「企業のリアル」④
「企業のリアル」(田原総一朗×若手起業家、プレジデント社)より
2020年、ミドリムシで飛行機が飛ぶ日 ユーグレナ社長 出雲充
1980年、広島生まれ。東京大学農学部卒業後、東京三菱銀行に入行も1年で退社に、2005年、ユーグレナ設立。同年12月には世界で始めてミドリムシの屋外大量培養に成功。12年、Japan Venture Awards「経済産業大臣賞」受賞、世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出。
0.05mmの小さな生き物、ミドリムシ――。動物と植物、両方の性質を持つ不思議な藻類に本気で人生を捧げている男がいる。東大発のバイオベンチャー、ユーグレナの出雲充社長だ。栄養不足に苦しむ世界の人々を救うだけでなく、石油の代替エネルギーとして飛行機を飛ばす燃料にもなるという。夢のような話は、本当に実現するのか。
世界で起きているのは飢餓より栄養失調
出雲 いま地球が抱えている一番の問題は、栄養失調です。お米もパンもあるから飢えはしないけど、ほかの栄養のある食べ物がないんです。ビタミンがとれないから抗酸化物質が不足しているし、牛乳がないのでカルシウムも足りません。また鉄分が不足しているので貧血になるし、肉や魚がなくて筋肉をつくれず、腕や脚が細くなってしまう。栄養不足で苦しんでいる人は、いま世界で10億人いるとされています。それを救うのがミドリムシ。ミドリムシのなかには、人間が生活するために必要な59種類の栄養素が含まれています。魚のDHAも、牛乳のカルシウムも、肉のタンパク質も、ニンジンのベータカロチンもです。
航空会社が注目するミドリムシの可能性
出雲 動植物からつくられる燃料は、クジラからロウソク、ヒマワリから軽油、サツマイモからガソリンとあります。ただ、ジェット燃料は、どの植物からつくるよりもミドリムシからつくったほうが効率的です。
そこで白羽の矢が立ったのが、植物でもあり動物でもあるミドリムシです。光を当てないで動物のように育てると、植物にはつくれないオイルがミドリムシのなかにできます。
大手都銀を一年で退職し、企業
出雲 発想を変えました。ミドリムシを食べる雑菌を蚊にたとえるなら、これまでは蚊帳を二重、三重にして菌の侵入を防ぐ技術を研究していいました。でも、いくら蚊帳を重ねても、結局はどこかから蚊が入ってきています。それならば蚊帳はやめて、蚊取り線香のように菌が寄りつかなくなるものはできないかと考え方を変えました。それでようやく、ミドリムシは平気でもほかの菌は気持ち悪くて入ってこられない培養液の開発に成功したのです。
100万㎡、東京ドーム約21個分です。この大きさのプールがあれば石油由来のものと同程度の価格、1リットル150円ぐらいでジェット燃料ができます。その価格でつくれるようになったら、あとは2個、3個とプールを増やしていけばいい。
対談を終えて
彼の功績はノーベル賞もの
いま世界で起きているのは飢餓ではなく栄養失調。ミドリムシには人間に必要な栄養素59種類すべてが入っているので、これを食べれば栄養の問題を一気に解決できるというわけだ。さらにミドリムシは、飛行機のジェット燃料にもなるという。まさに夢の生物である。
ミドリムシの可能性は80年代から世界中で注目されていたが、大量培養に成功した人は誰もいなかった。それを成功させた出雲さんは、ノーベル賞ものだと思う。
>>ミドリムシによる栄養失調の解消とジェット燃料の量産化に成功することを祈念する