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「企業のリアル」⑧



「企業のリアル」(田原総一朗×若手起業家、プレジデント社)より


  innovation社長  岡崎富夢

1977年、山口県下関市生まれ。99年下関市立大学経済学部卒業、同年東邦レオ入社。2003年東京支社東京戦略室室長、07年建築関連事業部副部長、09年取締医薬事業本部長などを経て、10年木造用屋上庭園「プラスワンリビング」事業を立ち上げ、12年から現職。同年から屋上庭園付き企画住宅「プラスワンリビングハウス」を販売。

 日本ではまだ珍しい木造住宅の屋上庭園を手がける会社がある。株式会社innovation。岡崎富夢社長が、「住宅業界にイノベーションを起こしたい」という思いで名づけた社名だ。岡崎氏は、自社の屋上庭園を“住宅業界のiPhone”と位置づける。その意味するところとは――。


  目指すは
  住宅業界のiPhone


  なぜ売価を5分の1にできたのか


岡崎
  木造住宅の屋上庭園は普通、500万円くらいかかります。それを100万円で実現できるようにしました。

 まず一つが、オーダーメードからレディメードへの転換です。

 次に見直したのが施工です。オーダーメードのときは、屋上庭園を一つやるのに15人ぐらい必要だったんですよ。これを2人でできるようにしました。

 現場で簡単に施工できるように、まずハーフメードぐらいまで仕掛けます。さらに荷揚げの方法から施工まで、どうやったら簡単にできるのかということをビデオに撮り、パートナーの工務店に見てもらっています。

 もう一つあります。販売システムを変えたのです。これまでは、僕ら資材メーカーから工務店に売るまでに建材商社が3~4社入っていました。僕たちは、これを工務店への直販にしました。木造業界では直販しているメーカーは、僕らのほかにはほとんどないはずです。これによって、100万円で売って利益が出るくらいのところにまで下げられました。

 僕は人が集まるきっかけを屋上庭園が提供することによって日本を明るくすることができると思うし、お客さんもそういう使い方をしてくれている人が多いです。

 売り始めて3年で、屋上だけで延べ3000棟です。僕たちは屋上庭園付き住宅「プラスワンリビングハウス」も手がけていて、そちらはいま、延べ300棟。おかげさまで受注は伸びていて、いま屋上のみは月150棟、住宅は月50棟です。

 住宅も屋上庭園と同じ手法でコストダウンしています。普通なら買うと2500万~3000万円くらいする家を、1500万円で売っています。

 僕は「住宅業界のiPhone」をつくりたいんです。iPhoneに使われているCPUやガラスをオーダーして一品ずつつくったら、きっと何十万円もするはずです。だけどアップルは、「これが最高です」という仕様を決めて、何千万台規模でつくることでコストを下げ、多くの人が手にできるようにした。住宅業界でも同じことができるはずだと思って挑戦しているところです。


  交渉のコツは「信用されたいと思わないこと」


岡崎
  僕たちのビジネスって、100人に1人ぐらいしか信じて買ってくれないと思うんです。すべての人に信用されるのは最初から無理なので、本当に心の底から思っていることだけを伝えて、わかってもらえる人だけにわかってもらえたらいいかと。

 お客さんはだいたい僕と同世代なので、歴史ある会社よりも、若い社長がやっている新しい会社のほうが、イノベーションということで共感性を得られるんじゃないかと。僕自身、親会社の取締役をやるより、子会社の社長をしていたほうが経営リテラシーも上がるという狙いもあります。


対談を終えて

  「危機こそチャンス」の言葉を体現した人物

 岡崎さんの「僕は住宅業界のiPhoneをつくりたい」という夢も印象に残った。若い力がそれぞれの業界でiPhoneを目指せば、日本はもっとおもしろくなるのではないだろうか。

 岡崎さんが次にどのようなイノベーションで世間を驚かせてくれるのか、非常に楽しみにしている。


>>イノベーションで共感を得ることができたら人生楽しいに違いない


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