「さらば外務省!」
「さらば外務省!私は小泉首相と売国官僚を許さない」(天木直人著、講談社)より
2003年10月
憲法第九条と天皇の戦争責任について考えよう
長らく駐日米国大使を務めていたマイク・マンスフィールドは、「日本経済新聞」の<私の履歴書>(99年9月)の中で、次のような注目すべき発言をしている。
<日本から朝鮮半島に回した米軍の穴を埋めるため、吉田茂首相に7万5000人の警察予備隊の創設を命令した・・・・・・これが今の自衛隊になるわけだが、マッカーサーは連合軍総司令部(GHQ)が作った「米国製」の日本国憲法第九条をう回したともいえる>
<戦争放棄を定めた日本国憲法第九条は、マッカーサーの直接の指示を受けてGHQの民政局のチャールズ・ケーディス次長を中心に作った条項で、どこから見ても米国製だ。日本に戦争を放棄させ、安全保障を米国頼みにさせたのは米国である。米国人はこの条項を批判すべきではない。今後どうすべきかは、日本の国民と国会が判断すべき問題だ>
マンスフィールド大使といえば、日本でも最も尊敬され慕われた大使である。その大使の口からこれほど明確に日本国憲法が米国主導で作られたこと、そしてその後まもなく米国が対日政策を大転換させ、当初の憲法から逸脱して違憲的存在である自衛隊を日本に作らせたことが語られたのは衝撃的である。
占領下に米国の手によって起草された日本国憲法は、その直後に冷戦が表面化したため、起草者である米国自らの手で拡大解釈され、平和憲法の趣旨を大きく逸脱させられてしまった。しかもその後の国際情勢の変化と米国の世界戦略の変化により、憲法第九条の拡大解釈は歯止めなく進み、もはや憲法第九条は完全に形骸化してしまった。このような状態を放置しておくことは、法治国家としての日本をモラルハザードに追いこむばかりか、米国の軍事戦略に沿った日米同盟体制への果てしなき傾斜を、黙って許すことになる。
日本政府は、アジア諸国およびその国民に対して明確な形で謝罪をして、戦争責任のケリをつけるべきである。しかしその前に、天皇陛下万歳と叫んで戦争の犠牲になっていった多くの国民、敗戦の玉音放送を聞いてなお皇居に向かって土下座し涙を流した日本国民に対し、天皇陛下と日本政府は謝罪すべきなのだ。そうすることによって初めて、日本は国民をあげてアジア諸国に謝罪できるのである。
戦争を知らない世代が日本を動かすようになった今こそ、「天皇の戦争責任」という問題を皆で考え、「あの戦争」を風化させない努力をする必要があるのではないだろうか。
>>そろそろ国として戦争責任を明確にすべき時にきたようだ