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「ラブ・チャイルド」



「ラブ・チャイルド 婚外子差別を超えて」(福島瑞穂著、亜紀書房)より
1991年7月25日第1版第1刷発行


 「ラブ・チャイルド」というのは、英語の「非嫡出子」を意味するスラングである。「愛の子ども」とは、いい言葉だと思う。アメリカでも、かつてはこの言葉どおりの楽しい意味ではなかったかもしれない。しかし、現代は、「愛の子ども」として、育てていきたいものである。


  国際的な潮流

 諸外国においても、個人の尊厳を確保する見地から、非嫡出子差別は撤廃されてきました。

(1)古いところでは、フランスにおいて、1793年8月9日のカムバセレス第一草案と、それを一時的に施行した同年11月2日の第三部第一章は、嫡出子と認知された自然子に平等な自然子に平等な相続権を承認していました。

(2)ソビエト連邦共和国では、1917年の政令で、非嫡出子と嫡出子の差別をなくしました。

(3)ワイマール憲法21条は、「私生子に対しても、法律により、その肉体的、精神的及び社会的な発育につき、嫡出子に対すると同一の条件をもたせねばならない」と謳っていました。
 西ドイツにおいては、1969年、家族法1924条以下によって、父である被相続人に嫡出の直系卑属及び妻がない場合には嫡出子と同じ相続分で相続するが、嫡出子または妻があるときは法定相続分に相当する価格の相続代償請求権を取得するものとされました。このように、非嫡出子は嫡出子と同じ相続権を持っています。

(4)デンマークは、1963年、非嫡出子と嫡出子の相続分を平等としました。

(5)スウェーデンも1976年、非嫡出子と嫡出子の相続分を平等としました。

(6)従来コモンローによって「何人の子でもない子」とされていたイギリスにおいて、1969年の家族法改正によって、非嫡出子は嫡出子と平等の相続権が認められました。また、法務委員会は、1979年の報告書において、「非嫡出子という概念そのものを廃止する必要がある」としています。

(7)さらにフランスにおいても1972年1月3日、家族法が改正され、非嫡出子は、姦出子や配偶者との間で制限を受ける場合がありますが、原則として、嫡出子と同等の相続分を有することになりました。

(8)アメリカ合衆国でも1968年に合衆国最高裁判所が、非嫡出子の差別的取扱いを違憲と判決して以来、急速にその平等保護条項に反するとの訴訟が、あいついで提起されました。その結果、社会保障、労働災害保障、親の死亡のさいの損害賠償請求権などについて、嫡出子と非嫡出子を差別することは違憲であるという判例が形成されていきました。
 しかし、判例には紆余曲説があり、必ずしも非嫡出子の地位を完全に平等化するためではなかったために、立法的に解決するべく、1973年統一親子法が制定されています。同法の2条は、「親と子の関係は、両親の婚姻上の地位にかかわらず、平等に認めなければならない」と規定して、非嫡出子に対する差別をなくしています。また、同法は、「すべての子は、出生によって母の嫡出子とする」と規定して、法律上非嫡出子の出生する余地を全くなくしています。

(9)イタリアにおいても、1975年5月19非法律第151号の家族法の改正がなされ、改正法第185条は、「嫡出及び私生の子は平等の分け前でその父および母の財産を相続する」としました。

(10)中華人民共和国においても、非嫡出子は嫡出子と同等です。婚姻法19条は、「非嫡出子は嫡出子と同等の権利を享有し、何人も危害を加えまたは差別してはならない」と規定しています。その享有する同等の権利の中には相続権も含まれています。


>>諸外国は早期に婚外子差別を撤廃してきたのに対して、日本の遅さの背景にはどんな要因があるのかをしっかりか、国民の間で共有化する必要があろう


「結婚と家族」



「結婚と家族――新しい関係に向けて」(福島瑞穂著、岩波新書)より


  「非嫡出子」を生むこと

 事実婚で特別に不都合なことはなかったが、そんな私も子どもが生まれる前後は、あれこれ考えた。

 結婚届なんてたかだか紙切れ一枚じゃないと思っていても、「非嫡出子」、「私生子」というおどろおどろしい言葉にびびってしまう。「子どもが、私立学校に行きたい、親としても行かせたいと思っても、非嫡出子であるということだけでことわられたら損だな、こまるなあ。就職差別や結婚差別にあったらどうしよう。非嫡出子だから結婚しないという考え方にとらわれた男なんて結婚してもロクなことはないから、こっちから願い下げだと私は思うが、娘もやはりそう思うとはかぎらない。逆に、『強い母』を死ぬほど恨むかもしれない。うーん、娘に恨まれたくない。それに、日本のように、激烈な競争社会で、親が、子どもが生まれたときに、わざわざ“ハンデキャップ”を付けるのは賢くないんじゃないか」といろいろな思いが頭をぐるぐるまわる。そして、娘のことを心配しながら、本当のことを言うと、自分自身の自己保身の気持ちがあるということに気づいていたのだ。

 はっきり言うと、私自身が、「未婚の母」として、人から後ろ指さされるのが恐かったのである。


  多様な価値観を保障する法

 家族法も、個人に「正しい生き方」を教えるために存在するのではないと思う。家族法の分野においても、極力個人の自主性・自己決定権を尊重するようにすべきではないだろうか。

 スウェーデンでは、非嫡出子の差別がないだけではなく、非嫡出子という概念自体も廃止している。事実婚カップルの子どもは、1987年には出生子全体の49%に達しているが、共同監護権の道が開け、事実婚当事者間に子どもがいたり、長期間共同生活をしている場合には、遺族年金の受給権など社会保障において、そして税法において、事実婚と法律婚は同じ扱いを受ける。


>>非嫡出子の差別をなくすためには、まず戸籍のあり方を見直して「家」に関する意識を変える必要がありそうだ


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