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「社会の真実の見つけかた」



「社会の真実の見つけかた」(堤未果著、岩波書店)より
2011年2月18日第1刷発行


  あとがき


 私が苦しい時そっと目を閉じて向かうのは、記憶のなかの教室だ。

 生徒が疑問を口にすると、先生たちが嬉しそうににっこり笑う。答えをくれる代わりに、その問を気のすむまで追いかけなさいと応援される。友だち同士の喧嘩やいじめ、恋愛に家族、将来の夢・・・起こることに善悪はない、逃げずに向き合い、深く考え、自分だけの結論を出すプロセスにこそ価値があると教えられた。

 わかったふりをしないこと。どんな結果になってもよし、先生たちは○も×もつけなかった。どのみち体験から学んだことしか残らないのだから、失敗しないよう親や先生が手を出しても無駄なのだ。やってごらん、見守っているから。そうやって一つひとつ自分で手に入れたものは、いつしか本物の自信にかわってゆく。


 教育が人間を育てる種まきだとしたら、すぐに結果が出なくても、その子の中にある善きものが機が熟し花開くのを信じて待つ余裕を、先生や親たちが持てるかどうか。その環境を整えることが、国や行政の役目だろう。競争で追いたて、数字で切り捨て、市民をモノのようにバラバラにする社会では、種は枯れてしまう。


>>自ら、逃げずに向き合い、深く考え、結論を出すプロセスの価値の分かる子どもたちを育ててみたい

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