001.html

 

第3款 上場前の第三者割当等による募集株式の割当て等
(第三者割当等による募集株式の割当てに関する規制)

 

第268条
 新規上場申請者が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して1年前より後において、第三者割当等による募集株式の割当てを行っている場合には、当該新規上場申請者は、割当てを受けた者との間で、次の各号に掲げる事項について確約を行うものとする。

 

(1)割当てを受けた者は、割当てを受けた株式を、原則として、割当てを受けた日から上場日以後6か月間を経過する日まで所有すること。この場合において、割当株式について株式分割、株式無償割当て、新株予約権無償割当て又は他の種類の株式若しくは新株予約権への転換が行われたときには、当該株式分割、株式無償割当て、新株予約権無償割当て又は他の種類の株式若しくは新株予約権への転換により取得した株式又は新株予約権についても同日まで所有すること。

 


< 任意ロックアップ >

東京証券取引所
新規上場申請者に係る各種説明資料の記載項目について
https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/documents/nlsgeu000005n6e4-att/16_growth.pdf

 

(13) ロックアップ等又は株主間契約の状況
上場申請日(既上場会社においては直前の基準日等)における大株主(上位15名程度)が、申請会社、 申請会社役員又は他の大株主との間で、申請会社の株式の譲渡(ロックアップ、アーンアウト等)又は申請会社の業務運営(取締役候補の選定、株主に対する事前承認等)に関して、協定又は契約を結んでいる若しくは結ぶ見込みである場合には、その内容(締結年月、契約の当事者、契約の概要等) を記載してください。

 


<感想>
 本件は、三者(坪田ラボ:株式上場会社、慶應義塾:投資家、日興:主幹事証券)三様のミスが重なった結果、制度ロックアップの譲渡制限期間内に、所有株式の全部を市場で売却してしまった事例。
 本件を他山の石として、同じようなミスが発生しないよう、努めて参りたい。

 

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HISがハウステンボスを売却?

 

【 HIS:ハウステンボスを売却 】

 

 

 2022/7/21、日経電子版に、「HIS、財務悪化で窮余の資金捻出 ハウステンボス売却」記事が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC212J60R20C22A7000000/

 

 以下は、全体の概要。

 

 

< HISの社歴> 

1980年 海外航空券販売 開始

2010年 ハウステンボス(92年開業、03年破綻) 子会社化

 

2014年 ユーロ円CB発行(200億円)

2016年 電力小売事業に参入

 

2017年 ユーロ円CB発行(100億円)

2021年 第三者割当増資(PAX:総額50億円)     

     新株予約権発行(PAX・澤田氏宛て。行使率0%。行使時総額は約92億円)     

     子会社で「Go Toトラベル」給付金不正受給発覚

 

2022年 澤田秀雄氏 会長兼社長CEO ⇒ 会長CEOへ     

     電力小売事業売却

 

1)一時は連結営業利益の半分近くを稼ぐ主力事業のひとつに育った

 

2)コロナ禍以降は訪日外国人(インバウンド)需要の蒸発などにより来場者数が減少 ⇒ 21年10月期のハウステンボスを含むテーマパーク事業は35億円の営業赤字(21年11月~22年4月期には1億円の営業黒字に回復)

 

 

<感想> 

 旅行代理店業とハウステンボスは、コロナ禍で旅行需要が減退すれば、同じように、売上・収益が落ち込むというリスクを抱えている。

 リスクヘッジのためには、本業と親和性がありながらも、リスクの方向性が違う事業を並列的に営むことが必要なように思われる。

 


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株主より社員重視のMBO?

 

【 MBOの目的:株主重視より社員への配分 】

 


 2022/7/14、日経電子版に、『コマニーがMBO 「報いは株主より社員に」塚本会長』が、掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC126OB0S2A710C2000000/

 以下は、一部抜粋。

 


――上場のメリットはなくなりましたか。

「地方の企業でもあり、上場は知名度や信用の向上といったメリットがあった。しかし、情報開示など難しい要請が出てきた。監査法人への報酬など、上場維持のコストが年間数千万円かかる。デメリットがメリットを上回っている」


「コマニーは創業時から社員が一番で、社員の士気が上がれば顧客や取引先、そして株主に報いることができると考えてきた。上場して株主に配慮すると、四半期決算を意識して短期で利益を出さないといけないし、株主還元も必要となる。上場廃止後は株主ではなく社員に報いる。(年間)600万円前後の平均給与を700万円にするのが目標だ」


四半期決算の開示が始まった2000年代前半頃から株主重視の風潮が強まり、社員への配分が薄くなったとの反省があるようだ。

 


<感想>
 本件のように、上場によるメリットよりデメリットの方が大きいと判断された場合、MBOを選択するケースも増えるものと思われる。

 

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ストック・オプション発行後に費用を計上?


