「世界のエリートはなぜ歩きながら本を読むのか?」
「世界のエリートはなぜ歩きながら本を読むのか?」(田村耕太郎著、マガジンハウス)より
終りに
私はいたるところで、今後は、グローバル化、テクノロジー化、高齢化、一生現役の時代、という四つの大変化に備えるべきと訴えている。そのための勉強法やネットワーキング術を本にしたり講演で話したりしているが、それよりもある意味もっと重要なことがあり、今回やっとそれを本にできたという思いで一杯だ。
いくら知識を蓄え社交術を身につけても、いいコンディションを維持できないとそれらを発揮できない。人生を豊かで意義があり幸せにするコンディショニングが第一歩である。
世界がつながるグローバル化時代、時差や競争や時間など数々のプレッシャーと戦うには強靭な肉体と精神が必要だ。しかも精神と肉体と頭脳は一緒に鍛えられるのだ。そう、肉体を鍛えることから始めれば心も頭脳もおまけで鍛えられる。気持ちもアップする。
テクノロジーの進化はわれわれが肉体を使うことから解放し、楽にしてくれる。しかし、どんどん肉体を使わなくなる分、心身の疾患が生まれ、問題解決能力も劣化しているのかもしれない。肉体を使うことからの開放が実は脳の機能を落としているのだ。人類は、狩猟採集時代より脳機能を低下させているとの研究もあるほどだ。
高齢化はそれ自体暗いことではなく、多くのビジネスチャンスをもたらすが、財政的には厳しいことだ。われわれはますます社会保障や企業の長期雇用に頼ることはできなくなる。一生現役で自分を養っていく時代が来るのだ。医療や創薬の発達で長くなるであろう人生を自分で最後まで稼ぎながらまっとうしなくてはならないだろう。そのためにも長期間にわたり安定したパフォーマンスを出せるいいコンディションの維持が不可欠だ。
私自身、金融界、メディア界、政界、研究者の世界、実業界と多様な業界で世界の猛者たちと交流してきた。そこで目の当たりにしたのは彼らの優秀さや社交性だけではない。ほとんどのリーダー、リーダー候補生たちは厳しく身体を鍛え、食事に非常に気を配り、瞑想やヨーガも積極的に取り入れ、朝型の生活をしていた。この点は本当に刺激を受けた。
ある意味、競争に勝つための高いパフォーマンスを叩き出すためには地道にコンディショニングから取り組むしかないのだろう。原点に返る気持ちで彼らの努力を見聞きした。彼らの姿勢がすんなり腑に落ち、素直に彼らから学ぶことができたのは私もトレーニングを重ねていたからだ。
>>一生現役で自分を養っていくために、身体を鍛え、食事に気を配って、いいコンディションを維持して行きたい