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迅速かつ的確な有事対応?

 

【 有事対応の重要性 】

 


 2024/5/30、監査懇話会の監査技術ゼミ(東京霞ヶ関法律事務所 弁護士 遠藤 元一先生)に参加した。

 以下は、資料からの一部抜粋。

 


テーマ:いわゆる経営判断原則マターに監査役等はどのような監査を行うべきか〜「守り」と「攻め」のガバナンスを担う監査役等のポジション向上のため

 


有事での取締役・監査役の対応 クライシスマネジメント

 

◆有事対応の重要性ーコーポレートブランディング戦略、レピュテーション棄損リスクの低減

 

・不祥事が生じると、企業の信用・レピュテーションは加速度的に低下し、回復までの期間は長期化し、その間、企業価値は損なわれ続ける

 

・有事対応の要諦―できる限り早期にレピュテーションの低下に歯止めをかけ、回復に向けて場面転換を図る措置を講じる

 

・場面転換は、ステークホルダー(被害者、一般消費者、取引先、金融機関、行政当局、マスコミ等)への積極的情報開示とコミュニケーション戦略の策定・実行等を自らの主体的なアクションで実現する必要あり

 

・「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」を手がかりに


企業活動において自社(グループ会社を含む)に関わる不祥事又はその疑義を把握した場合、当該企業は必要十分な調査により事実関係や原因を解明し、その結果をもとに再発防止を図ることを通じて、自浄作用を発揮する、その際に、次に4つのプリンシプルの考え方のもとに行動・対処する。

 

1.不祥事の根本的な原因の解明
 不祥事の原因究明に当たっては、必要十分な調査範囲を設定の上、表面的な現象や因果関係の列挙にとどまることなく、その背景等を明らかにしつつ事実認定を確実に行い、根本的な原因を解明するよう努める。そのために、必要十分な調査が尽くされるよう、最適な調査体制を構築するとともに、社内体制についても適切な調査環境の整備に努める。その際、独立役員を含め適格な者が率先して自浄作用の発揮に努める。

 


2.第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保
 内部統制の有効性や経営陣の信頼性に相当の疑義が生じている場合、当該企業の企業価値の毀損度合いが大きい場合、複雑な事案あるいは社会的影響が重大な事案である場合などには、調査の客観性・中立性・専門性を確保するため、第三者委員会の設置が有力な選択肢となる。
 そのような趣旨から、第三者委員会を設置する際には、委員の選定プロセスを含め、その独立性・中立性・専門性を確保するために、十分な配慮を行う。また、第三者委員会という形式をもって、安易で不十分な調査に、客観性・中立性の装いを持たせるような事態を招かないよう留意する。

 


3.実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行
 再発防止策は、根本的な原因に即した実効性の高い方策とし、迅速かつ着実に実行する。この際、組織の変更や社内規則の改訂等にとどまらず、再発防止策の本旨が日々の業務運営等に具体的に反映されることが重要であり、その目的に沿って運用され、定着しているかを十分に検証する。

 


4.迅速かつ的確な情報開示
 不祥事に関する情報開示は、その必要に即し、把握の段階から再発防止策実施の段階に至るまで迅速かつ的確に行う。この際、経緯や事案の内容、会社の見解等を丁寧に説明するなど、透明性の確保に努める。

 


<感想>
有事の際の要諦は「迅速かつ的確に」行動・対処することであろう。しっかりと肝に銘じておきたい。

 

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監査役の任務懈怠責任?

 

【 監査役の責任 】

 


 月刊監査役 No.757(2023/12)に、以下内容が掲載されていた。

 


<監査役等の責任に関する主な裁判例>
(1)事件名、(2)結論、(3)事案・判示事項

 

1.会社に対する任務懈怠責任(会社法上の責任)に関する裁判例

 

(1)No.1 セイクレスト事件
(2)任務懈怠責任を肯定
(3)社外監査役に、取締役会に対して1)内部統制システムを構築するよう助言・勧告すべき義務、2)代表取締役を解職するよう助言・勧告すべき義務を認め、その違反を認定した。

 