【 ストック・オプションの仕訳 】

 


 以下は、ストック・オプション(新株予約権)の仕訳について。

参考Webサイト)
https://www.keihi.com/column/19966/

 


<前提>
対象株式数:1,000千株
公正価値:90円/株(時価の30%)
株価:300円/株
年限:5年
発行時期:2022/4
行使率:0%

 

2023/3期(単位:1,000千円)
株主報酬費用 90/新株予約権 90
以降毎期、株主報酬費用18を期間按分して計上

2028/3期
新株予約権 90/新株予約権戻入益 90

 


<感想>
 ストック・オプション導入時には、会計処理も考慮して導入することが必要かと思われる。

 

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役員給与は期中原則変更不可?

 

【 役員に対する給与 】

 


 添付は、国税庁の「役員に対する給与」に関するタックスアンサー。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm

 以下は一部抜粋。

 


No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)

 

定期同額給与とは、次に掲げる給与です。

 

イ その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月(確定申告書の提出期限の特例に係る税務署長の指定を受けた場合にはその指定に係る月数に2を加えた月数)を経過する日(以下「3月経過日等」といいます。)まで(継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定で、その改訂が3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合にはその改訂の時期まで)にされる定期給与の額の改定

 


ご参考1)役員給与に関するQ&A(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf

[Q2] 
(定期給与を株主総会の翌月分から増額する場合の取扱い)

 

定時株主総会において翌職務執行期間に係る給与の額を定めたものであると思われますが、6月25日から開始する翌職務執行期間に係る最初の給与の支給時期を、定時株主総会直後に到来する6月30日ではなく、その翌月の7月31日であるとする定めも一般的と考えられます。

 

(注)本事例は、役員給与の額を株主総会で決議することとしていますが、例えば、株主総会で役員給与の支給限度額を定め、各人別の支給額は取締役会で決議するなど、会社法等の法令の規定に従って役員給与の額を決議するものは、この事例における株主総会で の決議と同様に取り扱って差し支えありませんので、ご留意ください。

 

 

ご参考2)役員報酬の変更時期に注意!原則、期首から3ヶ月以内のみ可能

https://ashiyakaikei.com/directors-remuneration-change/

 


<感想>
 本件は、役員給与についての国税庁の見解を示したもの。
 会社の利益操縦にも繋がるため、期中の役員給与の変更は原則不可能として、損金算入の制限を設けたものと理解した。

 

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従業員有志による反対意見表明?


【 株主提案に軍配 】

 


 2022/6/23、日経電子版に、「FFJ役員選任、株主提案に軍配 会社案は否決」の記事が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC23BCM0T20C22A6000000/

 以下は、一部抜粋。

 


スポーツジム「エニタイムフィットネス」を運営するファストフィットネスジャパン(FFJ)が23日に開いた定時株主総会で、大株主である大熊章会長らが株主提案として出した取締役選任案が可決された。一方、会社提案の取締役選任案は否決された。株主提案の取締役候補には株主で総会前まで取締役(監査等委員)だった高嶋淳氏が入っており、会社提案には入っていなかった。

 

会社提案は大熊会長が出席する4月の取締役会で決議された。だが大熊会長は高嶋氏らとの連名で株主提案を提出した。大熊会長、大熊会長が代表を務める会社、高嶋氏の3者が保有する株式は議決権ベースで53.82%だった。これに対し会社側は取締役会として反対表明していた。

 

総会前まで社外取締役だった松村はるみ氏は会社提案にも株主提案にも社外取締役候補として入っていたが、株主提案が可決されたことを受けて就任を辞退した。

 


<会社提案>
第1号議案 定款一部変更の件

第2号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く)5名選任の件

第3号議案 監査等委員である取締役3名選任の件


<株主提案>
第4号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く)6名選任の件

第5号議案 監査等委員である取締役2名選任の件

 


臨時報告書(賛成割合)

会社提案
第1号議案 可決(96.15%)
第2号議案 否決(19.22〜26.57%)
第3号議案 否決(25.36〜26.59%)

株主提案
第4号議案 可決(73.77〜79.69%)
第5号議案 可決(73.78%)

 


ご参考1)2022/05/23 当社従業員有志による株主提案に対する反対意見表明に関するお知らせ
https://fastfitnessjapan.jp/news/ne220523/

当社本部長全員及び部長並びに室長の18名に対し、株主提案と当社取締役会によって決定された会社案のどちらに賛成か、無記名による投票を実施

会社案に賛成 : 16名 株主提案に賛成: 0名 棄権 :2名

 


ご参考2)2022/6/27 支配株主等に関する事項について
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08582/38f46432/864b/4918/ad8f/b34bed720c5a/140120220627588641.pdf

支配株主である大熊章(当社取締役会長)の議決権所有割合:直接所有分 10.69%+合算対象分 48.38%=59.07%

 


<感想>
 議決権ベースで59%超ある株主提案。会社側提案と株主提案が相反する議案については、株主提案の可決が自明な中、総会前に、会社側が、株主提案に歩み寄ることができなかったのか。
 従業員有志による株主提案に対する反対意見表明については、個人的に無意味であるように思われる。

 

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