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「詭弁論理学」


「詭弁論理学」(野崎昭弘著、中公新書)より
1976年10月25日初版
 

  Ⅲ 詭弁術

  三段論法


 ある前提から結論を、理づめで導こうとするときには、次のような論法がよく使われる。
  (第一段)BはCである。
  (第二段)AはBである。
  (第三段)ゆえに、AはCである。
 
 これを三段論法という。たとえば
  哺乳類は脊椎動物である。
  ネズミは哺乳類である。
  ゆえに、ネズミは脊椎動物である。

 は典型的な三段論法である。ふつう、最初の前提を大前提、次の前提を小前提といい、第三段の(「ゆえに」以下の)主張を結論という。

 三段論法には、主語を入れかえる(CはBである、など)とか、
  肯定文か否定文か
  全称文か特称文か

など、いろいろの変形があり、その組み合わせが256通りもある。


  媒概念曖昧の虚偽

 媒概念とは、ふたつの前提に共通に含まれている概念Bのことである。ここにふた通りの意味で使われる言葉をあてると、いろいろおもしろい(場合によっては深刻な)推論ができる。まず簡単な例を挙げてみよう。

  塩は水にとける。
  あなたがたは、地の塩である。
  ゆえに、あなたがたは水にとける。

 ここで、ふたつの前提に共通の概念「塩」が、別の意味で使われていることに注意しなければならない。第一の前提では、物質的なふつうの塩をさせているし、第二の前提では「役に立つもの」というような比喩的な意味で使われている。役に立つ人間が水にとけるわけはないから、結論はもちろん誤りである。この種の詭弁は、媒概念曖昧の虚偽と呼ばれる。

 もっと軽い例としては、こんなのがある。

  Nothing is better than my wife.
  A penny is better than nothing.
  Hence a penny is better than my wife.


>>媒概念曖昧の虚偽により、三段論法の結論は誤りとなる


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