(1)No.2 ダスキン事件
(2)任務懈怠責任を肯定
(3)不祥事の隠蔽を方策として執るという取締役の明らかな任務懈怠行為に対する監査を怠ったとして、監査役に善管注意義務違反を認定した。

 

(1)No.3 NFKホールディングス事件
(2)任務懈怠責任を否定
(3)監査役が、その判断に当たって専門家の知見を信頼した場合には、当該専門家の能力を超えると疑われるような事情があった場合を除き、善管注意義務に反しないとした

 


2.第三者に対する責任(金商法上の責任)に関する裁判例

 

(1)No.4 エフオーアイ事件
(2)対第三者責任を肯定
(3)監査役の「相当な注意」の判断の際に、1)監査役の会社の不正行為に対する認識や、2)監査役の取締役会や戦略会議への具体的な出席状況などを考慮した上で、相当な注意を用いたとは認めがたいとして、第三者に対する責任を認めた。

 

(1)No.5 アーバンコーポ レイション事件
(2)対第三者責任を肯定
(3)臨時報告書の虚偽記載に関する監査役の「相当な注意」の判断の際に、問題となった取締役会への出席や準備の有無を考慮した上で、出席した監査役については審議を通じて監視を行うべき立場にあったとして注意義務違反を認めた。

 

(1)No.6 ニイウスコー事件
(2)対第三者責任を否定
(3)監査役の「相当な注意」を用いたかの判断の際に、職務分担及び内部統制システムが適正である限り、それらに従って業務を行えば相当な注意を用いたといえる旨判断した。


<感想>
監査役の2大責任は、1)会社法上の任務懈怠責任(取締役会宛て「プロアクティブな行動」が必要)、2)金商法上の第三者に対する責任(「相当な注意」が必要)であるものと思われる。

 

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アクティビスト対応に関する監査役監査?


【 アクティビストへの対応 】

 


 月刊監査役No.757(2023/12)に、「アクティビストへの対応と監査役としての留意点」(野澤大和 西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 弁護士)が掲載されていた。

 

 以下は、監査役の留意点部分の一部抜粋。

 


< アクティビストへの対応と監査役としての留意点 >

【 監査役の留意点 】
 監査役監査の対象:取締役の職務の執行(会社法381条1項)
 監査役監査の範囲については、取締役の職務執行が適法であるかを監査すること(適法性監査)に限定され、経営効率の観点からの職務執行の妥当性には及ばないと解するのが通説であるが、取締役の職執行が著しく不当であれば、善管注意義務違反となって適法性の問題となることから、監査役監査の範囲が適法性監査に限定される否かを形式的に論じることには余り意味がなく、監査役の個々の権限行使に応じて判断せざるを得ないと考えられる。

 


< 監査役が留意すべき事項(アクティビストから要求や提案があった場合)>

 

・アクティビストからの要求や提案に対する取締役の対応をモニタリングすることを通じて、そのプロセスや手続をチェックすることが重要
例1)アクティビストから株主提案を受けた場合:1)適法性の確認をしているか、2)反対意見について取締役会で審議されているか等を確認

 


例2)監査役自身(特に社外監査役)が面談に応じる場合
・アクティビストとの面談における一般的な留意事項(1)未公表の重要事実は伝えない、2)特定の事項や期限のコミットメントはしない等)を踏まえつつ、監査役に期待されている役割に照らして対応する必要がある

 


例3)監査役の選解任議案に係る株主提案
・当該株主提案が可決された場合に実効的な監査が可能であるか等について検討の上、取締役に対して意見を述べることが考えられる

 


・アクティビストの要求事項や手法を参考に自社を分析することで、アクティビストが影響力を行使しやすい事項をあらかじめ洗い出す
例4)当該事項に関し改善の余地があると考える場合:企業自身が市場から見える形で改善策を積極的に検討・実行していくことが重要

 


<感想>
日本においても、アクティビスト(物言う株主)の活動が活発化しているため、彼らの要求や提案に対する取締役の対応プロセスや手続について、監査役監査を通じたチェックがますます重要になってゆくものと思われる。

 

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